著者
日下部 恵梨菜 村上 朱里 西山 加那子 山下 美智子 福島 万奈 亀井 義明
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.81, no.11, pp.2186-2191, 2020 (Released:2021-05-31)
参考文献数
18

症例は70歳,女性.2型糖尿病に対し,2年前からインスリン治療中であった.数日前より左乳房腫瘤を自覚し前医を受診.針生検にて浸潤性乳管癌と診断され,加療目的に当院を受診した.左乳頭外側に2cmの腫瘤を触知,MMGで乳頭直下から外側にFADを認めた.超音波検査では約2cmの境界不明瞭な低エコー域を認めた.左乳癌cT2N0M0 Stage II Aと診断し,左乳房全切除術+センチネルリンパ節生検を施行した.割面のマクロ像では,術前画像と一致して乳頭直下から外側かつ胸壁側まで広がる約2.5cmの病変を認めたが,組織学的には乳頭直下の約1cm程度の部分のみに癌が存在し,その胸壁側の領域は糖尿病性乳腺症で悪性所見は認めなかった.病理学的ステージはpT1bN0M0 Stage Iであった.今回われわれは,近接する糖尿病性乳腺症のために広がり診断に苦慮した乳癌の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
著者
勝田 優 小阪 直史 村田 龍宣 舩越 真理 井上 敬之 山下 美智子 杉田 直哉 勝井 靖 澤田 真嗣 大野 聖子 清水 恒広 藤田 直久
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.354-361, 2015 (Released:2015-12-05)
参考文献数
22
被引用文献数
2

病棟での輸液調製では,調製時の汚染防止により注意を払う必要がある.病棟での輸液調製の現状把握のため,空気清浄度,調製環境,輸液メニューについて血液内科と外科病棟を対象に多施設間調査を実施した.空気清浄度調査は,5施設9部署にて実施し,パーティクルカウンターとエアーサンプラーを用いて浮遊粒子数と浮遊菌の同定・コロニー数を測定した.環境と輸液メニューの調査は,9施設13部署を対象に,調製現場の確認と10日間の注射処方箋(7,201処方)を集計した.空気清浄度は,0.5 μm以上の粒子数が,最も多い部署で3,091×103,少ない部署で393×103個/m3であった.浮遊菌は,黄色ブドウ球菌は3部署のみの検出であったが,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌,Micrococcus属,Corynebacterium属やBacillus属は全部署より検出された.調製台は,9部署で空調吹き出し口の直下にあり,10部署でスタッフの動線上に設置されていた.混合のあった4,903処方のうち,3時間以上の点滴が31%を占めた.病棟での輸液調製マニュアルを整備していたのは,9施設中3施設のみであった.調査から,輸液調製台エリアの空気清浄度は低く,3時間を超える点滴が3割以上を占めるなど,細菌汚染が生じるリスクが高い可能性が示唆された.輸液汚染リスク軽減のため,日本版の病棟での輸液調製ガイドラインの策定が望まれる.