著者
山口 直文
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.2, pp.121-136, 2019-02-15 (Released:2019-06-07)
参考文献数
97
被引用文献数
1

この総説では,これまで行われてきた水路実験を用いた津波堆積物の研究の現状と今後の可能性を,フィールドでの津波堆積物研究において課題とされている点と照らし合わせながらまとめた.水路実験は,水理条件や堆積物,地形の条件などを設定して調べることができることから,低頻度で直接観測が難しい津波堆積物形成の理解に有効であると考えられている.これまでの水路実験による研究では,津波堆積物の空間分布などの特徴から津波規模や水理条件を推定する土砂輸送モデルの高精度化に向けた研究などにおいては一定の貢献が認められる一方で,地質学的な視点による津波堆積物の調査や観察に貢献できるような成果はまだ多いとは言えない.こうした中,最近行われている,陸上地形に注目した水路実験や,認識可能な堆積構造を形成できる大型水路実験は,津波堆積物の正確な識別,解釈に様々な示唆を与えるものとなっており,さらなる研究の進展が期待される.
著者
山口 直文
出版者
日本堆積学会
雑誌
堆積学研究 (ISSN:1342310X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.29-38, 2018-12-20 (Released:2019-03-27)
参考文献数
36
著者
山口 直文 滝 俊文 関口 智寛
出版者
日本堆積学会
雑誌
堆積学研究 (ISSN:1342310X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1-2, pp.3-9, 2022-02-28 (Released:2023-01-20)
参考文献数
16

ウェーブリップルの形状への堆積物供給の影響を調べるための造波水路実験を行った.実験では,水理条件がほぼ同一で,上方より降らせる堆積物供給の速度のみを3段階に変化させることでその影響を調べた.堆積物供給速度が比較的小さい実験では,ウェーブリップルの形状は維持されたまま積み重なっていた.堆積物供給速度が大きくなるにつれてウェーブリップルは平坦化され,その領域は広くなった.今回の実験の水理条件および堆積物の条件(水深:0.3 m,波の周期:1.0 s,波の平均波高:76-78 mm,堆積物粒径:0.20 mm)の下では,砂床上昇速度が32 mm/min以上の実験でウェーブリップルの平坦化が観察された.今回の実験は,ウェーブリップル形状は堆積物供給の影響を受けないというこれまでのウェーブリップル葉理形成モデルにおける仮定が,堆積物供給速度が大きい場合には必ずしも成り立たないことを示唆している.
著者
山口 直文
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

粒度・波浪条件・リップルの大きさで決まる堆積物粒子の沈降ポテンシャルが,リップルの移動とそれに伴うベッドロード輸送に与える影響を調べた.これまでの現世海浜での観測結果から,リップル移動速度から求められる堆積物輸送量が,既存の掃流砂輸送モデルから推算される輸送量よりも大きい場合と小さい場合があることが明らかになっている.しかし,その原因は明らかになっていない.本研究の造波水槽実験の結果から,これらのリップル移動速度とモデルとの違いが,リップル近傍での堆積物粒子の沈降ポテンシャルにより整理することができることが明らかになった:粗粒砂海浜のような堆積物粒子が沈降しやすい条件の場合,岸側への部分的な沈降がリップル近傍で起こることで,モデルの推算より岸向きへの堆積物輸送量が大きくなる.―方で,細粒砂海浜のような堆積物粒子が沈降しにくい条件の揚合,"phase lag"と呼ばれる流れと堆積物移動のずれの影響によって,モデルの推算より堆積物輸送量が小さくなる.これらの結果は,粒径や周期が主に支配する堆積物沈降ポテンシャルが,振動流下での堆積物輸送において無視できないことを示しており,その影響の仕方を定量的に評価できるパラメータを提案することができた.造波水槽実験に加え,現世海浜の堆積構造の特徴と,海底に形成されたウェーブリップルの特性を調べるために,新潟県上越市の大潟海岸において調査を行った.この調査では,水深約5mから20mの計12地点で,リップルのサイズの計測と,リップルの頂部・谷部における堆積物サンプルの採取を行った.各リップル表面の堆積物粒度は,頂部と谷部で異なる傾向を示した.頂部に比べて谷部は淘汰が悪く,堆積物の平均粒径が05φより粗い場合には,頂部より谷部が粗い傾向を示すが,0.5ψより細かい場合は逆に頂部のほうが粗いという特徴がみられた.