著者
小柳津 和博 野々山 貴
出版者
日本リハビリテイション心理学会
雑誌
リハビリテイション心理学研究 (ISSN:03895599)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.51-63, 2022-11-30 (Released:2023-02-20)
参考文献数
25

近年,各地でインクルーシブ保育の実践が進められているが,子ども同士の関わり合いを促す保育者の専門性を一般化することは難しいとされてきた。本研究では,インクルーシブ保育において子ども同士の関わり合いを成立させるために必要となる保育者の専門性について,実際の保育場面を分析することで明らかにすることを目的とした。対象となる施設で,重症心身障害児と他児が関わり合う場面をエピソードとして取り出し,重要語句を選定した。重要語句から保育者の専門性に関わる概念を抽出した。分析の結果,インクルーシブ保育に必要な保育者の専門性として8項目の説明概念が抽出され,これらは創造力として4種類に構成された。このことから,インクルーシブ保育において子ども同士の関わり合いを促す保育者の専門性に,4種類の創造力があると考察した。
著者
島岡 恵 干川 隆 本吉 大介
出版者
日本リハビリテイション心理学会
雑誌
リハビリテイション心理学研究 (ISSN:03895599)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.17-28, 2021-12-08 (Released:2022-01-17)
参考文献数
25

本研究の目的は,脳性まひのある生徒の身体の動きに及ぼす動作法とミラーセラピーの効果を検討することであった。23回にわたって実施された試行は,指導の内容からA期(動作法のみ),B期(動作法及び下肢のMT),C期(動作法及び上下肢のMT)に分けられた。指導の結果,対象児はB期から右足の背屈運動の改善があり,手指操作能力分類システム(MACS)による評価では,BL期に比べてC期に14.5点の改善が見られた。本研究の結果から,対象児が鏡を見ながら自己の運動に修正を加えていくことで指先の動きや足首の背屈運動が改善されたことから,ミラーニューロンシステムの活性化が行われたと考察した。結果は,脳性まひ者に対して動作法とミラーセラピーを用いることで,その両方の取り組みの相乗効果が期待されることを示唆した。
著者
岩男 芙美 遠矢 浩一
出版者
日本リハビリテイション心理学会
雑誌
リハビリテイション心理学研究 (ISSN:03895599)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.63-74, 2021-01-14 (Released:2022-02-17)
参考文献数
12

援助者の言語的介入および被援助者の不安特性と不安へのコーピングスタイルが援助場面評価へ与える影響を検討した。大学生に対し,相談内容(生活・友人の2種)及び援助者の言語的介入(承認・解決・整理の3種)が異なる援助場面の文章を提示し,場面想定法によって援助場面への評価を測定した。不安へのコーピングスタイルの分類では,対処多様型,問題焦点対処型,葛藤型の3タイプが抽出された。これらと援助場面評価の関連を検討したところ,スタイルによって異なる関連の仕方が示された。友人に関する援助場面において,対処多様型は承認されることで肯定的に援助場面を評価する一方,解決策の提示には否定的であった。葛藤型は,生活に関する援助場面自体を否定的に評価した。自身の問題への被援助者なりの対処の仕方に着目し,被援助者のコーピングスタイルを考慮しながら,援助者の介入を調整する必要があることが考察された。