著者
佐藤 友香 小柳津 和博
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.26, pp.97-109, 2022-11-30

障害児者をきょうだいにもつ姉を対象として、同胞に対する思いの変容について調査した結果、きょうだいの同胞に対する思いは変容し続けるものであることが明らかになった。思いが変容するきっかけは、同胞の成長や同胞への理解などに対しての気付きがあったときや、同胞の可能性について着目したときにあった。また、同胞がいて良かったと思うことのできる経験によって、きょうだいの気持ちは前向きになったり、同胞を尊重したいという思いになったりしていくことが示唆された。 きょうだいは、賞賛されるタイミングや内容によっては、必ずしも好意的な感情を持たないということが明らかになった。また、「同胞+私」で賞賛されるより、「私」を個として認め、ほめられることに喜びを感じる可能性があることが明らかになった。"
著者
嶋守 さやか 五郎丸 聖子
出版者
桜花学園大学保育学部
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDHOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVETSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.45-65, 2018-10-31

本論文では、「問い」とは何かを問うことで出合った満洲開拓についての史実を扱ってきた。そこで筆者であるわたしたちが何よりも心がけたのが、歴史への真摯さ、である。記憶を後世へ伝えていくためには記録しなければならない。そのとき、記録の伝え手は、まず記憶の受け手としてのあり方を問われることになる。どのように歴史が書き換えられることになろうとも、その叙述が書き換えられるかぎり、そこにその出来事があったということを、まずはそのままに受けとめること。この誠実さを貫徹するにあたっては、何が正義で悪なのか、被害と加害を分断する境界線、運命の別れ目―あるいは、「仕方がなかった」で済まされはしないすべてのこと―に対しての解答などないと弁えること。リルケのいう「問い」にある忍耐を受けとめることを何よりも謙虚に受けとめていくべきではないかと考察した。
著者
森川 拓也
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.21, pp.139-155, 2020-03-13

絵と文章が一体となって成り立つ「絵本」であるが、教科書教材として用いられる場合、いくつかの絵が省略さえるため、内容の理解を妨げることになるという指摘がある。しかし絵が省略されることは、絵から理解していた内容を、言葉・文章を手がかりにして考え理解することが求められることになるが、このことを国語科の授業で生かすことが重要である。つまり、絵が省略された分、余計に言葉や文に着目して読み進めることが必要となるが、いくつかの効果が期待できる。作家の仕掛けの最小単位のものが「言葉(単語)」であるから、「言葉(単語)」に着目することが、言葉と文、段落等の関係性までも読み取ることになり、作品全体の構造的・論理的な理解につながる。また言葉の意味を適用する必要が生まれ、言葉の力を引き出すことにもなる。つまり、絵本は、論理的思考力や言語能力の発達のために有効な「教材」となることが期待できるのである。言葉に親しむ絵本から言葉を学ぶ絵本へ。それが絵本を国語教材として扱う意味である。
著者
嶋守 さやか 五郎丸 聖子
出版者
桜花学園大学保育学部
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDHOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVETSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.45-65, 2018-10-31

本論文では、「問い」とは何かを問うことで出合った満洲開拓についての史実を扱ってきた。そこで筆者であるわたしたちが何よりも心がけたのが、歴史への真摯さ、である。記憶を後世へ伝えていくためには記録しなければならない。そのとき、記録の伝え手は、まず記憶の受け手としてのあり方を問われることになる。どのように歴史が書き換えられることになろうとも、その叙述が書き換えられるかぎり、そこにその出来事があったということを、まずはそのままに受けとめること。この誠実さを貫徹するにあたっては、何が正義で悪なのか、被害と加害を分断する境界線、運命の別れ目―あるいは、「仕方がなかった」で済まされはしないすべてのこと―に対しての解答などないと弁えること。リルケのいう「問い」にある忍耐を受けとめることを何よりも謙虚に受けとめていくべきではないかと考察した。
著者
石月 静恵
出版者
桜花学園大学保育学部
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDHOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVETSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.91-106, 2018-10-31

1918年7月に鈴木三重吉によって創刊された『赤い鳥』は、児童作家を輩出し、教育運動にも大きな影響を与えた。本稿では、同書に掲載された子どもたちの「綴方」から、当時の子どもたちの状況を描き、特に子どもたちが表現した「家族」の姿を紹介し、分析している。「はじめに」で、研究史を整理し、作品研究が多いが、子ども自身の表現はあまり研究されていないことを指摘した。まず、一で、同書の「綴方」の全体像を述べた。作品総数は1200編ほどで、その4分の1以上が家族に関わるものである。二で、子どもたちが描いた多様な家族の姿を紹介した。三で、「家族の死」を表現した作品を紹介し、子どもたちがそれを受容したことについて分析した。おわりにで戦間期の乳児死亡や出産に伴う母親の死を表現することで子どもたちが家族の死を受容し、表現することで乗り越えていったと分析した。
著者
小嶋 玲子
出版者
桜花学園大学保育学部
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDHOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.65-77, 2017-10-31

日本語の自称詞は「人間関係の上下の分極に基づいた具体的な役割の確認とつながっている」(鈴木1973)と言われ、日本語でどの自称詞を使用するかは、使用する人間の対人関係を示す指標となる可能性がある。よって、女子大学生の対人関係の取り方や自己意識を考える一つの指標として、女子大学生の自称詞の使用の2001年と2011年のデータを比較し、10年間での使用の変化について論じた。2011年は2001年に比べて、複数の自称詞を使用している女子大学生の数が増加している。個人内での使用頻度の高い自称詞の10年間の変化としては、「わたし」の使用の減少、「うち」の使用の増加が認められた。「先生」「友人」「親」「きょうだい」の4場面での自称詞の使い分けの調査から、2001年より2011年の方がより頻繁に、女子大学生が場面によって複数の自称詞を使い分けている姿が明らかになった。自称詞使用の選択においては、上下関係よりも親疎関係を基準にしている可能性、及び、使用する自称詞により自身のアイデンティティの表明の可能性が示唆された。
著者
堀 由里
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.25, pp.173-178, 2022-03-15

コロナ禍でマスク生活が続く中、幼児はマスク有りの表情から他者の感情状態を正しく認知することができるのかを試行的に検討するため、マスクをした状態の保育者(写真)や他児(イラスト)の表情と感情音声をマッチングさせる課題を幼児に行った。その結果、8試行のうち正解は半分の4試行で、表情の種類は用意した全ての表情があてはまった。またイラスト刺激よりも写真刺激の方が高正答率であった。一方、表情刺激に対するラベリングを検討した結果、イラスト刺激には全4種の感情に正しいラベリングができていた反面、写真刺激は「怒り」のみ正答で、「喜び」「驚き」「悲しみ」は誤答であった。つまり、写真刺激は、音声刺激とのマッチングにおいては正しく回答できていたが、ラベリングにおいては難しさを感じていたようだった。子どもたちが日々の生活でコミュニケーションをとるのは、イラストで表現されたような分かりやすい表情ではない。そのため、実際の人間の表情を使用した方がより現実に近い状況でのデータを得ることができると考えられる。
著者
小柳津 和博
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.27, pp.15-22, 2023-03-15

重症心身障害児を含む集団の保育として、すべての子どもたちが共に育つ上で必要な視点について先行研究を基に検討した。 集団を通した保育の視点では、子ども一人一人が違うことに保育者が価値を置き、同じ主題の中で個別に配慮する保育を子どもたちに提供していくことが必要であると考えた。多様性を前提とした保育の視点では、保育者が子ども一人一人の「今」の姿を正しく把握し、個別の目標設定を行うことで、多様な成功を認める必要があった。活動への参加の視点では、保育者がすべての子どもの意思を尊重し、すべての子どもたちが互いに影響を与え合えるような関係づくりをする必要があった。 障害児・周囲の子ども、両者の思いを保育者ができるだけ的確に把握し、わかりやすい内容・形に修正することによって、重症心身障害児を含むすべての子どもたちが共に育つことが示唆された。
著者
小嶋 玲子
出版者
桜花学園大学保育学部
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.16, pp.65-77, 2017-10

日本語の自称詞は「人間関係の上下の分極に基づいた具体的な役割の確認とつながっている」(鈴木1973)と言われ、日本語でどの自称詞を使用するかは、使用する人間の対人関係を示す指標となる可能性がある。よって、女子大学生の対人関係の取り方や自己意識を考える一つの指標として、女子大学生の自称詞の使用の2001年と2011年のデータを比較し、10年間での使用の変化について論じた。2011年は2001年に比べて、複数の自称詞を使用している女子大学生の数が増加している。個人内での使用頻度の高い自称詞の10年間の変化としては、「わたし」の使用の減少、「うち」の使用の増加が認められた。「先生」「友人」「親」「きょうだい」の4場面での自称詞の使い分けの調査から、2001年より2011年の方がより頻繁に、女子大学生が場面によって複数の自称詞を使い分けている姿が明らかになった。自称詞使用の選択においては、上下関係よりも親疎関係を基準にしている可能性、及び、使用する自称詞により自身のアイデンティティの表明の可能性が示唆された。
著者
小柳津 和博
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.23, pp.73-83, 2021-03-15

日本の特別支援教育と、イギリスのSEN(Special Educational Needs)における教育施策を比較・検討することで、わが国のインクルーシブ教育に関わる現状と課題を整理した。日本のインクルーシブ教育では「特別の教育的ニーズのある子ども」と「障害のある子ども」が切り分けて考えられていない点に課題があることが明らかになった。今後の日本型インクルーシブ教育システムの推進には、多様な学びの場の選択を保障するため、幼児期からの副次的な籍の活用が有効であると考えた。また、特別支援教育の自立活動と保育の5領域の親和性を活用し、発達初期から子どもの多様な教育的ニーズを満たすための学びの下支えをすることが、子どもたちの個別最適な学びにつながると考察した。
著者
嶋守 さやか 五郎丸 聖子
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.23, pp.115-132, 2021-03-15

本稿では、彦坂諦さんからの「聞き取り」により得た内容(話された内容)と、行為としての「聞き取り」あるいは「対話」を通じて「わたしが記憶を受け継ぐ」とはどういうことかについて考察する。彦坂さんの問いは、ご自身が「どうして大日本帝國が喜ぶような純粋培養された愛国少年、軍国少年になっていたか」というものだった。彦坂さんはこの理由を知ろうとしてきたことが「私の生涯を決定した」とも語っている。彦坂さんへと問う私たち(嶋守と五郎丸)が、問い続ける彦坂さんとのやりとりによりいかに揺さぶられ、問い続けることになったのか。私たちの「記憶を受け継ぐ」プロセスを示していきたい。
著者
小柳津 和博 勝浦 眞仁
出版者
桜花学園大学保育学部
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = Bulletin of School of Early Childhood Education and Care Ohkagakuen University (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.17, pp.65-76, 2018-03-16

本研究では、デュシャンヌ型筋ジストロフィー(以下、DMD)の子どもへの保育・教育実践の報告を基に、よりよい保育・教育支援のあり方について検討することを目的とした。保育においては「保育内容」の視点から、教育においては「自立活動」の視点から子どもの育ちのニーズについて考察した。また、DMDのある子どもとかかわった経験のある教師へのインタビューを通して、教師として子どもたちに身に付けてほしい力について検討した。その結果、DMDのある子どもへの最も必要な保育・教育支援は、受容的な姿勢から子どもの姿を捉え、仲間と共に活動に継続して取り組むことであると考えた。それこそが子どもの生きる喜びにつながり、「真の育ちのニーズ」として我々が子どもたちに提供すべきものであると考えた。
著者
松永 康史
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.20, pp.159-174, 2019-11-30

本稿では、武富健治によるマンガ『鈴木先生』の第1,2話を対象とし、教師の「自己理解」を射程に入れた「子ども理解」について考察・教材化し、授業の構想を試みる。考察では、教師自身がこれまでの生活の中で築いてきた自分の見方や考え方があり、そのフィルターを通してしか子どもを理解できていないことを示し、教師の「自己理解」の必要性を記した。そのことを踏まえ、子ども理解と学生自身が自らを見つめ直す機会としての授業を構想した。
著者
森川 拓也
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDHOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVETSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.22, pp.77-90, 2020-11-30

平成20年度版小学校学習指導要領において「伝統的な言語文化に関する事項」が新たに設けられ、現行の小学校学習指導要領でも「我が国の言語文化に関する事項」として、同じく3・4学年で俳句と短歌が取り扱われている。その内容は「親しむこと」が重視され、その作品の内容についての鑑賞・解釈という点は求めてはいない。しかし、それでは俳句本来の価値に触れることは難しい。つまり文学作品としての短歌や俳句は、短く少ない言葉に秘められた思い、奥深さ、言葉によるイメージの膨らみを得ることがその価値である。その価値に触れてこそ、より親しみを感じるのではないのだろうか。その見地に立ち、光村図書教科書4年上で扱われている「雀の子そこのけそこのけ御馬が通る」(小林一茶)の俳句を例に、児童が俳句の内容に迫る授業の可能性を、授業実践例から考察した。児童は、句の中の数少ない言葉の意味、その言葉から導き出されるイメージを駆使して、この句の内容に迫っていくことができた。その授業からは、言葉というはっきりした証拠をもって豊かに想像を膨らませることの可能性が示されたと言える。
著者
小柳津 和博
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.22, pp.27-37, 2020-11-30

インクルーシブ保育において、重症心身障害児と障害のない周囲の子どもが関わり合い、育ち合うことの意義について検討した。重症心身障害児を含む集団において、関わり合い・育ち合う関係を継続させるには、子どもたちが互いに有益と感じる横並びの関係、仲間同士で共感できる関係、共に適応しあう関係を築くことが重要であると考えた。環境への接続が可能となるよう重症心身障害児の個の力を育てると同時に、接続できる集団を育てていく必要がある。互いに接続可能な状況を整えることによって、全ての子どもたちにとって個別最適な学びとなることが、インクルーシブ保育における関わり合いの持つ教育的価値である。
著者
原田 明美
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.21, pp.197-211, 2020-03-13

国際教養こども学科の1年生は夏に2週間、ニュージーランドの保育施設で保育実習を行う。その学生のレポートを中心に日本とニュージーランドの保育環境の違いを比較した。結論として、個々の玩具や遊具の機能的な違いはなかったが、その数や配置の仕方が大きく違っていた。それは遊びのとらえ方の違いや、保育の仕方の違いが大きいことが分かった。保育で何を大切にするか、日本の保育者にも求められることを考察した。