著者
佐藤 友香 小柳津 和博
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.26, pp.97-109, 2022-11-30

障害児者をきょうだいにもつ姉を対象として、同胞に対する思いの変容について調査した結果、きょうだいの同胞に対する思いは変容し続けるものであることが明らかになった。思いが変容するきっかけは、同胞の成長や同胞への理解などに対しての気付きがあったときや、同胞の可能性について着目したときにあった。また、同胞がいて良かったと思うことのできる経験によって、きょうだいの気持ちは前向きになったり、同胞を尊重したいという思いになったりしていくことが示唆された。 きょうだいは、賞賛されるタイミングや内容によっては、必ずしも好意的な感情を持たないということが明らかになった。また、「同胞+私」で賞賛されるより、「私」を個として認め、ほめられることに喜びを感じる可能性があることが明らかになった。"
著者
森川 拓也
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.21, pp.139-155, 2020-03-13

絵と文章が一体となって成り立つ「絵本」であるが、教科書教材として用いられる場合、いくつかの絵が省略さえるため、内容の理解を妨げることになるという指摘がある。しかし絵が省略されることは、絵から理解していた内容を、言葉・文章を手がかりにして考え理解することが求められることになるが、このことを国語科の授業で生かすことが重要である。つまり、絵が省略された分、余計に言葉や文に着目して読み進めることが必要となるが、いくつかの効果が期待できる。作家の仕掛けの最小単位のものが「言葉(単語)」であるから、「言葉(単語)」に着目することが、言葉と文、段落等の関係性までも読み取ることになり、作品全体の構造的・論理的な理解につながる。また言葉の意味を適用する必要が生まれ、言葉の力を引き出すことにもなる。つまり、絵本は、論理的思考力や言語能力の発達のために有効な「教材」となることが期待できるのである。言葉に親しむ絵本から言葉を学ぶ絵本へ。それが絵本を国語教材として扱う意味である。
著者
堀 由里
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.25, pp.173-178, 2022-03-15

コロナ禍でマスク生活が続く中、幼児はマスク有りの表情から他者の感情状態を正しく認知することができるのかを試行的に検討するため、マスクをした状態の保育者(写真)や他児(イラスト)の表情と感情音声をマッチングさせる課題を幼児に行った。その結果、8試行のうち正解は半分の4試行で、表情の種類は用意した全ての表情があてはまった。またイラスト刺激よりも写真刺激の方が高正答率であった。一方、表情刺激に対するラベリングを検討した結果、イラスト刺激には全4種の感情に正しいラベリングができていた反面、写真刺激は「怒り」のみ正答で、「喜び」「驚き」「悲しみ」は誤答であった。つまり、写真刺激は、音声刺激とのマッチングにおいては正しく回答できていたが、ラベリングにおいては難しさを感じていたようだった。子どもたちが日々の生活でコミュニケーションをとるのは、イラストで表現されたような分かりやすい表情ではない。そのため、実際の人間の表情を使用した方がより現実に近い状況でのデータを得ることができると考えられる。
著者
小柳津 和博
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.27, pp.15-22, 2023-03-15

重症心身障害児を含む集団の保育として、すべての子どもたちが共に育つ上で必要な視点について先行研究を基に検討した。 集団を通した保育の視点では、子ども一人一人が違うことに保育者が価値を置き、同じ主題の中で個別に配慮する保育を子どもたちに提供していくことが必要であると考えた。多様性を前提とした保育の視点では、保育者が子ども一人一人の「今」の姿を正しく把握し、個別の目標設定を行うことで、多様な成功を認める必要があった。活動への参加の視点では、保育者がすべての子どもの意思を尊重し、すべての子どもたちが互いに影響を与え合えるような関係づくりをする必要があった。 障害児・周囲の子ども、両者の思いを保育者ができるだけ的確に把握し、わかりやすい内容・形に修正することによって、重症心身障害児を含むすべての子どもたちが共に育つことが示唆された。
著者
小柳津 和博
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.23, pp.73-83, 2021-03-15

日本の特別支援教育と、イギリスのSEN(Special Educational Needs)における教育施策を比較・検討することで、わが国のインクルーシブ教育に関わる現状と課題を整理した。日本のインクルーシブ教育では「特別の教育的ニーズのある子ども」と「障害のある子ども」が切り分けて考えられていない点に課題があることが明らかになった。今後の日本型インクルーシブ教育システムの推進には、多様な学びの場の選択を保障するため、幼児期からの副次的な籍の活用が有効であると考えた。また、特別支援教育の自立活動と保育の5領域の親和性を活用し、発達初期から子どもの多様な教育的ニーズを満たすための学びの下支えをすることが、子どもたちの個別最適な学びにつながると考察した。
著者
嶋守 さやか 五郎丸 聖子
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.23, pp.115-132, 2021-03-15

本稿では、彦坂諦さんからの「聞き取り」により得た内容(話された内容)と、行為としての「聞き取り」あるいは「対話」を通じて「わたしが記憶を受け継ぐ」とはどういうことかについて考察する。彦坂さんの問いは、ご自身が「どうして大日本帝國が喜ぶような純粋培養された愛国少年、軍国少年になっていたか」というものだった。彦坂さんはこの理由を知ろうとしてきたことが「私の生涯を決定した」とも語っている。彦坂さんへと問う私たち(嶋守と五郎丸)が、問い続ける彦坂さんとのやりとりによりいかに揺さぶられ、問い続けることになったのか。私たちの「記憶を受け継ぐ」プロセスを示していきたい。
著者
松永 康史
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.20, pp.159-174, 2019-11-30

本稿では、武富健治によるマンガ『鈴木先生』の第1,2話を対象とし、教師の「自己理解」を射程に入れた「子ども理解」について考察・教材化し、授業の構想を試みる。考察では、教師自身がこれまでの生活の中で築いてきた自分の見方や考え方があり、そのフィルターを通してしか子どもを理解できていないことを示し、教師の「自己理解」の必要性を記した。そのことを踏まえ、子ども理解と学生自身が自らを見つめ直す機会としての授業を構想した。
著者
小柳津 和博
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.22, pp.27-37, 2020-11-30

インクルーシブ保育において、重症心身障害児と障害のない周囲の子どもが関わり合い、育ち合うことの意義について検討した。重症心身障害児を含む集団において、関わり合い・育ち合う関係を継続させるには、子どもたちが互いに有益と感じる横並びの関係、仲間同士で共感できる関係、共に適応しあう関係を築くことが重要であると考えた。環境への接続が可能となるよう重症心身障害児の個の力を育てると同時に、接続できる集団を育てていく必要がある。互いに接続可能な状況を整えることによって、全ての子どもたちにとって個別最適な学びとなることが、インクルーシブ保育における関わり合いの持つ教育的価値である。
著者
原田 明美
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.21, pp.197-211, 2020-03-13

国際教養こども学科の1年生は夏に2週間、ニュージーランドの保育施設で保育実習を行う。その学生のレポートを中心に日本とニュージーランドの保育環境の違いを比較した。結論として、個々の玩具や遊具の機能的な違いはなかったが、その数や配置の仕方が大きく違っていた。それは遊びのとらえ方の違いや、保育の仕方の違いが大きいことが分かった。保育で何を大切にするか、日本の保育者にも求められることを考察した。