著者
小林 美亜 石川 翔吾 上野 秀樹 竹林 洋一
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.248-253, 2019-07-25 (Released:2019-07-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1

近年,人工知能(AI)やロボット技術の発展に伴い,ヘルスケア領域の研究が盛んにおこなわれている.そして,高齢者の身体機能・認知機能を維持・改善するためのアプローチにも,AIが搭載されたコミュニケーションロボットなどが活用されるようになった.しかし,「意味」を理解したり,「状況」を考慮したり,「人間のように」思考することのモデル化を目指したAI研究は,依然として発展途上である.そこで,人工知能学に基づき,認知機能が低下した方々に対する「見立て知」のモデルを構造化し,介護者等がその知を習得し,活用できる環境を整えることによって,適切な治療やケアにつなげたいと考える.
著者
小林 美亜 竹林 洋一 柴田 健一
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.568-577, 2018-11-15

診療報酬による「身体拘束最小化」への誘導 高齢化の進展と共に認知症高齢者の入院が増加している。急性期病院(看護配置7対1及び10対1)では、認知症をもつ患者の入院割合は約2割を占め、そのうち、半数以上がBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:行動・心理症状)を有しており*1、身体合併症の治療だけでなく、認知症高齢者の中核症状およびBPSDへの対応能力を高め、身体拘束を防止し、認知症高齢者の尊厳を保障することが急務の課題となっている。 診療報酬でも、医療機関は身体拘束を減らす方向に誘導がなされている。2016年の診療報酬改定では「認知症ケア加算」が新設され、身体的拘束を実施した日は、当該点数が40%減額となるペナルティが課せられるようになった。また、2018年の診療報酬改定では、看護補助加算や夜間看護加算の算定において、「入院患者に対し、日頃より身体的拘束を必要としない状態となるよう環境を整えること」「また身体的拘束を実施するかどうかは、職員個々の判断ではなく、当該患者に関わる医師、看護師等、当該患者に関わる複数の職員で検討すること」といった身体拘束などの行動制限を最小化する取り組みを行うことが要件となっている。
著者
池田 俊也 小林 美亜
出版者
The Health Care Science Institute
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.167-180, 2007
被引用文献数
5

2003年度より特定機能病院等82病院に,診断群分類 (DPC; Diagnosis-procedure combination) に基づく包括支払い方式が導入され,2007年度には360病院に達している。包括支払いの対象となる医療機関では,包括範囲に含まれる薬剤・検査等のコスト適正化が経営上の重要な課題である。本研究では,DPCによる包括支払い導入前後における診療内容の変化について検討を行った。<br> 対象は,2006年4月よりDPCによる包括支払いを導入し,DPCデータ分析ソフト「ヒラソル」を採用している施設で,人工関節再置換術実施患者,ステント術実施患者とした。分析は,包括支払い導入前の2005年度と導入後の2006年度における平均在院日数,術前・術後日数,注射・検査・画像に関する出来高ベースでの請求額,典型的な診療パターンについて行った。その結果,包括支払いの導入に伴い,在院日数の短縮や包括範囲に含まれる医療行為の資源消費量の減少が認められた。<br> 但し,本研究の対象施設は,DPCデータ分析ソフトを導入していることから経営に対する意識が高いものと推察され,他の包括支払い導入施設においても同様のことが観察されるかは不明である。また,本研究では外来部門に関するデータは分析対象となっていないため,入院中に減少した医療行為の資源量が外来に移行しているかは明らかではないことから,外来を含めた1エピソード単位での医療資源消費量の分析が今後の課題である。