著者
藤井 由希 関根 千佳 山田 清 高田 康二 山川 悦子 内藤 真理子
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.2-10, 2010-01-30
被引用文献数
2 2

職域で年に一度行われる個別対応型口腔保健活動の長期参加集団に,口腔に関連したQOLをはじめとする参加者側からの主観的な健康評価およびそれに関係する要因について短期参加集団との比較を行い,長期参加集団の特性を調査した.それによって口腔保健活動長期参加の主観的な口腔健康評価とそれに関連すると考えられる要因について検討した.対象は近畿圏同一企業内健康保険組合に所属する30-49歳男性の長期参加者(10年以上の参加者284名)と短期参加者(0-2回参加者530名)である.口腔関連QOLはGeneral Oral Health Assessment Index(GOHAI)を用いて評価し,他に主観的な健康感(全身および口腔),気になること(自覚症状)の有無,歯科保健行動,口の健康管理や健康保持に対する自信など,関連が予想される要因を保健活動時に調査した.全体および40-49歳群でGOHAIスコアが長期参加群で有意に高く(全体長期群:中央値55.0,短期群:53.5,P<0.01),主観的口の健康感,口で気になること(自覚症状)の有無の3項目で,短期参加群に比較して長期参加群で良好な結果が得られ,主観的な口腔の健康評価が高い結果が得られた.口腔保健行動では歯間清掃用具の使用,歯科医院への定期健診以外の訪院において長期群の実施率が有意に高かった.本結果から,定期的な健診を含む職域における口腔保健活動の長期継続参加が,口の健康管理の充実を促し,受診者の主観的な口腔健康評価を向上させる可能性が示唆された.今回は断面研究であるため,今後,経年的研究で検証していく必要がある.