著者
乃木 章子 塩飽 邦憲 北島 桂子 山崎 雅之 アヌーラド エルデンビレグ エンヘマー ビャンバ 米山 敏美 橋本 道男 木原 勇夫 矢倉 千昭 花岡 秀明 井山 ゆり 三原 聖子 山根 洋右
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.649-659, 2004-11-30
被引用文献数
1 3

農村地域で肥満, インスリン抵抗性, 脂質異常, 高血圧を合併した代謝症候群が増加している。代謝症候群に対しては体重減少が有効とされているが, 白人と日本人では肥満と代謝症候群の関係に差異が見られる。日本人での体重減少と生活習慣変容, 体重減少と代謝症候群の改善についての実証的な研究は少ないため, 体重減少に寄与する要因, 体重減少と代謝症候群改善との関係を研究した。2000~2003年に健康教育介入による3か月間の肥満改善プログラムに参加した住民188名を対象とした。参加者の平均体重減少は1.3kgであり, BMI, ウエスト囲, 血圧,総コレステロール, LDLコレステロール, 中性脂肪の減少, HDLコレステロールの増加を認めた。相関および回帰分析により, 摂取熱量減少, 消費熱量増加が体重減少に寄与していることが明らかになった。一方, 体重変化との有意な相関が認められたのは, 各種肥満指標, 総コレステロール, 中性脂肪, HDLコレステロールであり, 血圧とLDLコレステロールでは有意な相関を認めなかった。体重変化量と有意な相関が認められた血液生化学的検査値の変化量との相関係数は比較的低く, 体重変化量は中性脂肪や総コレステロールの変動の10%以下しか説明しなかった。代謝症候群の改善における体重減少の有効性について, アジア人の民族差に着目した体重減少の有効性に関する実証的な研究が重要と考えられる。
著者
馬庭 瑠美 岩本 麻実子 山崎 雅之 塩飽 邦憲
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.77-87, 2012-07-31 (Released:2012-11-21)
参考文献数
25
被引用文献数
2 1

高齢者では身体機能や生活機能が低下しがちであり,栄養の維持改善が重要である。しかし,高齢者での栄養改善効果は,病院での重度な栄養不良患者を対象とした研究が多く,地域での高齢者で栄養改善が有効かどうかの研究は少ない。そこで,自立高齢者を対象とした介護予防プログラム (食・運動習慣改善支援) において,牛乳摂取による栄養と身体機能への効果を検討した。対象は出雲市在住で3か月間の介護予防プログラムに参加した高齢者45名 (平均年齢73.7±5.7歳) で,牛乳介入群22名と対照群23名の2群に分けた。牛乳介入群には,宅配により牛乳を提供し,介入前後に栄養摂取量,運動機能,体格,血液生化学等の調査を行なった。牛乳介入群では,牛乳・乳製品の摂取量が有意に増加し,栄養指数であるBMI,HDL-コレステロール,ヘモグロビンの改善が認められた。一方,対照群では栄養指数の改善は認められなかった。介入による変化量では,牛乳介入群のBMI,アルブミン,HDL-コレステロール,ヘモグロビン,HbA1c,必須アミノ酸/非必須アミノ酸比が対照群に比較して有意に改善した。運動機能では,介入前に対照群の運動機能が不良であり,運動教室の影響が強く現れたために,対照群が介入群よりも運動機能の改善が顕著であった。以上より,良好な栄養状態の高齢者でも牛乳摂取が栄養状態を改善させることが明らかになった。