著者
佐藤 友香 小柳津 和博
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.26, pp.97-109, 2022-11-30

障害児者をきょうだいにもつ姉を対象として、同胞に対する思いの変容について調査した結果、きょうだいの同胞に対する思いは変容し続けるものであることが明らかになった。思いが変容するきっかけは、同胞の成長や同胞への理解などに対しての気付きがあったときや、同胞の可能性について着目したときにあった。また、同胞がいて良かったと思うことのできる経験によって、きょうだいの気持ちは前向きになったり、同胞を尊重したいという思いになったりしていくことが示唆された。 きょうだいは、賞賛されるタイミングや内容によっては、必ずしも好意的な感情を持たないということが明らかになった。また、「同胞+私」で賞賛されるより、「私」を個として認め、ほめられることに喜びを感じる可能性があることが明らかになった。"
著者
小柳津 和博 野々山 貴
出版者
日本リハビリテイション心理学会
雑誌
リハビリテイション心理学研究 (ISSN:03895599)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.51-63, 2022-11-30 (Released:2023-02-20)
参考文献数
25

近年,各地でインクルーシブ保育の実践が進められているが,子ども同士の関わり合いを促す保育者の専門性を一般化することは難しいとされてきた。本研究では,インクルーシブ保育において子ども同士の関わり合いを成立させるために必要となる保育者の専門性について,実際の保育場面を分析することで明らかにすることを目的とした。対象となる施設で,重症心身障害児と他児が関わり合う場面をエピソードとして取り出し,重要語句を選定した。重要語句から保育者の専門性に関わる概念を抽出した。分析の結果,インクルーシブ保育に必要な保育者の専門性として8項目の説明概念が抽出され,これらは創造力として4種類に構成された。このことから,インクルーシブ保育において子ども同士の関わり合いを促す保育者の専門性に,4種類の創造力があると考察した。
著者
小柳津 和博
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.27, pp.15-22, 2023-03-15

重症心身障害児を含む集団の保育として、すべての子どもたちが共に育つ上で必要な視点について先行研究を基に検討した。 集団を通した保育の視点では、子ども一人一人が違うことに保育者が価値を置き、同じ主題の中で個別に配慮する保育を子どもたちに提供していくことが必要であると考えた。多様性を前提とした保育の視点では、保育者が子ども一人一人の「今」の姿を正しく把握し、個別の目標設定を行うことで、多様な成功を認める必要があった。活動への参加の視点では、保育者がすべての子どもの意思を尊重し、すべての子どもたちが互いに影響を与え合えるような関係づくりをする必要があった。 障害児・周囲の子ども、両者の思いを保育者ができるだけ的確に把握し、わかりやすい内容・形に修正することによって、重症心身障害児を含むすべての子どもたちが共に育つことが示唆された。
著者
小柳津 和博
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.23, pp.73-83, 2021-03-15

日本の特別支援教育と、イギリスのSEN(Special Educational Needs)における教育施策を比較・検討することで、わが国のインクルーシブ教育に関わる現状と課題を整理した。日本のインクルーシブ教育では「特別の教育的ニーズのある子ども」と「障害のある子ども」が切り分けて考えられていない点に課題があることが明らかになった。今後の日本型インクルーシブ教育システムの推進には、多様な学びの場の選択を保障するため、幼児期からの副次的な籍の活用が有効であると考えた。また、特別支援教育の自立活動と保育の5領域の親和性を活用し、発達初期から子どもの多様な教育的ニーズを満たすための学びの下支えをすることが、子どもたちの個別最適な学びにつながると考察した。
著者
小柳津 和博 勝浦 眞仁
出版者
桜花学園大学保育学部
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = Bulletin of School of Early Childhood Education and Care Ohkagakuen University (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.17, pp.65-76, 2018-03-16

本研究では、デュシャンヌ型筋ジストロフィー(以下、DMD)の子どもへの保育・教育実践の報告を基に、よりよい保育・教育支援のあり方について検討することを目的とした。保育においては「保育内容」の視点から、教育においては「自立活動」の視点から子どもの育ちのニーズについて考察した。また、DMDのある子どもとかかわった経験のある教師へのインタビューを通して、教師として子どもたちに身に付けてほしい力について検討した。その結果、DMDのある子どもへの最も必要な保育・教育支援は、受容的な姿勢から子どもの姿を捉え、仲間と共に活動に継続して取り組むことであると考えた。それこそが子どもの生きる喜びにつながり、「真の育ちのニーズ」として我々が子どもたちに提供すべきものであると考えた。
著者
小柳津 和博
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.22, pp.27-37, 2020-11-30

インクルーシブ保育において、重症心身障害児と障害のない周囲の子どもが関わり合い、育ち合うことの意義について検討した。重症心身障害児を含む集団において、関わり合い・育ち合う関係を継続させるには、子どもたちが互いに有益と感じる横並びの関係、仲間同士で共感できる関係、共に適応しあう関係を築くことが重要であると考えた。環境への接続が可能となるよう重症心身障害児の個の力を育てると同時に、接続できる集団を育てていく必要がある。互いに接続可能な状況を整えることによって、全ての子どもたちにとって個別最適な学びとなることが、インクルーシブ保育における関わり合いの持つ教育的価値である。