著者
アハメド モハメド 木村 和弘 ソリマン モハメド 山地 大介 岡松(小倉) 優子 マコンド ケネディ 稲波 修 斉藤 昌之
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.125-131, 2007-02-25

脂肪細胞から分泌されるレプチンは摂食調節やエネルギー消費を調節するだけでなく,直接あるいは腫瘍壊死因子(TNF-α)を介して間接的にヒト好中球機能を修飾する.ウシ好中球はfMLP受容体を持たないなどヒト好中球とは異なる特徴を持つ.そこで本研究ではホルスタイン牛好中球の脱顆粒応答および活性酸素産生能に村するレプチンとTNF-αの作用を調べた.なおウシ好中球には活性型レプチン受容体Ob-RbとTNF-α受容体(TNF-R1)の発現が確認された.ヒトレプチン,ヒトTNF-α,活性型ホルボールエステル(PMA)とオプソニン化したザイモザン(OZP)は脱顆粒を惹起しなかった.一方,アナフィラトキシンを含むザイモザン活性化血清は(ZAS)は脱顆粒を誘導した.しかし,レプチンやTNF-αはZASによる脱顆粒反応にも影響しなかった.レプチンを除く,TNF-α, PMA, OZPとZASは活性酸素の産生を異なる強度で誘導した.さらにTNF-αはOZPとZASによる活性酸素産生能を増強し,この活性増大作用の一部分はNADPHオキシダーゼの細胞質コンポーネントであるp47^<phox>の膜移行の増加で説明された.レプチンはいずれの刺激に対しても影響を示さなかった.これらの結果よりヒト好中球とは異なりレプチンはウシ好中球の脱顆粒応答および活性酸素産生能に村して直接的な作用を示さないことが明らかとなった.
著者
アハメド モハメド シャバン ゼイン 山地 大介 岡松(小倉) 優子 ソリマン モハメド アブエルダイム マブルク 石岡 克己 マコンド ケネディ 斉藤 昌之 木村 和弘
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.509-514, 2007-05-25
被引用文献数
11

脂肪細胞分泌因子,レプチンは摂食やエネルギー消費のみならず,免疫細胞機能を修飾することが知られる.ウシ単核球(PBMC)をレプチン単独あるいはT細胞マイトージェンCon Aと同時に刺激すると,レプチンはPBMCの増殖を10-40%増大させた.一方,PBMCからTリンパ球を分離し,同様に刺激すると,レプチンはTリンパ球の増殖を抑制したので,レプチンはPBMCに含まれる単球マクロファージなどに作用してTリンパ球増殖因子を産生させる可能性を示した.次に単球マクロファージを分離してサイトカイン遺伝子の発現を調べたところ,多寡はあるものの腫瘍壊死因子TNF-α,インターロイキン(IL)-1β,IL-12p35,IL-12p40,IL-18遺伝子の恒常的な発現が見られた.レプチンを作用させるとTNF-αとIL-12p40mRNAの発現が増大したが,他の遺伝子の発現は変化しなかった.TNF-αの分泌量を調べると,実際に培養液中の濃度が増加した.また培養液中のIL-1β濃度が増大した.そこで伏在性のpro-IL-1βやpro-IL-18を活性型に分解させるタンパク分解酵素caspase-1の発現について調べたところ,レプチンによってその遺伝子の発現が増大した.これらの結果より,レプチンは単球マクロファージに作用しIL-12p35/p40の複合体形成や活性型IL-1β/IL-18を分泌させTリンパ球の増殖を促進すると考えられた.