著者
清水 謙二 小田 浩伸
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.1-6, 2001-03-31 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
1 1

本研究では、頻繁にパニックを起こす自閉症生徒に対し動作法を適用し、動作法の変化と学校および家庭場面でのパニックの変化とを対比させ、パニックの軽減に及ぼす動作法の効果について検討した。その結果、動作法によるリラクセーション課題の進展に伴って、家庭および学校場面でのパニックの頻度が顕著に減少してきた。これは、動作法において意図的に力を抜く努力ができるようになってきたこと、心身の十分なリラックス体験ができたこと、指導者との密接なかかわりが快い共有・共感体験となったことが、緊張や興奮に対する自己制御力を高める要因になったことによるものと考えられた。これらのことから、動作法は、緊張や興奮が常態となってパニックを頻発している事例に対する、自己制御力を高めるための有効な援助法になりうることが示唆された。
著者
笹川 えり子 小田 浩伸 藤田 継道
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.13-22, 2000-06-30

5泊6日の心理リハビリテーション(動作法)キャンプにおいて、母親との相互交渉が成立しにくいダウン症児2名と自閉症児2名に、動作法と母子遊びを行い、動作法場面における指導者との相互交渉の変化と、母子遊びにおける相互交渉の変化との関連を検討した。その結果、援助を能動的に受け入れてやりとりが継続できてきたり、主体的・意図的な動作のコントロールができるようになる等の動作法の進展と並行して、母子遊びにおいてもひとり遊びから連合・協調遊びへと変わってきたり、母親始発型の遊びから子ども始発型の遊びへと変化してきた。こうした動作法におけるやりとりの継続やからだへの積極的な働きかけの活動様式が、母子遊びにおけるやりとりの継続や子どもから他者への積極的な働きかけに反映されてきたものと推察される。動作法における相互交渉が母子相互交渉を促進させる有効な援助法になり得ることが示唆された。
著者
小田 浩伸 北川 忠彦 糸永 和文
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1-12, 1991-06-30

精神薄弱養護学校小学部児童48名を対象に、坐位及び立位における姿勢の実態分析を行った結果、全児童の97.9%になんらかの歪みや不適切なパターンを持つことが明らかになった。そして歪みや不適切なパターンは年長になっていくほど顕著になっていく傾向があり、また行動に問題がある児童の姿勢は、特に歪みや不適切なパターンが顕著であった。そこで、17名の児童に姿勢指導として動作訓練を週3回、1回あたり5〜10分間のマンツーマン指導で適用した結果、顕著な姿勢改善及び改善された姿勢の定着がみられた。これは姿勢指導としての動作訓練の取り組みが、自己の統制から離れたものになっていた姿勢緊張を随意制御下におくことができるようになり、身体各部相互の関係の自己制御獲得に役立ったものと考えられる。また姿勢の改善に伴い行動の変化もみられたが、姿勢の制御過程における自分の身体への能動的働きかけが、主体的態度(構え)を形成し、行動の制御をもたらしたのではないかと考えられる。
著者
小田 浩伸 藤田 継道 井上 雅彦
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.21-31, 1998-09-30

本研究では、音声表出言語が全くなく、かつ、音声理解言語が殆どない重度知的障害青年4名を対象に、2つのコミュニケーション機能(マンドvsタクト)と2つのコミュニケーションモード(受容vs表出)および2つのシンボル(写真vs身振り)から成る8課題について、獲得の早さと般化・維持の容易さが条件交替デザインによって比較された。その結果、4名全員が写真と身振りを用いたマンドの受容の2課題を除く6課題を獲得した。また、6課題の中では4名全員に共通して「写真によるタクトの受容」課題の獲得・般化・維持が最も容易であり、「身振りによるタクトの表出」課題の獲得・般化・維持が最も困難であった。シンボルが写真・身振りのいずれの場合でも、全対象児にとってマンドはタクトよりも表出モードでは獲得・般化・維持が容易であった。どちらのシンボルの場合でも、全対象児にとって、タクトでは受容モードの方が表出モードよりも獲得・般化・維持が容易であった。またシンボルは、全対象児にとって写真の方が身振りよりも獲得・般化・維持が容易であった。これらの結果から、音声理解言語も表出言語も乏しい重度知的障害児にとっては、実物と類縁性の高い写真や写像性の高い身振りをコミュニケーションの媒体とし、その産出が簡単なポインティングや身振りの獲得を目指した指導の有効性が示唆された。