著者
太湯 好子 小林 春男 永瀬 仁美 生長 豊健
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.353-361, 2008

本研究では認知症高齢者に対するイヌによる動物介在療法の効果を社会性,活動性,精神性の3側面から検討しコントロール群と比較した.動物介在療法の6ヶ月後までの評価は認知症日常生活自立度判定基準,認知症高齢者用QOL尺度,認知症高齢者用うつスケール短縮版を用いた.また,施行時の評価については前60分・中30分・後60分の行動観察と同時に,アクティグラフによる活動量の測定と唾液アミラーゼによる精神ストレスについて調査した.結果,日常生活自立度とQOL尺度得点は6ヶ月で大きな変動はなかったが,うつ状態は明らかに改善した.また,施行の前後では,唾液アミラーゼ活性値の下降群が,動物介在療法を施行した群に有意に多くみられ,一方,コントロール群では上昇群が多かった.そして,アクティグラフによる活動量は施行中に明らかに多くなった.加えて,行動観察でも活動量,笑顔,発言,周囲の人やイヌへの関心が増加した.このことから,認知症高齢者に動物介在療法を施行することは,社会性としての周囲の人やイヌへの関心を高め,生活への潤いを増加させる.また,活動性としてはイヌにつられて行動を起こすことにより,活動量が増し,日常生活の自立度やQOL改善につながる.精神性ではストレスの緩和やうつ状態の改善につながる.
著者
"太湯 好子 小林 春男 永瀬 仁美 生長 豊健"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.353-361, 2008
被引用文献数
1

"本研究では認知症高齢者に対するイヌによる動物介在療法の効果を社会性,活動性,精神性の3側面から検討しコントロール群と比較した.動物介在療法の6ヶ月後までの評価は認知症日常生活自立度判定基準,認知症高齢者用QOL尺度,認知症高齢者用うつスケール短縮版を用いた.また,施行時の評価については前60分・中30分・後60分の行動観察と同時に,アクティグラフによる活動量の測定と唾液アミラーゼによる精神ストレスについて調査した.結果,日常生活自立度とQOL尺度得点は6ヶ月で大きな変動はなかったが,うつ状態は明らかに改善した.また,施行の前後では,唾液アミラーゼ活性値の下降群が,動物介在療法を施行した群に有意に多くみられ,一方,コントロール群では上昇群が多かった.そして,アクティグラフによる活動量は施行中に明らかに多くなった.加えて,行動観察でも活動量,笑顔,発言,周囲の人やイヌへの関心が増加した.このことから,認知症高齢者に動物介在療法を施行することは,社会性としての周囲の人やイヌへの関心を高め,生活への潤いを増加させる.また,活動性としてはイヌにつられて行動を起こすことにより,活動量が増し,日常生活の自立度やQOL改善につながる.精神性ではストレスの緩和やうつ状態の改善につながる."
著者
芳原 達也 荻野 景規 小林 春男
出版者
山口大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

現在、地下水及び河川汚染で社会的問題となっているトリハロメタンジクロロホルム,)クロロブロモメタン,クロロジブロモメタン,ブロモホルム等)およびトリクロロエチレン,1,1,1ートリクロロエタンおよびテトラクロロエチレン等々の有機塩素系溶剤は、脱脂洗浄、樹脂溶解、塗脂溶解、塗料のシンナ-、リ-ムバ-、冷媒、ドライクリ-ニング等の目的で広範囲に使用されており、その使用量も非常に多い。毒性としては、中枢神経系に対する抑制作用、三叉神経、末梢神経障害、肝臓障害、腎臓障害、心臓血管系障害など多くが報告されている。また近年は環境汚染物質としてフロン等とともに、西暦2000年までに使用禁止物質として世界的に規制されつつある。しかし、これらの物質の生体内吸収、排泄、代謝などに関する生体内動態については解明されていない部分が非常に多い。そこでこれらの有機塩素系溶剤の中で、最も普遍的に用いられているトリクロロエチレンの着眼して、この溶剤の生体内動態および代謝について麻酔犬を使用し実験的に詳細に検討し、以下の結論を得た。まず、トリクロロエチレン(TRI)の腸管からの吸収を観察するために、私たちは麻酔犬での閉塞性腸管吸収システムを開発し、手術犬で腸管の3部位(空腸、回腸および大腸)に、それぞれ3濃度(0.1,0.25,0.5%)のTRIを投与し、TRIとその代謝産物である、遊離型トリクロロエタノ-ル、トリクロロ酢酸、抱合型トリクロロエタノ-ル血液、尿、胆汁および残留液で測定した。投与後2時間で、投与量の85〜90%のTRIが、すべての部位で吸収された。さらに、これらの部位間での吸収率には差は認められなかった。次に、尿および胆汁から投与後2時間で排泄された、未変化体およびその代謝産物の割合は、すべての群で吸収量に対し、非常に低い値であった。
著者
"篠原 ひとみ 中新 美保子 小林 春男"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.75-84, 2005
被引用文献数
1

"本研究の目的は,唇顎口蓋裂児のビン哺乳時の顔面筋の動きについて,健常児との違いやHotz床装着前後の違い,そして使用乳首との関係を明らかにすることである.方法は,健常児1名,口唇顎裂児1名,口唇口蓋裂児1名のビン哺乳の状態を児の顔面を中心にビデオカメラで左右から撮影した.顔面筋の動きを見るために児の顔面に,2〜3 mm角のテープを貼付した.連続9〜11回の吸啜運動から下顎を最大に下げた画像と上げた画像をコンピュータ処理し,18〜22枚取り出した.そして,その18〜22枚の画像をもとに顔面に貼付したテープ間の距離5区間とその角度(5点)を測定し,下顎の上下運動間で対応のあるt検定を行った.その結果をもとに,顔面筋の動きについて,健常児とHotz床装着前の口唇顎裂児や口唇口蓋裂児との違い,Hotz床装着前後の変化,および使用乳首による顔面筋の動きの違いを比較,検討し以下のことが明らかになった.1.健常児に比べてHotz床装着前の口唇顎裂児は患側の動きが大きく,健側の動きは健常児と似ていた.2.Hotz床装着後の口唇顎裂児は患側の動きが減少し,特に口輪筋の動きが減少していた.3.Hotz床装着前の口唇口蓋裂児の患側は,健常児に比べて口輪筋の動きが活発であり,健側は口輪筋の動きが少なかった.4.Hotz床装着後の口唇口蓋裂児は患側,健側ともに動きが減少し,健常児に比べて患側,健側ともに動きが少なかった.5.吸啜時の顔面筋の動きは,口蓋裂用乳首を使用した場合は普通乳首使用に比べて患側,健側ともに少なく,Hotz床装着後は健常児よりも動きが少なかった."
著者
原野 かおり 谷口 敏代 小林 春男
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.208-217, 2012
被引用文献数
1

介護労働は,仕事の内容が広範囲であるため,身体的および精神的負担が大きいと言われているが,その実態は明らかになっていない.そこで本研究においては,夜勤のある介護労働者の主観的および客観的疲労の実態を明らかにすることを目的とした.対象は,介護老人福祉施設に勤務する女性介護労働者19名(夜勤群)と通所介護事業所に勤務する女性介護労働者18名(日勤群)を対照群として連続7日間調査票による質問紙調査および実験を行った.調査の内容は,主観的疲労感として自覚症しらべを用い,客観的疲労として,アクティグラフ(A.M.I社製)を用いて,睡眠-覚醒リズムから活動能力,および能力の減退状態を評価した.また,疲労の補助指標として唾液中コルチゾール濃度を測定した.結果は,主観的疲労感は,夜勤群においてI群ねむけ感,III群不快感,IV群だるさ感,V群ぼやけ感が有意に高かった.日勤群では,V群ぼやけ感が有意に増加した.客観的疲労として,睡眠-覚醒から生活パフォーマンス反応速度時間効率「Effectiveness」を求めた結果,夜勤群において有意に低下した.しかしながら夜勤の際に低下した「Effectiveness」は,休養によって次の勤務には回復していることが明らかになった.また,夜勤群の「Effectiveness」と仮眠時間との間に中等度の相関関係が認められ,仮眠の有用性が明らかになった.唾液中コルチゾール濃度は,両群間においては有意差は認められなかった.以上,介護労働者の疲労が認められたが,夜勤中の仮眠および夜勤後の十分な休養により,次の勤務までには回復可能であった.