著者
二宮 洸三 古賀 晴成 山岸 米二郎 巽 保夫
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.273-295, 1984
被引用文献数
24

1982年7月23日九州西北部(長崎市近傍)で豪雨(~400mm/1日)が発生した。この豪雨の予報実験を13層42km格子プリミティブ&bull;モデルによって行なった。<br>九州北西部に集中した降水,その近傍における小低気圧と循環系の形成は24時間予報でかなり正確にシミュレートされた。しかし実況に比較すると予報雨量(~70mm/6時間)も低気圧の深まりも不充分である。特に22日12時(GMT)を初期値とする予報実験ではspin upに時間がかかり,はじめの12時間の降雨,低気圧発達が不充分であった。これらの問題は残るが,微格子モデルによる豪雨予報の可能性が示されたものと考える。非断熱過程の効果を確かめるためdry modelによる実験を行なうと,小低気圧の発達はなく上昇流も非常に弱い。降雨にともなう非断熱効果がさらに降雨を強めるという作用が推論される。<br>モデルの分解能増加の効果を見るため,11層63km格子,10層127km格子および8層381km格子モデルの予報と比較した。分解能増加によって降雨の集中性が強まるだけでなく,総(面積積算)雨量も増加する。分解能を増すと豪雨域周辺から豪雨域へ流入する水蒸気流束が増大するからである。<br>実験データにもとづき,豪雨域の水蒸気収支,対流不安定の生成,発散方程式および渦度方程式のバランスを解析した。<br>さらに1983年7月22~23日の山陰豪雨の予報実験を行った。東西にのびる豪雨域は予報されたが,予報された豪雨のピーク時と観測されたピークとの間には数時間の差があり,前線上の弱い小低気圧近傍の降雨は実際よりはやく予報され,一方小低気圧通過後の降雨は予報されなかった。小低気圧にともなわない降水が予報されなかった理由は現在不明である。