著者
笹川 えり子 小田 浩伸 藤田 継道
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.13-22, 2000-06-30

5泊6日の心理リハビリテーション(動作法)キャンプにおいて、母親との相互交渉が成立しにくいダウン症児2名と自閉症児2名に、動作法と母子遊びを行い、動作法場面における指導者との相互交渉の変化と、母子遊びにおける相互交渉の変化との関連を検討した。その結果、援助を能動的に受け入れてやりとりが継続できてきたり、主体的・意図的な動作のコントロールができるようになる等の動作法の進展と並行して、母子遊びにおいてもひとり遊びから連合・協調遊びへと変わってきたり、母親始発型の遊びから子ども始発型の遊びへと変化してきた。こうした動作法におけるやりとりの継続やからだへの積極的な働きかけの活動様式が、母子遊びにおけるやりとりの継続や子どもから他者への積極的な働きかけに反映されてきたものと推察される。動作法における相互交渉が母子相互交渉を促進させる有効な援助法になり得ることが示唆された。
著者
岡村 章司 藤田 継道
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.152-164, 2021 (Released:2021-12-23)
参考文献数
24

本研究では,保護者と担任を対象に,場面緘黙と不登校を呈した自閉スペクトラム症児に対する協働型行動コンサルテーション(Conjoint behavioral consultation : 以下,CBC)を実施した。コンサルタントは直接支援を行わず,保護者と学級担任が家庭・学校場面において,自閉スペクトラム症の特性に応じた,不登校と緘黙症状に対する支援を行った。その結果,対象児は毎日登校し,学校での活動への参加行動の増加およびコミュニケーション手段や内容の拡大がみられた。保護者と学級担任は支援を受け入れやすいと評価し,両者のコミュニケーションの増加が確認された。保護者と教師の協働を促すCBCは,学校現場で用いられるモデルになりえると考えられる。しかしながら,学校での対象児の発話はみられず,支援の効果に関する項目で学級担任の評価は低く,母親も他の項目に比べて一部低かった。対象児の変化をもたらした要因および今後の支援,CBCの効果的な条件について考察した。
著者
井上 雅彦 小川 倫央 藤田 継道
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.11-21, 1999
被引用文献数
1

本研究は、自閉症児において、写真刺激を用いた「何」「誰」「どこ」の疑問詞音声質問に対する適切な応答言語行動の訓練について視覚プロンプトの有効性を検討した。また、未訓練の写真刺激、実際場面(自己行為、他者行為)、文章刺激、音声刺激の各情報刺激への般化、質問刺激の語順変化の影響についての検討がなされた。結果、4名中3名は正答を音声でフィードバックしただけでは適切な応答言語行動の獲得が困難であり、獲得段階での視覚プロンプトを必要とした。また、すべての自閉症児が、写真刺激に対する疑問詞質問に対して適切な応答行動を獲得し、未訓練の写真刺激、実際場面(自己行為、他者行為)、文章刺激、音声刺激の各情報刺激に般化することが示された。自閉症児の言語指導における視覚プロンプトの有効性、訓練への効果的な応用性について考察された。
著者
小田 浩伸 藤田 継道 井上 雅彦
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.21-31, 1998-09-30

本研究では、音声表出言語が全くなく、かつ、音声理解言語が殆どない重度知的障害青年4名を対象に、2つのコミュニケーション機能(マンドvsタクト)と2つのコミュニケーションモード(受容vs表出)および2つのシンボル(写真vs身振り)から成る8課題について、獲得の早さと般化・維持の容易さが条件交替デザインによって比較された。その結果、4名全員が写真と身振りを用いたマンドの受容の2課題を除く6課題を獲得した。また、6課題の中では4名全員に共通して「写真によるタクトの受容」課題の獲得・般化・維持が最も容易であり、「身振りによるタクトの表出」課題の獲得・般化・維持が最も困難であった。シンボルが写真・身振りのいずれの場合でも、全対象児にとってマンドはタクトよりも表出モードでは獲得・般化・維持が容易であった。どちらのシンボルの場合でも、全対象児にとって、タクトでは受容モードの方が表出モードよりも獲得・般化・維持が容易であった。またシンボルは、全対象児にとって写真の方が身振りよりも獲得・般化・維持が容易であった。これらの結果から、音声理解言語も表出言語も乏しい重度知的障害児にとっては、実物と類縁性の高い写真や写像性の高い身振りをコミュニケーションの媒体とし、その産出が簡単なポインティングや身振りの獲得を目指した指導の有効性が示唆された。