著者
橋本 道男
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.151, no.1, pp.27-33, 2018 (Released:2018-01-10)
参考文献数
40
被引用文献数
3 5

n-3系脂肪酸の機能性は,心・血管系や脂質代謝系など,多岐にわたることがよく知られている.特に,n-3系脂肪酸のなかでも脳に多く含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)は胎児期から老年期にいたるまで脳機能維持には必須である.その摂取不足は,脳の発達障害,うつ病,アルツハイマー病などの精神・神経疾患の発症と深く関連する.DHAは主に,神経新生,シナプス形成,神経細胞分化,神経突起伸張,膜流動性の維持,抗炎症作用,抗酸化作用などに関与し,脳機能維持に重要な役割を担っている.その作用機序は,1)細胞膜構成成分として膜流動性を変えてイオンチャネルや膜結合型受容体・酵素へ作用し,2)細胞膜から切り出された遊離型DHAが直接的に,あるいはさらに代謝されてプロテクチンD1などに変換されて,間接的に核や各種タンパク質に作用してその機能性を発揮する.今後の展開しだいでは,DHAなどn-3系脂肪酸の補充は,脳機能の低下を抑制し,様々な精神・神経疾患の発症とその進行を遅延し,さらには改善する可能性が期待される.
著者
奥山 治美 浜崎 智仁 大櫛 陽一 浜 六郎 内野 元 渡邊 浩幸 橋本 道男
出版者
日本脂質栄養学会
雑誌
脂質栄養学 (ISSN:13434594)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.173-186, 2013 (Released:2013-10-01)
参考文献数
60
被引用文献数
1 1

Statins have been recognized clinically to raise blood glucose and glycated protein (HbA1c) levels enhancing the development of insulin resistance. However, most clinicians appear to adopt the interpretation that the benefit (prevention of CHD) outweighs the risk (new-onset of diabetes mellitus). Consistently, "Japan Atherosclerosis Society Guidelines for the Prevention of Atherosclerotic Cardiovascular Diseases 2012" recommends diabetics to maintain LDL-C levels below 120 mg/dL; 40 mg/dL lower than the value for those without risky complications. This recommendation necessitates many diabetics to use statins. However, we pointed out that statins exhibited no significant benefit for the prevention of CHD in the trials performed by scientists independent of industries after 2004, when a new regulation on clinical trials took effect in EU (Cholesterol Guidelines for Longevity, 2010). Here, we reviewed clinical evidence that statins could induce diabetes mellitus, and biochemical evidence that statins are toxic to mitochondria; they suppress electron transport and ATP generation through decreased prenyl-intermediate levels. They also inhibit seleno-protein synthesis and dolichol-mediated glycation of insulin receptor leading to insulin resistance and cardiac failure, similarly to the case of Se-deficiency. These mechanisms of statin actions are consistent with clinically observed decreases in blood ketone body, mitochondrial dysfunctions and enhanced glucose intolerance. Based on these lines of evidence, we urgently propose that statins are contraindicant to diabetics and their prescription should be restricted to special cases* for which medical doctors rationally decide to be necessary.
著者
山下 一也 井山 ゆり 松本 亥智江 井上 千晶 松岡 文子 磯村 由美 飯塚 桃子 梶谷 みゆき 吾郷 美奈恵 齋藤 茂子 湯澤 雄一郎 片倉 賢紀 橋本 道男 加藤 節司 Kazuya YAMASITA Yuri IYAMA Ayako MATSUOKA Yumi ISOMURA Momoko IIZUKA Miyuki KAJITANI Minae AGO Sigeko SAITO Yoichiro FUKUZAWA Masanori KATAKURA Michio HASHIMOTO Setsuji KATO
雑誌
島根県立大学短期大学部出雲キャンパス研究紀要 (ISSN:18824382)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.25-30, 2007-12-10

高齢者の趣味の有無が認知機能と関連しているとの報告が多くなされている。今回、地域在住一般高齢者272名(平均年齢72.3歳)を対象に趣味の有無と認知機能の関連を検討した。趣味を有する群(186名)と無趣味群(86名)では、主観的幸福感、抑うつ程度、 日常生活動作には有意差は見られなかったが、認知機能においては、趣味を有する群では無趣味群に比して有意に高値であった。また、趣味を有する群では、無趣味群に比して、物事に好奇心があり、社交的な性格であった。認知症予防において、趣味を持つことを積極的に勧めることは重要と思われる。
著者
橋本 道男
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.67-76, 2006-02-01 (Released:2013-06-01)
参考文献数
92
被引用文献数
2 3

ドコサヘキサエン酸 (DHA, 22 : 6n-3) は神経細胞膜リン脂質の構築成分であるn-3系必須不飽和脂肪酸であり, 正常な脳の発達や視力を維持するのに極めて重要である。脳内のDHAが欠乏すると, 神経伝達系, 膜結合型酵素やイオンチャネル等の活性, 遺伝子発現, およびシナプスの可塑性, 等に著明に影響を及ぼし, そのためにDHA欠乏は, 加齢に伴う脳機能異常, アルツハイマー病, うつ病, ならびにペルオキシソーム病などを誘発する。また, DHAの摂取不足は認知・学習機能を低下させるが, DHA摂取によりこの機能は回復するようである。疫学的研究によると, 魚の消費が少ないとアルッハイマー病の罹患率が高いことから, 魚油, とくにその主成分であるDHAによる神経保護作用が推察される。脳機能障害に作用するDHAの分子メカニズムは不明であるが, DHAを摂取すると, 動物の学習機能障害が改善し, またアルツハイマー病モデルラットやマウスでの学習機能障害が予防, さらには改善される。本論文では, 食餌性DHAによる記憶・学習機能向上効果, さらには臨床応用として脳機能障害の代表的疾患であるアルツハイマー病やうつ病との関連性について紹介する。
著者
乃木 章子 塩飽 邦憲 北島 桂子 山崎 雅之 アヌーラド エルデンビレグ エンヘマー ビャンバ 米山 敏美 橋本 道男 木原 勇夫 矢倉 千昭 花岡 秀明 井山 ゆり 三原 聖子 山根 洋右
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.649-659, 2004-11-30
被引用文献数
1 3

農村地域で肥満, インスリン抵抗性, 脂質異常, 高血圧を合併した代謝症候群が増加している。代謝症候群に対しては体重減少が有効とされているが, 白人と日本人では肥満と代謝症候群の関係に差異が見られる。日本人での体重減少と生活習慣変容, 体重減少と代謝症候群の改善についての実証的な研究は少ないため, 体重減少に寄与する要因, 体重減少と代謝症候群改善との関係を研究した。2000~2003年に健康教育介入による3か月間の肥満改善プログラムに参加した住民188名を対象とした。参加者の平均体重減少は1.3kgであり, BMI, ウエスト囲, 血圧,総コレステロール, LDLコレステロール, 中性脂肪の減少, HDLコレステロールの増加を認めた。相関および回帰分析により, 摂取熱量減少, 消費熱量増加が体重減少に寄与していることが明らかになった。一方, 体重変化との有意な相関が認められたのは, 各種肥満指標, 総コレステロール, 中性脂肪, HDLコレステロールであり, 血圧とLDLコレステロールでは有意な相関を認めなかった。体重変化量と有意な相関が認められた血液生化学的検査値の変化量との相関係数は比較的低く, 体重変化量は中性脂肪や総コレステロールの変動の10%以下しか説明しなかった。代謝症候群の改善における体重減少の有効性について, アジア人の民族差に着目した体重減少の有効性に関する実証的な研究が重要と考えられる。
著者
山下 一也 松本 亥智江 橋本 道男
出版者
島根県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

魚摂取を増やす介入(魚料理教室)がうつ状態に与える影響について検討した。対象者は高齢者22名で、月1回の料理教室の開催を1年半行った。75歳以下の群ではツング自己評価式抑うつ尺度37.4±6.1点(前)から31.7±7.7点(後)へと減少傾向がみられた(0.05<p<0.1)。75歳以上の群では変化は認められなかった。魚摂取は前期高齢者では、うつ状態の改善効果が期待できることが示唆された。