- 著者
-
小林 慎治
- 出版者
- 国立保健医療科学院
- 雑誌
- 保健医療科学 (ISSN:13476459)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, no.3, pp.229-234, 2019 (Released:2019-09-14)
- 参考文献数
- 12
インターネットで大規模に収集されたデータを用いて,機械学習をベースとした人工知能技術が発展し,創造的価値が生み出されつつある.医療分野においも国家レベルで診療データを収集し,保健行政や臨床研究,創薬に役立てていこうとする試みが世界各国で進められてきた.日本においても診療データの二次利用に向けて法制度が進められると同時に,普及が進んだ電子カルテから診療情報を大規模に収集する事業が国家的プロジェクトとして進められている.しかしながら,電子カルテのデータを収集すること,そしてそのデータを活用していくことは実際にはそう簡単ではない.関心のあるデータを特定の用語を使って高速に検索してデータを収集することは電子化のメリットの一つであるが,診療データに記録されている用語が標準化されておらず,効率よくデータを検索できないなどの問題がある.そのため医学用語集の整備と標準化が進められており,複数の用語でも効率よく対応できるシソーラスやタキソノミーの開発や,知識工学を応用したオントロジーの開発も進められている.さらに,概念の構造と用語の関係を明示した情報モデルの開発により,質の高い情報基盤の整備へと発展しつつある.本稿では臨床情報を機械的に処理する際の問題点とその解決法として,用語と情報モデルについて解説し,その標準化について概説する.