著者
鄭 惠先 小池 真理 舩橋 瑞貴
出版者
北海道大学留学生センター
雑誌
北海道大学留学生センター紀要
巻号頁・発行日
vol.13, pp.4-21, 2009-12

本稿では、類義表現の「~てならない」「~てたまらない」「~てしかたない」「~てしようがない」に関して、前接語彙とジャンルという2つの観点からその使い分けを分析した。本稿で使用した『現代日本語書き言葉均衡コーパス』は、大規模かつ複合性を持つ多ジャンルコーパスであるため、近似的ではあるが現実の日本語使用を多く反映している。よって、つぎに示す本稿での分析結果は、実際の使用場面に直結する有益な情報として、日本語学習者に提供できるものと考える。1)「ならない」は動詞、中でも自発、心状を表す動詞との共起関係が強く、「たまらない」はイ形容詞、中でも希望、感情を表すイ形容詞との共起関係が強い。2)「気がしてならない」「~たくてたまらない」「気になってしかたない」など、いくつかの定型的な共起パターンが存在する。3)文字言語的要素の強いジャンルでは「しかたない」、音声言語的要素の強いジャンルでは「しようがない」の使用が目立つ。4)国会議事録のような、フォーマルさを持ち、客観性が求められる話題の場では、「ならない」の多用、「たまらない」の非用という特徴的な傾向が見られる。
著者
舩橋 瑞貴
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.155, pp.126-141, 2013 (Released:2017-02-17)
参考文献数
15

本稿では,注釈挿入における発話構造の有標化を,言語形式以外のリソース(音声特徴,非言語行動,人工物)の使用から考察する。有標化にかかわるリソースとして,ポーズをはじめとする複数の音声特徴,ジェスチャーや姿勢といった非言語行動,スライド等の人工物をみとめ,リソースが互いに関与し有標化がなされる様子をみる。注釈挿入において,リソースの複合的使用,それらが一体となって発話構造の有標化が実現されていることを明らかにし,日本語教育のための文法研究では,言語形式だけを記述の対象とするのではなく,言語形式と言語形式以外のリソースを等価なものとして扱い,総体として分析する視点が必要であることを示す。
著者
舩橋 瑞貴 Mizuki FUNAHASHI
出版者
国立国語研究所
雑誌
国立国語研究所論集 (ISSN:2186134X)
巻号頁・発行日
no.12, pp.13-27, 2017-01

日本語と韓国語の口頭発表における修復(注釈挿入と言い直し)を取り上げ,修復を実現する際の言語的手段が異なることをみる。助詞の言い直しにおいては,選択される言語的手段が助詞と名詞の膠着度の異なりとかかわっている可能性を示す。さらに,助詞と名詞の膠着度が低い日本語に関しては,言い直しの開始位置と関係があることを示す。従来の対照研究では,言語体系内の要素を対照単位とするアプローチが多くとられるが,日本語教育のための対照研究においては,ある言語行為を行う際の言語的手段の選択というアプローチも必要であることを主張する。This paper examines the language in repair (annotation insertion and self-repair) in Japanese and Korean oral presentations and confirms different verbal measures used to realize these repairs. The self-repair of particles, which is one of the representative self-repairs, implies the possibility that the selected verbal measures are associated with differences in the agglutination degree of the particles and nouns. Further, it is shown that in Japanese, in which the agglutination degree of the particles and nouns is low, these are connected with the start position of the self-repair. In most approaches used in conventional contrastive analysis, the elements in the language system are assumed as units for comparison; however, I believe that approaches involving the selection of verbal measures for specific language actions are also needed in contrastive analysis for Japanese language education.
著者
平田 未季 舩橋 瑞貴
出版者
専門日本語教育学会
雑誌
専門日本語教育研究 (ISSN:13451995)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.53-58, 2013-12-26 (Released:2016-04-07)
参考文献数
11

本報告は、日本語学習者に聞き手を意識した研究発表をさせることを目的として、聞き手に対する配慮の実現型の一つである「注釈挿入」を研究発表指導に取り入れた。その結果、日本語学習者のパフォーマンスにおいて、ピア評価に基づく「注釈挿入」の使用、それに伴う非言語行動及び音声面での変化が現れた。