著者
小田切 歩
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.1-16, 2013 (Released:2013-09-18)
参考文献数
13
被引用文献数
2 3

本研究では, 授業場面における集団での多様な考えの統合過程(協同的統合過程)を通じて, 個人が多様な知識をどのように関連づけていくのかという個人の知識統合のメカニズムを検討した。その中でも, 教科内容の知識と日常的な知識の関連づけに着目し, 高校生が理解に困難を抱えている三角関数と回転運動との関連づけに関する問題解決過程を, 事前課題—授業(協同的統合過程の有無)—事後課題のデザインで検討した。分析の結果, 多様な解決方略が可能な課題を設定し, 教師の支援のもとで生徒がそれらの方略の構造化を集団的に行うような協同的統合過程において, 個人が発言あるいはワークシート上で日常的な知識と教科内容の知識を用いて方略間の関連に関する説明を構築することで, 円という共通点による, 回転運動という日常的な知識と単位円という具体的な教科内容の知識との関連づけをもとに, 高さの変化を表すものとして, 回転運動と三角関数という抽象的な教科内容の知識が関連づけられ, さらに半径や高さの基準という, より具体的な教科内容の知識が関連づけられていくというプロセスで知識が構造化されていき, 事後課題において知識統合が促進されることが示された。