- 著者
-
村藤 大樹
木村 和弘
- 出版者
- 一般社団法人 日本農村医学会
- 雑誌
- 日本農村医学会学術総会抄録集 第58回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
- 巻号頁・発行日
- pp.178, 2009 (Released:2010-03-19)
アトピー性皮膚炎の治療は,一時期ステロイドバッシン
グや民間療法の喧伝などにより混乱をきたしていたが,
2000年に日本皮膚科学会によるアトピー性皮膚炎診療ガイ
ドラインが作成されてからは徐々に治療の統一がなされ,
ステロイド外用剤の適正使用と保湿剤によるスキンケアの
重要性が強調されている。しかし,スキンケアの重要性に
対する認識は個々の医師によって差があり,その方法もま
ちまちなのが実状である。
我々は2003年に小児科の専門外来として「アトピー外
来」を開設し,2009年4月現在の患者総数は1,135人であ
る。そのうち重症と判断した319人(うち小児193人)を対
象に,ウェットラッピング法を用いて治療を行った。
ウェットラッピング法とは,保湿剤(炎症の強い個所には
ステロイド外用剤を併用)を塗布した後に水で濡らした下
着やクッキングペーパーで体を覆い,さらにその上から調
理用ラップで被覆して2~3時間過ごすという手技で,通
常のスキンケアで対応困難な重度の乾燥肌に対し,初期治
療として行うものである。
治療の標準化を図るために,クリニカルパスを用いて4
日間の入院治療を行った。入院中に計6~8回のウェット
ラッピングを行い,退院後も含めて計10回行った後通常の
外用療法のみへ移行した。患者は早ければ治療2日目の朝
には皮膚状態の改善を実感し,退院時にはほぼ全例で乾燥
肌の明らかな改善がみられた。短期間に皮膚の状態が劇的
に改善することで退院後の外用療法に対する治療コンプラ
イアンスが向上し,ひいては治療期間の短縮とステロイド
外用剤使用総量の減量を達成することが可能となった。
アトピー性皮膚炎治療ガイドラインに準拠した外用療法
にウェットラッピング法を併用することは,重症アトピー
性皮膚炎の高度な乾燥肌に対する初期治療として非常に有
用であると考えられた。