著者
小渕 浩平 務台 均 矢口 優夏 小宮山 貴也 中村 裕一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.279-288, 2023-06-15 (Released:2023-06-15)
参考文献数
25

急性期病床入院中の脳損傷者に対して,ドライビングシミュレーター(以下,DS)を用いた評価と,自動車運転再開・非再開の関係性を調査し,急性期病床におけるDSの下位検査項目のカットオフ値と予測精度を検討した.対象は,当院に入院した脳損傷者のうち,評価を完遂した88名であった.分析の結果,誤反応合計,発信停止合計,全般合計,判定得点合計でカットオフ値が算出され,3つ以上カットオフ値を上回った症例は,非再開となる精度が77%であった.また,決定木分析の結果から,神経心理学的検査を含めた複合的な判断が必要である一方,DS評価は急性期病床においても運転再開可否の判定に有用な可能性が示唆された.
著者
小渕 浩平 竹林 崇 花田 恵介 徳田 和宏 中村 裕一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.703-710, 2022-12-15 (Released:2022-12-15)
参考文献数
22

脳卒中後の上肢麻痺に対するエビデンスの確立されたアプローチの多くは,生活期の患者を対象としている.急性期でもエビデンスレベルの高い研究が望まれるが,急性期に比較試験を行うことは容易でない.そこで今回,急性期での修正CI療法の効果を推定するために,先行研究のデータプールを用いて,課題とされる対照群を設定し,介入群と傾向スコアマッチングによる比較検討を行った.結果,急性期での修正CI療法の実施は,比較的予後が良好な自宅退院例では有効な可能性がある一方で,回復期転院例では,短期間で十分な効果が得られない可能性が示唆された.今後は,麻痺手の使用行動に関する影響に関しても比較検討を行っていく.
著者
小渕 浩平 竹林 崇 松井 克明 村岡 尚 中村 裕一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.497-504, 2019-08-15 (Released:2019-08-15)
参考文献数
19

学習性不使用による慢性期脳卒中後の上肢運動障害に対し,Constraint-induced movement therapy(以下,CI療法)の主要コンセプトであるTransfer packageを,外来作業療法にて実施した.低頻度(週1回20分)であったが,4ヵ月後には臨床上重要な最小変化を大きく超える,麻痺手の使用行動と上肢機能の改善を認めた.さらに,事例が目標とした活動の多くを獲得することができた.CI療法は,訓練時間や医療保険適応の問題が指摘されているが,事例の状態によっては,必要なコンセプトを中心に,低頻度の介入でも効果が得られる可能性が示唆された.
著者
小渕 浩平 竹林 崇 花田 恵介 松井 克明 中村 裕一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.694-702, 2022-12-15 (Released:2022-12-15)
参考文献数
24

本邦では,急性期でのCI療法後の長期経過を観察した研究は見当たらない.今回,急性期にて1日2時間以内の修正CI療法を実施した複数の対象者について,介入から1年後までの長期間の追跡調査を行い,麻痺側上肢の回復経過を観察した.結果,FMA,MALともに,介入後・介入1年後と時点の固定効果で有意な差を認めた.またMALは,短期・長期ともにMCIDを超える変化を認めた.さらに,長期的なFMAの改善は,MALと強い関連があることが示された.本研究から,急性期においても適応患者によっては,修正CI療法が長期的にも上肢機能と麻痺手の使用行動に良好な変化を与える可能性が示唆された.
著者
小渕 浩平 竹林 崇 堀内 博志 村岡 尚 中村 裕一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.197-204, 2019-04-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
20

急性期脳卒中患者5名に対し,実生活での非麻痺手の抑制を行わず,補助的手段を併用した上肢集中練習を1日2時間,平均3週間実施した.本研究では,麻痺手の機能と生活における使用の改善での有用性と安全性を検討した結果,集中練習が麻痺側上肢機能と実生活における麻痺手の使用頻度および質を有意に改善させることを確認した.加えて,急性期における集中練習介入期間中に有害事象は認めなかった.これらの結果は,急性期における短時間の集中練習のプロトコルが,意味のある方法である可能性を示唆した.しかしながら,急性期の集中練習の効果を実証するためには,今後,対照群をおいたランダム化比較試験による検証を行わなければならない.
著者
小渕 浩平 竹林 崇 松井 克明 堀内 博志 中村 裕一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.222-229, 2019-04-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
18

中等度の上肢麻痺を呈した脳卒中患者に対し,急性期よりCI療法(量的練習,課題指向型練習,介入で獲得した機能を生活に転移するための戦略)と,電気刺激療法を併用した複合的な上肢集中練習を実施した.さらに,退院後,長期的効果を調査するため1年後の経過を追った.その結果,介入直後および介入から1年後に,麻痺側上肢機能と,実生活における麻痺手の使用の頻度および質の改善を認めた.したがって,我々はCI療法を急性期より実践することで,長期的にも好影響を及ぼす可能性を示唆した.ただし,今回の結果は一症例の経過に過ぎない.今後,多数の症例で同様の疑問を明らかにする必要がある.