著者
福武 まゆみ 岡田 初恵 太湯 好子
雑誌
川崎医療福祉学会誌 = Kawasaki medical welfare journal
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.174-184, 2013

本研究は,在宅で生活している高齢者夫婦の自身とその配偶者の死に対する意識および準備状況を明らかにすることを目的とした. 調査には70歳以上の在宅で生活している夫婦10組が参加した.調査内容は,(1)基本属性,(2)自分自身の死についての考え,(3)配偶者の死についての考え,(4)自分自身の死を想定しての準備についての考え,(5)配偶者の死を想定しての準備についての考えについて半構造化面接を実施した.分析には質的分析手法であるSCATを参考に,(1)データ中の注目すべき語句,(2)それを言いかえる為のデータ外の語句,(3)それを説明するための語句,(4)そこから浮き上がるテーマ・構成概念の順にコードを付していき,(4)のテーマ構成概念を紡いでストーリーラインを記述し,そこから理論記述を行った.その理論記述を,サブカテゴリーとして位置づけ,高齢者夫婦の死に対する意識と準備状況をカテゴリー化し,それをもとにコアカテゴリーとして示した. 結果,対象者の平均年齢は77.9歳であった.健康状態は,90%の人が「よい」「まあよい」と回答していた.高齢者夫婦の死に対する意識は,『死の迎え方を考える』,『考えることの先延ばし』,『死を現実として捉える』の3つのコアカテゴリーを抽出できた.また,高齢者夫婦の死に対する準備状況は,『準備をすることの迷い』,『夫婦で整える死への準備』,『予測のできない配偶者の死 と準備』の3つに整理できた.This research clarified the consciousness of and preparation for death among 10 elderly couples over 70 who live at home. Semi-structured interviews questioned them about their own and their spouse's death and what preparations they have made for death. Analysis was made under SCAT, a qualitative analytical method, to set up core categories. As a result, with an average age of 77.9, the subjects'consciousness of death was divided into three core categories: "thinking about one's own way of life,""postponing thinking about death,"and"a sense of reality of death as a couple."This made it possible to summarize the consciousness of preparation for death under 3 categories:"confused about making preparations,""preparation for death devised together by the couple,"and"unable to predict the death of one's spouse or preparations for death."
著者
太湯 好子 小林 春男 永瀬 仁美 生長 豊健
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.353-361, 2008

本研究では認知症高齢者に対するイヌによる動物介在療法の効果を社会性,活動性,精神性の3側面から検討しコントロール群と比較した.動物介在療法の6ヶ月後までの評価は認知症日常生活自立度判定基準,認知症高齢者用QOL尺度,認知症高齢者用うつスケール短縮版を用いた.また,施行時の評価については前60分・中30分・後60分の行動観察と同時に,アクティグラフによる活動量の測定と唾液アミラーゼによる精神ストレスについて調査した.結果,日常生活自立度とQOL尺度得点は6ヶ月で大きな変動はなかったが,うつ状態は明らかに改善した.また,施行の前後では,唾液アミラーゼ活性値の下降群が,動物介在療法を施行した群に有意に多くみられ,一方,コントロール群では上昇群が多かった.そして,アクティグラフによる活動量は施行中に明らかに多くなった.加えて,行動観察でも活動量,笑顔,発言,周囲の人やイヌへの関心が増加した.このことから,認知症高齢者に動物介在療法を施行することは,社会性としての周囲の人やイヌへの関心を高め,生活への潤いを増加させる.また,活動性としてはイヌにつられて行動を起こすことにより,活動量が増し,日常生活の自立度やQOL改善につながる.精神性ではストレスの緩和やうつ状態の改善につながる.
著者
"太湯 好子 小林 春男 永瀬 仁美 生長 豊健"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.353-361, 2008
被引用文献数
1

"本研究では認知症高齢者に対するイヌによる動物介在療法の効果を社会性,活動性,精神性の3側面から検討しコントロール群と比較した.動物介在療法の6ヶ月後までの評価は認知症日常生活自立度判定基準,認知症高齢者用QOL尺度,認知症高齢者用うつスケール短縮版を用いた.また,施行時の評価については前60分・中30分・後60分の行動観察と同時に,アクティグラフによる活動量の測定と唾液アミラーゼによる精神ストレスについて調査した.結果,日常生活自立度とQOL尺度得点は6ヶ月で大きな変動はなかったが,うつ状態は明らかに改善した.また,施行の前後では,唾液アミラーゼ活性値の下降群が,動物介在療法を施行した群に有意に多くみられ,一方,コントロール群では上昇群が多かった.そして,アクティグラフによる活動量は施行中に明らかに多くなった.加えて,行動観察でも活動量,笑顔,発言,周囲の人やイヌへの関心が増加した.このことから,認知症高齢者に動物介在療法を施行することは,社会性としての周囲の人やイヌへの関心を高め,生活への潤いを増加させる.また,活動性としてはイヌにつられて行動を起こすことにより,活動量が増し,日常生活の自立度やQOL改善につながる.精神性ではストレスの緩和やうつ状態の改善につながる."
著者
小薮 智子 白岩 千恵子 竹田 恵子 太湯 好子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.59-71, 2009

本研究は,緩和ケア病棟の看護師97名,一般病棟の看護師248名,一般の人429名,大学生244名,合計1,018名を対象とし,スピリチュアリティという言葉のイメージを明らかにすること,また4つのグループ別に認知の有無と,イメージの特徴を明らかにすることを目的とし,質問紙調査を行った.スピリチュアリティという言葉を認知している人は全体で421名(41.4%),緩和ケア病棟の看護師が83名(85.6%),一般病棟の看護師が136名(54.8%),一般の人が92名(21.4%),大学生が110名(45.1%)であり,スピリチュアリティという言葉は未だ一般の人に認められた言葉ではないことが示された.得られたイメージを内容の類似性で整理した結果,【超越的】【内的自己】【人間存在】【死生観】【ビリーフ】【Well-BeingとPain】【他者や環境】の7コアカテゴリーが抽出された.その内容からスピリチュアリティは幅広いイメージを与え,主観的で抽象的であることが確認できた.またこれらは既存の学術的概念と類似していた.カテゴリーに分類されなかった「その他」には〈マスメディア〉〈超常現象〉〈否定的イメージ〉が含まれ,スピリチュアリティをスピリチュアルブームという大衆文化の中でとらえている人がいることが明らかになった.7コアカテゴリーは4グループすべてで抽出され,その中でも【超越的】と【内的自己】が共通して最も多かった.緩和ケア病棟の看護師はスピリチュアリティに幅広い,多くのイメージを持っていた.また一般病棟の看護師の約1割と大学生の約2割が〈マスメディア〉をイメージしていた.一般の人の【他者や環境】のイメージは,日本人の中・高齢者の特徴と考えられた.
著者
福武 まゆみ 岡田 初恵 太湯 好子
雑誌
川崎医療福祉学会誌 = Kawasaki medical welfare journal
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.174-184, 2013

本研究は,在宅で生活している高齢者夫婦の自身とその配偶者の死に対する意識および準備状況を明らかにすることを目的とした. 調査には70歳以上の在宅で生活している夫婦10組が参加した.調査内容は,(1)基本属性,(2)自分自身の死についての考え,(3)配偶者の死についての考え,(4)自分自身の死を想定しての準備についての考え,(5)配偶者の死を想定しての準備についての考えについて半構造化面接を実施した.分析には質的分析手法であるSCATを参考に,(1)データ中の注目すべき語句,(2)それを言いかえる為のデータ外の語句,(3)それを説明するための語句,(4)そこから浮き上がるテーマ・構成概念の順にコードを付していき,(4)のテーマ構成概念を紡いでストーリーラインを記述し,そこから理論記述を行った.その理論記述を,サブカテゴリーとして位置づけ,高齢者夫婦の死に対する意識と準備状況をカテゴリー化し,それをもとにコアカテゴリーとして示した. 結果,対象者の平均年齢は77.9歳であった.健康状態は,90%の人が「よい」「まあよい」と回答していた.高齢者夫婦の死に対する意識は,『死の迎え方を考える』,『考えることの先延ばし』,『死を現実として捉える』の3つのコアカテゴリーを抽出できた.また,高齢者夫婦の死に対する準備状況は,『準備をすることの迷い』,『夫婦で整える死への準備』,『予測のできない配偶者の死 と準備』の3つに整理できた.