著者
小池 真理
出版者
北海道大学留学生センター
雑誌
北海道大学留学生センター紀要
巻号頁・発行日
vol.4, pp.58-80, 2000-12

本稿では、日本語学習者の依頼の発話行為を母語話者に評価してもらい、失礼な印象を受けるのが学習者のどのような発話行為からなっているか、さらに同じ状況での母語話者の発話行為と比較して、どのような違いがあるのかを分析することを目的とする。まず、学習者の依頼のロールプレイを母語話者に見せ、自由に印象を語ってもらった。そのコメント中から失礼な印象、不安を感じると述べられた学習者の発話を取り出し、分析した。そして同じ場面での母語話者のロールプレイから得られた発話データと比較した。分析の結果、「依頼」の場面において母語話者が失礼な印象を持ったのは、(1)終助詞「ね」の多用で、特に文節末における多用、(2)「明日時間がありますか」と突然尋ねる用件の切り出し方、(3)可能形を使った依頼表現、(4)開き手とのネゴシエーションが不足した一方的な談話展開、であった。さらに、学習者の発話行為には母語話者のものと比べて、(1)聞き手の負担に遠慮を示す発話行為の不足、(2)相手の負担の軽減を提示する発話行為の不足、(3)開き手の反応に応じたネゴシエーションの不足、が見られた。
著者
鄭 惠先 小池 真理 舩橋 瑞貴
出版者
北海道大学留学生センター
雑誌
北海道大学留学生センター紀要
巻号頁・発行日
vol.13, pp.4-21, 2009-12

本稿では、類義表現の「~てならない」「~てたまらない」「~てしかたない」「~てしようがない」に関して、前接語彙とジャンルという2つの観点からその使い分けを分析した。本稿で使用した『現代日本語書き言葉均衡コーパス』は、大規模かつ複合性を持つ多ジャンルコーパスであるため、近似的ではあるが現実の日本語使用を多く反映している。よって、つぎに示す本稿での分析結果は、実際の使用場面に直結する有益な情報として、日本語学習者に提供できるものと考える。1)「ならない」は動詞、中でも自発、心状を表す動詞との共起関係が強く、「たまらない」はイ形容詞、中でも希望、感情を表すイ形容詞との共起関係が強い。2)「気がしてならない」「~たくてたまらない」「気になってしかたない」など、いくつかの定型的な共起パターンが存在する。3)文字言語的要素の強いジャンルでは「しかたない」、音声言語的要素の強いジャンルでは「しようがない」の使用が目立つ。4)国会議事録のような、フォーマルさを持ち、客観性が求められる話題の場では、「ならない」の多用、「たまらない」の非用という特徴的な傾向が見られる。
著者
小池 真理
出版者
北海道大学留学生センター = Hokkaido University International Student Center
雑誌
北海道大学留学生センター紀要
巻号頁・発行日
vol.8, pp.99-108, 2004-12

While many Japanese teachers place great importance on their knowledge and methodology of teaching Japanese, a paradigm shift stressing self-development has taken place in recent years. This shift has emphasized the nccessity of teacher introspection. As well as reflecting on their own resources as teachers, teachers need also to consider learner resources, so that they can understand learners' beliefs, learning styles, and feelings as well as learners' needs and readiness. This paper identifies the most important roles expected of teachers by learners, based on semi-structured interviews. The results show that learners expect teachers to encourage learners in finding appropriate learning methods and in the acquisition or development of independent attitude and motivation, as well as to understand learners' individual and affective conclitions. The paper demonstrates the importance of understanding learners' beliefs and of developing observational skills.