著者
上野 卓郎 早川 武彦 高津 勝 内海 和雄 尾崎 正蜂 岡本 純也 藤田 和也
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

3年間の研究成果の概要を示せば、以下のようになる。第1に、1990年を前後して、情報化社会の成熟と共に多国籍化した「メディア・スポーツ・生産複合体」(media-sport production complex)が「国際スポーツ機構」と提携し、スポーツのメディアイベント化・メディアソフト化を大規模で進め、トランスナショナルな体験の機会を地球的な規模で提供するようになった。その過程で、スポーツは世界共通の言語であるとともに、夢や感動を生み出す「グローバルドリーム」として受け入れられていった。第2に、その影響力は、国民国家やインターナショナルな境界を超え、個人や社会集団に直接・間接に影響を及ぼすようになった。第3に、そのような「スポーツのグローバリゼーション」とローカルなスポーツ文化の関係は、一方向ではなく、双方向的であり、互いに孤立したものではなく、相互に影響し合っていることが明らかになった。第4に、ただしヘゲモニーは「生産複合体」と「国際スポーツ機構」の側にあり、その影響力の浸透によって、スポーツの商品化と公共性の矛盾は複合化・顕在化し、ローカルなスポーツ文化主体の衰弱という事態も起こっている。第5に、そこには葛藤や主体的な営みも存在する。従って、「スポーツのグローバリゼーションとローカリゼーション」研究は、文化の伝播や変容、一方向的な変化の過程としてだけでなく、生活世界の変容・再構成を視野に入れて考察する必要がある。最後に、「研究成果報告書」の構成を示しておく。(1)グローバリゼーション・文化・スポーツ、(2)グローバリゼーションとメディア・スポーツ、(3)スポーツインターナショナリズム、(4)グローバリゼーションとローカリティ、(5)グローバリゼーションと政策・運動。