著者
山名 裕子
出版者
日本教育心理学協会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.446-455, 2002
被引用文献数
2

本研究での目的は,均等配分が幼児期に成立するのか,またするならば,どのような発達的な変化があるのか検討することであった。12個のチップを数枚の皿に配分させていく個別実験には,3歳から6歳までの幼児288名が参加した。主な結果は以下のようなものであった。(1)年齢の上昇に伴い正答率は上昇し,選択される配分方略が変化した。(2)どの年齢においても,チップを何回にも渡って皿に配分する数巡方略が選択されていたが,その方略を正答が導くように選択できる人数は,年齢の上昇に伴い増加した。この方略は従来指摘されていた方略であったが,(3)1個あるいは複数個のチップをそれぞれの皿に一巡で配分する一巡方略と,配分されない皿が残っている空皿方略が本研究で明らかになった。(4)また一巡方略の中でも特に配分前に皿1枚当たりのチップの数を把握する「単位」方略が明らかになった。この単位方略は数巡方略ほど,年齢の上昇との関係が明確ではなかった。
著者
山名 裕子
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.135-144, 2005-08-10

本研究での目的は, 均等配分方略の選択が皿1枚あたりのチップの数によって変化するかどうかを検討することである。配分するチップが4個から20個, 配分先の皿の枚数が2, 3, 4枚の組み合わせによって9課題が設定され, 就学前の幼児160名がチップをお皿に分けるという配分課題に参加した。その結果, 配分するチップの数が少ない課題では, 3歳の幼児でも8割が正しく配分ができること, また3, 4歳では配分するチップの個数が多くなるほど正答者数が少なくなるが, 6歳ではどのような課題でも8割の幼児が正しく配分できるようになることが示された。選択された方略の分析から, 高度なユニット(unit)方略が5, 6歳で多く選択されるような課題があることも示された。このユニット方略とは, 配分する前に, 皿1枚あたりの数を何らかのレベルで把握し, 一巡(1回通り)でチップを配分する皿に分けていく方略と定義される(山名, 2002)。ユニット方略のように皿1枚あたりのチップを配分前に把握できていなくても, 一巡目に配分していくチップの数がバラバラではなく, 1個, あるいは2個以上のまとまりを形成しながら配分していくことが示唆された。このような皿1枚あたりの数を検討づけるような, 見積もりという点がわり算につながるようなインフォーマル算数の知識の視点として, 重要なことが示唆された。