著者
井之上 寿美 河野 芳美 河野 千佳 白木 恭子 塩田 睦記 雨宮 馨 中村 由紀子 杉浦 信子 小沢 愉理 北 洋輔 小沢 浩
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.356-358, 2022 (Released:2022-10-13)
参考文献数
10

神経発達症児の血清亜鉛値について健常児の参照値と比較検討した.血清亜鉛値を測定した学齢期の神経発達症児63名(男児49名,女児14名)を患者群とし,先行研究において年齢分布が一致する380名の健常児のデータを用いて解析を行った.その結果,患者群のうち19名(30%)が亜鉛欠乏症,また39名(62%)が潜在性亜鉛欠乏,亜鉛値正常は5名(8%)であり,血清亜鉛値は健常児の参照値と比較して有意に低値であった(p<0.001).患者群の診断内訳では,ADHD(36名,54%)と自閉スペクトラム症(22名,39%)の2疾患が大部分を占めたものの,血清亜鉛値は疾患間で有意な差はなく(p=0.32),性差も認められなかった(p=0.95).神経発達症児は亜鉛欠乏傾向にあると考えられ,疾患や性別による血清亜鉛値の明らかな違いはなかった.
著者
小沢 愉理 小沢 浩
出版者
一般社団法人 日本小児精神神経学会
雑誌
小児の精神と神経 (ISSN:05599040)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.43-51, 2021 (Released:2021-04-01)
参考文献数
12

知的障害・発達障害を有する患者の移行は各自の多様性やニーズの違いがあり困難を極める.当センターでは福祉相談科と連携し移行に関する流れを考案し,移行期医療における現状と取り組み,移行先の医師に移行に関するアンケートを実施したので報告する.2017年10月から2018年9月まで20歳以上で療育外来の診療を継続している症例は療育外来全受診者の5.5%であった.ASD,CP,ダウン症,てんかんが多かった.2018年1月から2019年4月までに精神科・心療内科への移行は44例であった.アンケートでは移行の困難さの理由について当事者の受診意欲,小児科と精神科の違い,治療関係の確立の難しさがあげられた.医療者側に障害に関する知識や対応のスキルが求められ,小児科と精神科・心療内科医師間の連携の強化とともに,社会が当事者の抱える問題点についてより理解を深める必要があり,教育や福祉など多分野との連携を強化し,シームレスな支援が大切である.