著者
五島 史行 守本 倫子 泰地 秀信
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.116, no.2, pp.91-96, 2013 (Released:2013-04-11)
参考文献数
17

小児心因性起立, 歩行障害の症例を呈示し, 文献的考察を行った. 症例1は10歳男児で心因性発熱, 心因性視力障害を合併した症例で, 発症後約4カ月経過して症状は改善した. 症例2は10歳男児で, 頭痛, 微熱, 倦怠感, 心因性視覚障害を合併したものであり, 約5カ月経過して症状が改善した. 小児の心因性起立, 歩行障害の頻度は高いものではないが, 診察に際しては臨床的特徴を熟知しておく必要がある. 治療にはある程度の期間が必要である. 器質的疾患を除外し, 診断を確定した後は呈示した症例のように治療を急がず, 時間をかけた対応が必要である.
著者
原 真理子 守本 倫子
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.107-110, 2016-03-31 (Released:2016-06-23)
参考文献数
15

PFAPA 症候群は, 周期性発熱を主症状とし, アフタ性口内炎, 咽頭炎, 頸部リンパ節炎を随伴する. 比較的新しい概念の疾患であり, 詳しい病因や病態は分かっておらず, 診断に迷うことも少なくない. 薬物療法にはプレドニゾロン頓用があり, 著明な解熱効果が得られる特徴をもつ. 外科的治療法では, 口蓋扁桃摘出術が有効であり, 当科の治療成績でも高い有効率が示された. 病態仮説には, 自然免疫の活性異常や末梢組織での T 細胞活性などが提唱されている. また, 扁桃炎の随伴が多く, 口蓋扁桃摘出術が有効であることから, 本疾患と扁桃組織との間には何らかの関連性があると推測される. 現在, 扁桃組織の遺伝子とタンパク質の網羅的解析を進めている.
著者
藤井 可絵 守本 倫子 小森 学 吉浜 圭祐
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.336-343, 2017 (Released:2018-03-31)
参考文献数
14

当院にて手術加療を行った先天性後鼻孔閉鎖症19例について初回手術時期,ステント留置期間およびサイズ,再手術例についての検討を行った。初回手術年齢平均は両側閉鎖例で生後4か月,片側閉鎖例では5歳3か月と,両側閉鎖例で有意に低年齢での手術を受けていた。ステントの平均留置期間は,両側閉鎖例と片側閉鎖例での比較,および初回手術後開存した例と術後狭窄あるいは閉鎖した症例で比較した結果,有意差はなかったが,ステント径は両側閉鎖例では有意に小さいサイズを選択しており,初回手術年齢が低年齢であることと関連している。再手術した8例中7例は最終的に開存しており,成長と共に鼻腔が拡大することで手術方法やステント径も選択できる事が良好な結果につながると考えられ,症例に応じた手術計画を立てる必要があると考えられた。
著者
日本耳鼻咽喉科学会福祉医療・乳幼児委員会 守本 倫子 益田 慎 麻生 伸 樫尾 明憲 神田 幸彦 中澤 操 森田 訓子 中川 尚志 西﨑 和則
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.121, no.9, pp.1173-1180, 2018-09-20 (Released:2018-09-29)
参考文献数
29
被引用文献数
6

背景: ムンプスワクチンは副反応である無菌性髄膜炎が注目を集め, 任意接種となっているため, 接種率は40%近くまで低下し, 周期的に流行が繰り返されている. ムンプス難聴は難治性であり, ワクチンで予防することが唯一の対策であるが, そのことは広く知られていない. そこで, 本調査では近年のムンプス難聴患者の実態を明らかにすることを目的とした. 方法: 2015~2016年の2年間に発症したムンプス難聴症例について全国の耳鼻咽喉科を標榜する5,565施設に対してアンケート調査を行い, 3,906施設より回答を得た (回答率70%). 結果: 少なくとも359人が罹患し, そのうち詳細が明らかな335人について検討した. 発症年齢は特に就学前および学童期と30歳代の子育て世代にピークが認められた. 一側難聴は320人 (95.5%), 両側難聴は15人 (4.5%) であり, そのうち一側難聴では290人 (91%) が高度以上の難聴であり, 両側難聴の12人 (80%) は良聴耳でも高度以上の難聴が残存していた. 初診時と最終聴力の経過を追えた203人中, 55人 (27%) は経過中に聴力の悪化を認め, うち52人 (95%) は重度難聴となっていた. 反対に改善が認められたのは11人 (5.0%) のみであった. 結論: ムンプス流行による難聴発症は調査された以上に多いものと推測され, 治療効果もほぼないことから, 予防接種率を高めるために定期接種化が望まれる.
著者
泰地 秀信 守本 倫子
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.115, no.7, pp.676-681, 2012 (Released:2012-09-06)
参考文献数
13
被引用文献数
1 3

小児では突発難聴を来す疾患が成人とは異なり, また突発性難聴に比べて頻度が高い. 小児突発難聴20例の臨床像を検討した. 小児の突発難聴では心因性難聴がかなり多いので, 他覚的聴力検査を組み合わせて診断を行うべきである. 純音聴力検査とDPOAEの結果に乖離がみられる場合は心因性難聴が強く疑われるが, 確定診断のためにはABR検査が必要である. ムンプスでは不顕性感染が30~40%にみられるため, 耳下腺腫脹のないムンプス難聴例がある. 小児の急性感音難聴ではムンプスの罹患歴・予防接種歴を問診するべきである. 前庭水管拡大症も突発難聴において考えておくべき疾患であり, 低音域のA-B gapを伴う高音障害型のオージオグラムでは本症を疑う.
著者
日本耳鼻咽喉科学会福祉医療・乳幼児委員会 守本 倫子 益田 慎 麻生 伸 樫尾 明憲 神田 幸彦 中澤 操 増田 佐和子 森田 訓子 中川 尚志 西﨑 和則
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.122, no.9, pp.1221-1228, 2019-09-20 (Released:2019-10-02)
参考文献数
11

乳幼児の自覚的聴力検査から得られる情報は重要であり, 可能な限り信頼性の高いデータを短時間に得る必要がある. これらの検査技術の困難度, 信頼度が年齢 (3歳未満, 3~6歳, 6歳以上の3群に分類) や発達レベル (定型発達, 発達障害, 知的発達障害の3群に分類) から受ける影響を, 聴力検査にかかった時間および検者が声かけなどに対する反応などから感じた聴力検査結果との整合性を「検査信頼度」として評価, 検討を行った. 研究参加施設は大学病院, 総合病院, クリニックなど15施設である. 検査の信頼度は, 3歳未満では知的発達障害児で41%, 定型発達児58%, 発達障害児50%と知的発達障害児が有意に低かった. 3~6歳では定型発達児88%, 発達障害児75%, 知的発達障害児73%であり, 6歳以上では発達障害児と定型発達児はどちらも90%以上であったが, 知的発達障害児のみ77%であった. 検査にかかる時間も3歳未満では, 発達による差異は認められなかったが, 3~6歳未満および6歳以上においては, 発達障害児と定型発達児に比べて知的発達障害児の検査時間は有意に長かった. 6歳未満の児への聴力検査には技術と時間がかかること, 発達障害・知的発達障害があるとさらに検者の検査にかける時間や高度な技術が必要となることが明らかになった.
著者
仙田 里奈 角木 拓也 黒瀬 誠 守本 倫子 高野 賢一
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.228-234, 2023-06-10 (Released:2023-06-10)
参考文献数
11

小児気管切開術は長期の気道・呼吸管理の管理に必須の治療である。経過の中で多様な合併症を引き起こすため,気管切開術の術式や術後の管理においてさまざまな工夫が求められることも多い。また,気管孔閉鎖においては確立されたプロトコルが存在せず各施設の経験に頼られている部分が大きい。周産期・小児医療の発達により今後も小児気管切開患者の増加が見込まれるため,その管理において指標となるデータおよびプロトコルが必要になると考える。今回われわれは,小児気管切開患者の安全な気道管理および気管孔閉鎖の実現を目的とした全国調査を実施した。対象施設202施設中57施設から回答を得た。過去10年間に小児気管切開術を施行している施設は29施設であり,過去1年間に行われた小児気管切開術症例は全196例であった。術式や術前の経過については各施設直近20症例,長期経過における合併症と気管孔閉鎖については過去10年間の症例で検討した。合併症の発症率が成人と比較して多い可能性や,気管孔閉鎖率が1割程度に留まることが明らかとなった。今後は長期管理や気管孔閉鎖についての共通認識を深めることが望まれる。
著者
守本 倫子 川城 信子 土橋 信明
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.208-213, 2003-06-10
参考文献数
6
被引用文献数
2 2

小児の声門部異物1例および声門下異物2例を経験したので,文献的考察を含め報告する。1例目は9カ月男児,プラスチック片の声門部異物で,発症当日に摘出された。2例目は1歳1カ月の女児で突然の咳嗽のため他院で仮性クループとして治療を施されたが,発症翌日喘鳴が増悪してきたため当科受診した。エビの尻尾が声門下に嵌頓しているのを認めたため摘出した。3例目は2歳8カ月の女児,ピスタチオナッツの殼による声門下異物を認め摘出したが,喘鳴が続くため喘息の診断のもと7カ月間治療を行った。その後の再精査の結果,殼の一部が残存していたことが判明し,摘出したところ喘鳴は消失した。小児では十分な問診が行えず,診察の協力も得られないため,喉頭異物の発見が遅れることがある。したがって小児の喘鳴,嗄声,咳嗽では異物の可能性を念頭に置き,喉頭ファイバーと頸部単純X線写真による異物の検索は必須である。また,異物摘出後も喘鳴が持続する場合は異物残存の可能性を考慮し,再検索する必要がある。
著者
守本 倫子
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.286-290, 2015

 ダウン症は800人に 1 人の割合で出生する染色体異常であり,ムコ多糖症はムコ多糖物質を代謝する酵素欠乏によるライソゾーム病である。どちらも滲出性中耳炎や感音難聴を合併しやすく,補聴器装用や鼓膜チューブ留置などの必要性やタイミングを見極めて治療を行っていく必要がある。また,咽頭狭窄があるため睡眠時無呼吸を来しやすい。アデノイドや扁桃摘出術は適応になるが,全身麻酔のリスクや,もともとの咽頭狭窄が原因で十分に治療効果が挙げられない可能性があることに注意する必要がある。2 つの疾患は遺伝的な原因も発症の機序も全く異なるものであるが,類似した共通の症状もある。手術治療が高い効果を挙げる一方,術後も症状が改善せず苦慮することも少なくない。こうした疾患においては,個々の治療方針についても小児科と連携をとっていくことが重要である。
著者
鈴木 法臣 守本 倫子 五島 史行
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.89-93, 2015-04-30 (Released:2015-06-01)
参考文献数
9

Pediatric subjects with vertigo are rare in Japan. Benign paroxysmal vertigo (BPV) is a frequent disease similar to orthostatic hypotension. We report herein on a case of BPV in which psychological dizziness had previously been diagnosed. A 5-year-old girl visited our hospital complaining of repeated attacks of vertigo for 3 years. She had intermittent strabismus, and the result of her stabilometry showed functional symptoms, so the doctor who had treated her previously at the age of 4 diagnosed psychological dizziness with visual influence, and observation was started. Her symptoms persisted for 12 months however, and she visited our hospital. Her equilibrium and neurological status were examined. And we asked her family about the situation at the time of attack in detail. Based on the interview, we discovered that she felt fear at the time of attacks, and her family had a history of migraines. Based on our finding, we diagnosed her as having BPV. Vestibular rehabilitation on its own effected a cure. History taking is so important in the diagnosis of BPV, so that we may fully understand the diagnostic criteria prior to examination of pediatric subjects with vertigo.
著者
守本 倫子
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.141-143, 2015 (Released:2017-03-01)
参考文献数
8
被引用文献数
3

新しい小児人工内耳適応基準2014の内容について解説した。従来と異なる点は、適応年齢が1歳以上かつ体重8kg以上、聴力は裸耳90dB以上かつ補聴器装用にて閾値45dBに満たないもの、語音明瞭度が50%未満であるもの、重度難聴遺伝子変異があり改善の見込みがないもの、1kHz、2kHz以上が聴取できず構音の発達が望めない場合が対象となった。また両耳装用を否定しないとの一文が加わった。
著者
五島 史行 鈴木 法臣 原 真理子 土橋 奈々 守本 倫子
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.120, no.3, pp.285, 2017-03-20 (Released:2017-04-19)

掲載号:118巻7号,860-866頁参考文献にしたがって5歳以上と5歳未満の2群に分けて解析せねばならないところを誤って7歳未満と7歳以上に分けて解析したため,上記論文を取り下げたい旨の申請が著者からあり,これを承認した.
著者
大原 卓哉 泰地 秀信 守本 倫子 本村 朋子 松永 達雄
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.289-294, 2011

Auditory neuropathy spectrum disorder (以下ANSDと略) は, 耳音響放射が正常であるにもかかわらずABRが無反応あるいは異常となる病態であり, 聴力に比し語音聴取力が低いことが特徴とされている。ANSDの遺伝的原因の解明が近年進んできており, 遺伝的原因として<I>OTOF</I>遺伝子変異などの報告がある。ANSDに対する根本的治療は確立されておらず, 人工内耳の効果や適応などについてまだ意見の一致がみられていない点が多い。今回我々は<I>OTOF</I>遺伝子変異を認めるANSDの乳幼児3症例に対し人工内耳埋込術を施行し, その臨床経過, 装用効果について検討したので報告する。3症例ともDPOAE両側正常, ABR両側無反応であり遺伝子検査にて<I>OTOF</I>遺伝子変異を認めた。補聴器装用効果は不十分であったが, 人工内耳装用により良好な聴取能が得られており言語も発達してきている。