- 著者
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小森 智康
都木 徹
及川 靖広
- 出版者
- 一般社団法人 映像情報メディア学会
- 雑誌
- 映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
- 巻号頁・発行日
- vol.71, no.5, pp.J172-J178, 2017
高齢者では,聴力レベルの低下などの原因により,番組の背景音がうるさく感じてナレーションなどのダイアログが聞きとりにくくなることが知られている.背景音を小さくすることで,ダイアログは聞きとりやすくなるが,若年者にとっては番組演出の効果を小さくしすぎてしまうことがある.すなわち,若年者と高齢者にとって好ましい再生方法としては,背景音とダイアログのバランスを変えずに,音質も劣化させずに,聞きとりやすくする方法が必要となる.そのための基礎検討として,若年者および高齢者を対象として,ナレーションやセリフなどのダイアログと,ノイズや音楽などの背景音を,前および上や横方向に配置されるスピーカを使用し,ダイアログと背景音の再生方向を変えた場合のダイアログの聞きとりの正答率を調査した.単語と音楽の組合せでは,単語と音楽を前方向から再生する場合と比較して,単語を上方向から再生することで,高齢者で25%以上,若年者で15%以上,正答率が改善することを確認した.これらの実験結果により,空間的なマスキングリリースを利用することで,背景音がある場合に,その再生レベルを維持したままで,高齢者にも聞きとりやすい音響再生方法を実現するための知見を得たので報告する.