著者
岩野 君夫 三上 重明 福田 清治 椎木 敏 島田 豊明
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.7, pp.490-494, 1986-07-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
32
被引用文献数
19 20

焼酎白麹の各種酵素の諸性質が清酒麹および泡盛麹と較べてどのような差異があるか調べたところ次の結果を得た。1. 焼酎白麹および泡盛麹のα-amylaseは焼酎醪のpH範囲であるpH3~4において相対活性が80%以上と高く, かつpH安定性もこのpH範囲において残存活性が90%以上と高いことが認められた。2. α-Amylaseの熱安定性は焼酎白麹が60℃, 泡盛麹が50QC, 清酒麹が40QCで, 最適反応温度は焼酎白麹が70℃, 泡盛麹が60℃, 清酒麹が50℃ で, 焼酎白麹のα-amylaseの耐熱性が最も高かった。3. 3種類の麹のglucoamylaseは焼酎醪のpH範囲3~4においては相対活性やpH安定性がほぼ同一で高い値を示した。4. Glucoamylaseの熱安定性は焼酌白麹は60℃, 泡盛麹と清酒麹が50℃ であり, 最適反応温度は焼酎白麹が70℃, 泡盛麹と清酒麹は60℃で, 焼酎白麹のGlucoamylaseの耐熱性が高いことが知られた。5. 蛋白分解酵素のacidprotease, acidcarboxypeptidaseは3種類は麹ともほとんど同一の諸性質を示した。6. 3種類の麹の諸酵素の最適反応pH, pH安定性および熱安定性の結果から, 実験方法に示した各種酵素活性の測定条件で, 3種類の麹の酵素活性が測定できることが裏づけられた。最後に臨み, 本研究の遂行に当り御指導を腸わりました当試験所中村欽一所長に深謝致します。
著者
岩野 君夫 伊藤 俊彦 中沢 伸重
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.7, pp.526-533, 2004-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
9
被引用文献数
4 8

1, 吟醸酒, 純米酒, 本醸造酒及び普通酒のアミノ酸組成を調べ平均値の差の検定を行った結果, 製造区分間に全アミノ酸含有量と組成に大きな違いが認められ, 醸造法の違いが製成酒のアミノ酸組成に影響することを知った。2, アミノ酸を甘味,酸味,苦味,その他の4区分にグルーピングし, 各種清酒間の有意差を調べた結果, 吟醸酒は他に比べて甘味アミノ酸, 酸味アミノ酸の割合が高く苦味アミノ酸が少ないなど, 製造区分によって構成比が異なることが明らかとなった。3, アミノ酸を変数とする変数選択型判別分析を行った結果, グルタミン, プロリン, リジン, グルタミン酸, アラニン, ヒスチジンの6個のアミノ酸を変数として吟醸酒, 純米酒, 本醸造酒及び普通酒を高精度で判別できる判別関数を得た。
著者
森 孝夫 渡辺 泰三 土佐 哲也 千畑 一郎 岩野 君夫 布川 弥太郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.111-114, 1981-02-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
9
被引用文献数
3 4

タンニンをリガンドとする吸着体, すなわち, 固定化タンニンについてその重金属イオンに対する吸着特性および醸造用水の除鉄を検討し, 次のことを明らかにした。固定化タンニンは鉄イオン, 銅イオン, 鉛イオンなどをよく吸着した。鉄イオンについては, 第一鉄イオン, 第二鉄イオン, キレートした鉄イオン, 有機酸存在下の鉄イオンはよく吸着したが, フェリクリシンは余り吸着しなかった。固定化タンニンの鉄イオン吸着容量は用いた鉄イオンの種類, 濃度, pHによって変化した。固定化タンニンに吸着した鉄イオンは0.5N塩酸によって溶出され, 再生された固定化タンニンは安定に反復使用できた。鉄イオンを10~40ppb含む某酒造場の用水の場合, 固定化タンニン・カラムの容積の8,500倍量の用水を流しても流出液中の鉄イオンは10ppb以下にとどまった。
著者
伊藤 俊彦 高橋 仁 志賀 拓也 佐藤 勉 中沢 伸重 岩野 君夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.6, pp.453-460, 2013 (Released:2018-01-12)
参考文献数
13
被引用文献数
4 2

清酒麹に残存するアミノ酸について,品種の異なる麹米5点と麹菌17株を用いて清酒麹85個をシャーレ法で製麹し,レベル変動に関与する要因について検討したところ以下の知見を得た。1.麹の残存アミノ酸はグルタミンとアルギニンが多く,次いでリジン,グルタミン酸,ロイシン,チロシン,アラニンの順であった。2.麹米タンパク質が酵素分解されて生成する全アミノ酸の約80%は麹菌の増殖に利用され,約20%が麹の残存アミノ酸となることが推定された。3.麹の残存アミノ酸量の多い麹はタンパク質分解酵素活性が高かった。4.麹の残存アミノ酸量は麹米品種と麹菌株に共に影響された。5.麹菌株の選択により麹の残存アミノ酸量を約半分に低減できる可能性がある。
著者
伊藤 俊彦 小松 幸恵 高堂 斐 高橋 仁 田母神 繁 小泉 武夫 中沢 伸重 岩野 君夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.7, pp.562-569, 2008-07-15
参考文献数
10
被引用文献数
5 4

鑑評会の審査成績と相関の高い未知成分を単離・精製し, これらの未知成分がチロソール, β-フェニルエタノール, トリプトフォールで有ることを明らかにした。更に, 吟醸酒中に存在する濃度での呈味性を合成清酒を用いて三点識別嗜好試験を行い調べた結果, チロソールは苦味, 渋味, 雑味を, β-フェニルエタノールは渋味, 雑味を, トリプトフォールは酸味, 苦味, 渋味を呈する事を知った。
著者
太田 剛雄 高下 秀春 轟木 康市 岩野 君夫 大場 俊輝
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.87, no.12, pp.922-926, 1992-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
19
被引用文献数
12 11

1. 清酒中の抗酸化活性を調べたところ, 清酒中には原料米中よりも強い抗酸化活性が存在した。2. 清酒中の抗酸化活性はAmberlite XAD-2に吸着され, 50%メタノールにより溶出した。3. 50%メタノールによって溶出される活性区分は分子量の異なるA, B, C, Dの4つのフラクションからなり, C, Dフラクションの主成分はそれぞれフェルラ酸およびチロゾールであった。4.分子量の大きいAフラクションは0.5N NaOHまたはジアスターゼ原末による加水分解でフェルラ酸を遊離し, フェルラ酸の配糖体エステルと推察された。本研究の一部は日本酒造組合中央会との共同研究として実施した。
著者
高橋 仁 柴田 智 田口 隆信 岩野 君夫 小林 忠彦
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.447-455, 2010-11-15 (Released:2011-01-06)
参考文献数
30
被引用文献数
2 1

We developed “Akita-sake-komachi”, which is the rice cultivar suitable for brewing. The refined sake produced from “Akita-sake-komachi” is characterized by the taste of refined sweetness and a light finish. We tried to make “Akita-sake-komachi” local branding. In order to make “Akita-sake-komachi” of high quality, we developed a cultivation method, which enabled us to get grains with low protein content, low expression of white-berry and less crack. Since the protein of “Akita-sake-komachi” had little glutelin, it was recognized that the peptidase activity of koji (malted rice) was stronger, but that there was little amino acid generation from the steamed rice. To develop a new type of sake of “junmai-shu” using the property of “Akita-sake-komachi”, the Aspergillus oryzae “Gin-aji” was selected. The peptidase activity of the koji used by “Gin-aji” was less with “Akita-sake-komachi”. And the yeast “Akita-kobo No. 12 and No. 15” were selected for producing the “Junmai-shu” which fit to “Akita-sake-komachi” and the Aspergillus oryzae “Gin-aji”, and we commercialized “Akita-sake-komachi” brand “junmai-shu”. Accodring to the result, the product amount of the rice “Akita-sake-komachi” increased to about 2 times (2009/2005), and the shipment amount of the “Akita-sake-komachi” brand sake increased to (2009/2005) more than 3 times.
著者
岩野 君夫 三上 重明
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.83, no.12, pp.791-796, 1988-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
35
被引用文献数
4 5

麹造りにおいては, 清酒では黄麹菌が, 焼酎では白麹菌が, また泡盛では黒麹菌が使用されるが, 各麹菌は酵素力価やpH安定性など, それぞれ異なった特徴を有している。本稿では, 本格焼酎の製麹に用いられる「白麹菌」にスポットをあて, あらゆる角度から他の麹菌と比較検討した結果について解説していただいた。各麹菌の持つ特徴が, 詳細なデータで示されており興味深い。
著者
小関 卓也 岩野 君夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.7, pp.510-517, 1998-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
29
被引用文献数
2 6

焼酎製造には様々な原料が使用されており, その原料の違いによる個性が備わっていると考えられる。しかしながら, 芋焼酎でその特徴香が甘藷から由来するモノテルペンアルコール類であることが明らかにされていることなど以外に, 原料由来の香味についての詳細な研究は多くはない。本解説では焼酎, 特に泡盛中のバニリンの由来を探求し, バニリンが植物細胞壁のリグニンから麹菌の酵素, 蒸留中の化学反応, さらには貯蔵中の化学反応を経て生成されることを明らかにし, さらには関与する酵素の遺伝子レベルでの研究も含めて, 一連の研究成果について紹介していただいた。このような研究の積み重ねにより, 焼酎をはじめとする酒類の香味に対する原料の意義や, 貯蔵も含めた製造工程の意義が明らかにされ, 酒類の多様化にも寄与していくことが期待される。
著者
岩野 君夫 三上 重明 福田 清治 椎木 敏 島田 豊明 小幡 孝之 木崎 康造 新里 修一 荒巻 功 佐伯 宏
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.7, pp.495-498, 1986-07-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
9

南九州の焼酎製造場で実際に使用されている白麹を集め, 各種酵素活性の調査を行ったところ以下の知見を得た。1. 焼酎白麹の各種酵素バランスを清酒麹と較べてみると, α-amylaseが極端に低く, glucoamylaseとacid carb0xypeptidaseはほぼ同程度, acidprotease, transglucosidaseが極めて高くかつ生でん粉分解力を有するのが特徴である。焼酎白麹と泡盛麹の酵素活性を較べてみると, 活性のバランスはほぼ同様であるが, 泡盛麹は全体的にやや活性が低い。2. 焼酎白麹は調べた6種類の酵素活性とも変動率が17~40%と大きく, 最大値と最小値を較べると約2.7倍の大きな差があつた。3. 米麹と麦麹を較べると, 麦麹は6種類の酵素活性のすべてが低く, 特にα-amylase, transgnucosidase, acid proteaseに大きな違いが認められた。終りに臨み, 本実験に御協力をいただいた当研究室, 甲斐文男君, 未広康夫君に, 御指導を賜わりました当試験所中村欽一所長に深謝致します。
著者
岩野 君夫 三上 重明 福田 清治 能勢 晶 椎木 敏
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.200-204, 1987
被引用文献数
6

焼酎白麹の各種酵素生産に及ぼす製麹条件の影響について検討し次の結果を得た。<BR>1.白麹菌は40℃においてAAase, GAase, TGaseおよびRSDの生産が大であり, 酸の生産は30℃, 35℃で大であった。APaseとACPaseの生産は製麹温度の影響が少なかった。<BR>2.白麹菌は精米歩合が90%以上の白米で酵素生産が大であり, 精米歩合が85%以下になると急激に酵素生産が低下する。特にAAase, GAase, ACPaseおよびTGaseでこの傾向が大であった。<BR>3.白麹菌の酵素生産に及ぼす吸水率の影響は製麹原料が破砕精米とコーン・グリッツでは少なく, 麦類では大きく, 吸水率が40-50%と高いほど酵素生産が大であり, 酸の生産も大きかった。<BR>4.白麹菌の酵素生産は菌体量と極めて高い正の相関関係が認められた。<BR>5.米焼酎仕込みにおける麹歩合を酵素活性の面から検討し, 白米1g当りAAaseが約20単位, GAaseが約33単位ほどが必要酵素量でないかと推論した。<BR>最後に臨み, 本研究の遂行に当り御指導を賜わりました当試験所中村欽一所長に深謝致します。