- 著者
-
山崎 将紀
- 出版者
- 神戸大学
- 雑誌
- 若手研究(スタートアップ)
- 巻号頁・発行日
- 2006
分げつ期の日本型イネにウンカ類(セジロウンカ,トビイロウンカ)が産卵すると,殺卵活性をもつ安息香酸ベンジルを含む分泌液で細胞間隙が満たされた液浸化が誘導される.その結果,卵が高率で死亡し,ウンカ類の増殖が抑制される.これまでにセジロウンカに対するイネの殺卵遺伝子Ovc(Ovicidal gene)を同定し,イネの染色体6上に位置付け,約40kbの領域に絞り込んでいる.Ovcは殺卵特性の発現に必須であるので,イネの殺卵特性について,将来の遺伝育種ならびにその遺伝的機構の解明のために,Ovcの単離を試みた.1.日本型イネ品種「日本晴」由来の候補遺伝子が組みこまれた形質転換ベクターを作成し,Agrobacterium法により,SL23(「日本晴」を遺伝的背景とし,Ovc領域がインド型イネ品種「Kasalath」(Ovcをもたない)に置換した系統.この系統は殺卵特性を示さない)に導入する形質転換を行い,目的の形質転換植物の殺卵特性を調査した.現在まで相補した形質転換植物は観察されていないが,引き続き実験を進めている。一方,OvcのcDNAと発現解析は現在進行中である.2.日本型品種とインド型品種を用い,Ovc候補領域のDNA多型におけるアソシエーション解析を行い,Ovcの候補となるDNA多型を検出し,候補領域をさらに絞り込むことができた.この情報を元にさらなる形質転換実験ならびにcDNA・発現解析を行う予定である.