著者
野村 曜子 山崎 克人 河野 通雄
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.239-245, 1998-03-31

^<99m>Tcガラクトシル人血清アルブミンジエチレントリアミン五酢酸 (^<99m>Tc-GSA) は, 肝実質細胞のアシアロ糖蛋白受容体結合性肝シンチグラフィ製剤である。この^<99m>Tc-GSAの新しい体内動態解析法を考案した。本法では^<99m>Tc-GSAは血中と肝の間で双方向の移動のみ存在するとし, 全血液と肝の二つのコンパートメントとそれぞれの速度定数k1 (血液→肝), k2 (肝→血液) の二つのパラメータからなる2コンパートメント2パラメータモデルを設定し, 各コンパートメントの微分方程式を解いた。更に心, 肝の時間放射能曲線を解析し, k1, k2を算出した。その結果k1/k2は肝に対する^<99m>Tc-GSAの結合能を表す指標となった。また理論的最大肝摂取量としてVLmg (mg/3mgGSA) を定義した。次に肝障害が疑われた6例を対象として従来の指標 (HH15, LHL15, LHL/HH, LU15) と2コンパートメント2パラメータモデルに基づくk1, k2, k1/k2, VLmgを算出した。そして各指標と肝機能検査値との相関, 各指標間の相関を検討した。その結果, k1/k2とVLmgはLU15以外の従来の指標と良好な相関を示し, 肝機能検査値では血清アルブミン値, LAPと良好な相関を示した。2コンパートメント2パラメータモデル法はこれまで報告された動態解析法の中でも最も簡便かつ非侵襲的であり, 得られるk1/k2及びVLmgは肝機能指標として臨床応用の可能性が示唆された。