著者
田中 康平 Darla K. Zelenitsky François Therrien 小林 快次
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.25-40, 2018 (Released:2018-05-11)
参考文献数
160

主竜類(ワニ類,翼竜類,そして鳥類を含む恐竜類など)は,非常に多様で成功した陸上脊椎動物である.絶滅種(例,非鳥類型恐竜類)及び現生種(ワニ類及び鳥類)の営巣方法や営巣行動を理解することは,主竜類の進化や多様性を検討する上で重要である.しかしながら,恐竜類の営巣方法や営巣行動は,多くの場合,化石記録から直接観察できないため,かれらの営巣様式(巣の構造,抱卵行動,孵化日数など)は,卵・巣・胚化石から得られる特徴(クラッチサイズ,卵重,卵殻間隙率,胚の形態的特徴など)を用いて推定・復元される.非鳥類型恐竜類の巣や営巣行動は多様だったと考えられ,恐竜類を含め主竜類におけるこれらの形質の進化が議論できる.
著者
田中 公教 小林 快次
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.57-68, 2018 (Released:2018-05-11)
参考文献数
98

ヘスペロルニス目Hesperornithiformesは,白亜紀前期アルビアン期-白亜紀後期マーストリヒチアン期の北半球に広く分布した歯のある潜水鳥類である.鳥類の進化史上初めて潜水適応した最古の潜水鳥類として知られており,これまで15属31種が報告されている.1871年に初めて骨格化石が発見されたヘスペロルニスHesperornis regalisは,前肢が極端に発達しており,胸骨は竜骨突起を失い平たくなり,後肢は非常に発達していた.これらの形態的特徴から,ヘスペロルニスは白亜紀の飛翔能力を失った後肢推進性潜水鳥類と考えられる.この発見の後,アメリカ,カナダ,イギリス,スウェーデン,ロシア,カザフスタン,モンゴル,日本などから新たなヘスペロルニス目の化石が報告され,最古の潜水鳥類の進化の道のりが徐々に明らかになってきた.本稿では,現生鳥類の起源についての近年の研究のレビューを行い,現生鳥類がいつ頃から多様化を始めたのかを議論し,中生代の鳥類の最近の系統分類学を概観する.さらに,ヘスペロルニス目の発見からこれまでの研究を概説し,明らかになってきたヘスペロルニス目の生態や今後の研究課題について議論する.
著者
小林 快次
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

「今世紀最大の発見、恐竜全身骨格化石」が,平成25・26年に北海道むかわ町穂別から発掘された.通称“むかわ竜”と呼ばれている全長8メートルを超える巨大恐竜で,平成27年に行われた記者発表は,世界を騒がせた歴史的な発見だった.日本の恐竜研究史の中で,国内から発見された恐竜骨格化石としては,最も完全な骨格であり,恐竜絶滅直前の白亜紀末の恐竜としても国内初の全身骨格である.本研究では,この“むかわ竜”を記載・比較研究することで新属新種として命名し,この恐竜が属すグループである植物食恐竜ハドロサウルス科の進化と移動の解明,そして恐竜絶滅直前の東アジアの多様性の解明を目指す.
著者
小林 快次
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

デイノケイルスの含気化は、生命史上最も巨大化した動物である竜脚類を超えるものであった.この含気化はデイノケイルスの祖先系の種に見られることから,初期の段階で確立しており,進化とともに含気化が進むことで巨大化を可能としたと考えられる.また,頭骨は,広いくちばし,深い下顎,長い吻部と言った特徴を持つ.これらは採餌と食べ物の細分化を可能とした構造を持っていた.さらに,体内の胃石は円磨度が高く,胃における物理的な消化活動の高さを持っていたと考えられる.脊椎の長い神経棘は,他の恐竜よりもかなり複雑な構造をしている.長い神経棘には複数の機能があり,必要に応じてその機能のウエイトを変えて進化したと考察した.
著者
小林 快次 金子 勝比古
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究によって、非鳥類型恐竜類から鳥類への脳や骨の進化過程において多くの情報を得ることができ、またそれらの境界を探ることができた。脳の進化過程としては、特に嗅覚の肥大・縮小というマクロの構造変化に注目することによって、非鳥類型恐竜から鳥類への生活や食性の変化を明らかにすることができた。このことは、中生代当時の生態系において、恐竜たちがどのようにニッチを奪い合って進化してきたかをみることが可能になり、これまで考えられてきた以上に複雑な進化をしていたことがわかった。また、これらの境界にあたるグループで鳥類に属すか否かの議論がされているオビラプトロサウルス類においても、脳の構造の視点から、これは非鳥類型恐竜に属すことが考えられ、体骨格の鳥類に類似した特徴は収斂進化であることを示す。活や食性の進化と同様、恐竜は複雑な進化を遂げながら、鳥類へ移行していったことがわかった。今後の課題としては、マクロなスケールではなくよりミクロな構造を分析することである。このさらなる研究によって、脳や神経システムからみた恐竜類の進化過程がより明らかになってくるであろう。