著者
進藤 博俊 山岸 利暢 長岡 毅 坪井 謙 松本 建志 守谷 俊
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.271-273, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
12

症例は67歳男性。腰痛のために鍼灸院で治療を受けた。治療後3時間半後から呼吸困難感が出現した。徐々に増悪し, 当院に救急搬送された。来院時は著明な頻呼吸と酸素化低下, 両側呼吸音減弱を呈していた。肺エコーで両側性気胸を疑い, 胸部X線で両側性気胸と診断した。両側に静脈留置針で緊急脱気し, 続けて胸腔ドレーンを留置し入院した。経過は良好で第5病日に退院となった。鍼灸治療の合併症としての両側性気胸は稀である。鍼の安全刺入深度は前胸部8〜26mm, 背部20mm前後と報告されている。本症例では, CTで両側気胸を起こし得る基礎疾患を認めなかったこと, 鍼治療に40mmの鍼を使用していたこと, 鍼治療後から症状が出現したことなどから鍼治療に伴い両側性気胸を発症したと考えられた。診断には身体所見や, ベッドサイドでの画像診断が肝要である。肺エコーは有用なツールであり迅速な早期診断, 治療介入において有用である。