著者
高村 学人 山下 詠子
出版者
中日本入会林野研究会
雑誌
入会林野研究 (ISSN:2186036X)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.2-15, 2021 (Released:2021-04-05)

表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化法は、字名義地や所有権登記なき記名共有地等の変則型登記の解消を目指すものであり、入会林野の土地に甚大な影響を与える。本稿前半では、このインパクト推計のため3つの集計を行った。1)昭和49年全国入会慣行調査の集計から2割程度の入会地で所有権登記がないこと、2)2000年の世界農林業センサスの慣行共有事業体調査から字名義地が多く含まれるムラ・旧市区町村名義が入会林野の所有名義として最も割合が高く、全県に存在すること、3)全国の地方法務局で既に探索が開始された表題部所有者不明土地の公示情報から山林・原野等の地目の割合が25.8%を占めることがわかった。1966年に制定された入会林野近代化法は、変則型登記の解消も目的としていたが、期待された効果を発揮できず、その整備実績は低迷が続いているため、今後、表題部所有者不明土地適正化法の実施を通じて入会地の所有名義の変則解消が進む恐れがある。そのため、本稿後半では、地方法務局で表題部所有者不明土地適正化法を実施する主任登記官が入会権に関連しうる土地の探索調査や更正登記をどのような認識のもとで行っているのか、の全国アンケート調査の案を各県庁の入会林野近代化法担当者への調査、各市町村の認可地縁団体担当者への調査の案と併せて提示した。
著者
土屋 智樹 関岡 東生 山下 詠子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p> 東京都における木炭産業の歴史について同業組合政策との関連で整理を行い、商人貸付により生産を行う,またはこれに類似する前期的な生産体系が主体であった近代日本における木炭生産の変化の要因を、流通組織の機能および発展段階から考察を試みた。 わが国における重要物産同業組合を核とする産業振興政策は1884年公布の「同業組合準則」、1897年公布の「重要輸出品同業組合法」、1900年公布の「重要物産同業組合法」等を根拠法として展開した。木炭については、「重要物産同業組合法」に準拠する同業組合によって過当競争の防止や製品検査による品質の向上が取り組まれた。 東京都における木炭の同業組合は1909年に設立されはじめ、1931年までに計6組合が設立された。しかし、1930年以降は農村恐慌を背景とする産業組合の拡充や1932年の「商業組合法」の公布により、同業組合以外の木炭関連の流通組織が推進された。そして1943年には「商工組合法」により燃料配給統制組合が東京都を含む主要消費都道府県に設立された。この組合は、第二次世界大戦後も統制経済の下で燃料林産組合として木炭の配給調整機関として機能したこと等が明らかになった。</p>