- 著者
-
小沢 浩
- 出版者
- 名古屋大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2006
本研究は, ライン生産からセル生産への移行過程に関する概念モデルを精緻化するために, 製造作業に要する動作時間を測定すること, および, 既にライン生産からセル生産へ移行した工場における以降のプロセスに関する事例を整理することを目的として行われた。まず, 動作時間の測定については, これを行ったものの, 実験できる範囲の製造工程では, 簡単な作業の再現しかできないこと被験者となる作業者が限られていることなどから, 常にセル生産が有利であるという結果しか得られていない。しかしながら, 作業時間の平均ではなく, 作業者ごとの作業時間のバラツキをコントロールする方法がセル生産とライン生産では全く異なることに気がついた。そしてこれにもとづいて, 生産形態と業績評価法・行動規範が適合していなければならないという事実に気がついた。具体的には, 「産出/投入」として計算される能率概念は, セル生産では適用可能であるが, ライン生産でこの概念を適用すると工程が混乱することが論証できた。つまり, 一般的な感覚における「能率向上」が適合するのは, セル生産においてであり, ライン生産においてこれを目指すことは悪い効果をもたらしかねないということである。この知見は, 私がこれまで行ってきたJust-In-Time生産の解釈にも新たな光を投じるものである。この成果は, 標準原価計算と関連づけて, 第67回日本会計研究学会において報告した。セル生産と関連づけた研究は, 2009年6月に, 組織学会でも報告し, 論文にまとめる予定である。また, もう一つの課題である事例の収集・整理については, 十分な成果を得られていない。