著者
関根 千佳
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.372-377, 2009-08-01

図書館の役割とは,市民に情報を提供することである。社会を構成する市民の中には,年令や能力,背景などの環境において,多様なニーズを持つ人々が増えてきている。日本は2009年現在,イタリアを抜いて世界で最も高齢化の進んだ国となった。加齢が進み,視覚や運動機能などに制限のある市民の増大と,ITの進展で新たな読書環境が出現する中で,その「読書」を支援する体制やサービスは,どのようなものが求められているのだろうか?本稿では,特に米国における図書サービスを中心に,読書障害(Print Disability)への対応について,デジタル化が進む図書館サービスの将来像をユニバーサルデザインの観点から論じる。
著者
後藤 理絵 竹林 正樹 関根 千佳 福田 洋
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.294-301, 2022-11-30 (Released:2022-12-26)
参考文献数
24

目的:20~40歳代の労働者向け口腔健康行動促進冊子作成のプロセス評価を行うこと.事業内容:20~40歳代労働者を対象に,ナッジを設計した口腔健康行動促進の漫画冊子を作成した.プロセス評価として作成担当者の意識の変化と作成コスト,読者の満足度等を調べた.作成担当者の意識はインタビュー,作成コストは実績から把握し,満足度等はナッジ群(ナッジ型漫画冊子を配布)と対照群(情報提供型冊子を配布)に無作為に割り付けた上でウェブ調査を行った.事業評価:作成後に担当者の意識向上が見られ,作成コストは約88万円だった.読者による冊子の印象(解析対象:ナッジ群119人,対照群120人)は,表紙は「面白そう」(ナッジ群,対照群の順に48.7%, 25.8%),「読みやすそう」(79.0%, 48.3%),「イラストが良い」(57.1%, 28.3%),「情報量が多い」(26.9%, 59.2%),「読むのが不快」(7.6%, 18.3%)で,いずれもナッジ群は有意に評価が高かった.表紙と本編の印象が一致する傾向の項目も見られた.歯周病の知識は,ナッジ群のみ有意に増加した.以上から,ナッジ型漫画冊子は読者の評価が高く,知識向上に役立ち,特に表紙のナッジが重要と示唆された.結論:ナッジ型冊子は,総じて好印象であり,有意な知識向上につながった.ただし,回答に応じて付与された経済的インセンティブが結果に影響した可能性がある.今後は経済的インセンティブのない条件で調査を行う必要がある.
著者
藤井 由希 関根 千佳 山田 清 高田 康二 山川 悦子 内藤 真理子
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.2-10, 2010-01-30
被引用文献数
2 2

職域で年に一度行われる個別対応型口腔保健活動の長期参加集団に,口腔に関連したQOLをはじめとする参加者側からの主観的な健康評価およびそれに関係する要因について短期参加集団との比較を行い,長期参加集団の特性を調査した.それによって口腔保健活動長期参加の主観的な口腔健康評価とそれに関連すると考えられる要因について検討した.対象は近畿圏同一企業内健康保険組合に所属する30-49歳男性の長期参加者(10年以上の参加者284名)と短期参加者(0-2回参加者530名)である.口腔関連QOLはGeneral Oral Health Assessment Index(GOHAI)を用いて評価し,他に主観的な健康感(全身および口腔),気になること(自覚症状)の有無,歯科保健行動,口の健康管理や健康保持に対する自信など,関連が予想される要因を保健活動時に調査した.全体および40-49歳群でGOHAIスコアが長期参加群で有意に高く(全体長期群:中央値55.0,短期群:53.5,P<0.01),主観的口の健康感,口で気になること(自覚症状)の有無の3項目で,短期参加群に比較して長期参加群で良好な結果が得られ,主観的な口腔の健康評価が高い結果が得られた.口腔保健行動では歯間清掃用具の使用,歯科医院への定期健診以外の訪院において長期群の実施率が有意に高かった.本結果から,定期的な健診を含む職域における口腔保健活動の長期継続参加が,口の健康管理の充実を促し,受診者の主観的な口腔健康評価を向上させる可能性が示唆された.今回は断面研究であるため,今後,経年的研究で検証していく必要がある.