- 著者
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明石 暁子
阿部 裕之
黒木 識敬
田邉 孝大
杉山 和宏
山川 潤
濱邉 祐一
- 出版者
- 一般社団法人 日本救急医学会
- 雑誌
- 日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, no.11, pp.799-805, 2012-11-15 (Released:2013-01-17)
- 参考文献数
- 10
症例は,神経科入院歴のある61歳の女性。かかりつけ医から処方されていた徐放性塩化カリウム錠(スローケー®,600mg錠で,1錠につき塩化カリウム8.0mEq含有)約90錠を自殺目的で過量服薬した。救急隊搬送中に心肺停止状態となった。服薬後約90分で病院に到着したが,来院時も心肺停止状態であった。来院時の心電図は,高カリウム血症が原因のventricular tachycardia(VT)であった。Advanced cardiovascular life support(ACLS)に反応がないため,percutaneous cardiopulmonary support(PCPS)を装着することによって循環の維持が可能となり意識も回復した。高カリウム血症(K 11.6mEq/l)の是正のためにhemodialysis(HD)を行いつつ,腹部単純X線に写った大量の徐放性塩化カリウム錠の錠剤を上部消化管内視鏡で除去した。翌日にはPCPSより離脱し,経過中左側胸水や肺炎を合併しながらも全身状態は改善して第26病日,救命救急センターから一般病棟へ転棟した。入院時の上部消化管内視鏡の所見で,著しいびらんと出血を認めた。第68病日の上部消化管内視鏡では,胃弓隆部の狭小化と胃体部の著しい狭窄を認めた。この徐放性塩化カリウム錠が原因の瘢痕狭窄に対して,第81病日に胃分節切除術を施行した。全身状態も良好となった第136病日精神病院へ転院した。塩化カリウム製剤の過量服薬症例では,正常な腎機能を有する場合でも短時間のうちに致死的な高カリウム血症を生じる危険性がある。また急性期の高カリウム血症に対する治療が終了した後も胃の瘢痕狭窄に対して注意深いフォローアップを要する。