著者
勝浦 眞仁
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科
雑誌
人間・環境学 (ISSN:09182829)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.25-33, 2010-12-20

発達障碍を抱える生徒独自の捉え方や感じ方をどのように受け止めるのか,という特別支援 教育における重要な問題に対して,定型発達者の「見立て」による,評価的観点からのアプローチ が広く受け入れられているしかし当事者の著書や自伝,また支援員であった筆者の体験からは, 現行のアプローチに対する非定型発達者の強い反発が窺え,彼らの体験に十分迫り切れていない面 があった. そこで本稿では,非定型発達と恩われるある一男児の事例を通して,その生徒を学校において 「異文化」に生きる人として位置付け, その枠組みを支援に活かすことの意義と教育実践上の難し さについて,特別支援教育支援員の立場から,エピソード記述法を用いて検討した. その結果, I異文化」を生きる生徒たちを, その人らしい「我が」ままを生きる人として受け止 めていく枠組みが有効であることを示す一方で,学校という場では共に生きるがゆえに,学校文化 との「同調性」を求めてしまうところが少なからずあり,その両面にどう折り合いをつけるかが教 育実践を行う上での難しさであることを明らかにした.
著者
勝浦 眞仁
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2-3, pp.167-178, 2020 (Released:2021-08-04)
参考文献数
23

本研究の目的は,障害のある子どもをもつ親の内面で,障害を巡って揺れ動いている心性の両面を描き出すとともに,それを支える保育環境を明らかにすることである。自閉症で知的障害のある幼児をもつ両親に,園でのエピソードを提示し,父と母それぞれが,園での姿をどのように受け止めたのかを語りから迫ることを試みた。 その結果,「障害児の親」であるとともに,障害の有無にかかわらず「この子の親」であるという,親ならではの心性に揺れ動いていることを見出した。そして,園に「我が子がいる意味」を実感することが,親にとって大きな支えとなることを明らかにした。さらに,その実感が生まれる要因となる保育環境についても言及した。
著者
小柳津 和博 勝浦 眞仁
出版者
桜花学園大学保育学部
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = Bulletin of School of Early Childhood Education and Care Ohkagakuen University (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.17, pp.65-76, 2018-03-16

本研究では、デュシャンヌ型筋ジストロフィー(以下、DMD)の子どもへの保育・教育実践の報告を基に、よりよい保育・教育支援のあり方について検討することを目的とした。保育においては「保育内容」の視点から、教育においては「自立活動」の視点から子どもの育ちのニーズについて考察した。また、DMDのある子どもとかかわった経験のある教師へのインタビューを通して、教師として子どもたちに身に付けてほしい力について検討した。その結果、DMDのある子どもへの最も必要な保育・教育支援は、受容的な姿勢から子どもの姿を捉え、仲間と共に活動に継続して取り組むことであると考えた。それこそが子どもの生きる喜びにつながり、「真の育ちのニーズ」として我々が子どもたちに提供すべきものであると考えた。