著者
柏浦 正広 齋藤 一之 横山 太郎 小林 未央子 阿部 裕之 神尾 学 田邉 孝大 杉山 和宏 明石 曉子 濱邊 祐一
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.794-799, 2014-12-31 (Released:2015-01-24)
参考文献数
10

症例は70歳代男性。気分障害にて入院加療中であったが,一時外出中に自宅のメッキ工場でメッキ加工に使用する無水クロム酸を服毒し,その3時間後に当院救命救急センターに搬送された。来院時,口腔内はびらんが強く,一部粘膜は剝離しており,上部消化管内視鏡検査では食道や胃の粘膜表層が剝離していた。血清クロム濃度は842.6μg/dLであった。ジメルカプロールとアスコルビン酸を投与したが,ショック状態となった。集学的管理を行うも,入院36時間後には肝不全,播種性血管内凝固症候群も併発し52時間後に死亡した。剖検では口腔から食道まで粘膜は剝離しており,凝固壊死がみられた。六価クロムは強い酸化剤であり,容易に吸収され腐食性の損傷を生じる。またその細胞毒性から肝・腎障害を生じることが知られている。本症例でも高度の腐食性の化学損傷を起こし,肝・腎不全の悪化から多臓器不全を生じたものと考えられた。
著者
藤山 直之 幡野 喜子 杉山 和宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EID, 電子ディスプレイ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.314, pp.33-36, 2005-09-28
被引用文献数
1

デジタルカメラの普及に伴い, 撮像画像の手ぶれ補正処理の必要性が高まっている.本稿では, 静止画手ぶれ補正に対して画像修復アルゴリズムの適用を検討した.画像修復アルゴリズムは, 劣化画像の修復問題であることから, CCD平面における像の振れを, インパルス応答関数として捉えることで, 手振れ補正処理を行うことができる.しかし, 有限領域の離散データに対してアルゴリズムを適用するだけでは, 所望の解を導くことはできない.そこで, 定義された劣化画像の領域よりも外側に, 数学的画像モデルに適合するようなデータを埋め込むことで, 所望の解が導けることを数値実験により示した.
著者
柴橋 慶多 坂井 豪 杉山 和宏 濱邊 祐一
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.788-793, 2020-12-28 (Released:2020-12-28)
参考文献数
13

目的:東京消防庁が交通外傷患者のトリアージに活用している「観察カード」記載項目の陽性的中率を評価する。方法:2013〜2016年の間に当救命救急センターに搬送された15歳以上の交通外傷患者を対象とした。重症判断理由を後方視的に調査し,実際の重症度と対照して観察カード各項目の陽性的中率を算出した。結果:801例が解析対象となった。生理学的または解剖学的異常に基づいてそれぞれ268例と49例が重症と判断され,陽性的中率はそれぞれ62%と47%であった。受傷機転に基づいて重症と判断された484例の陽性的中率は17%であった。陽性的中率は受傷機転によって異なり,「車の横転」,「車の高度損傷」,「救出に20分以上を要した」の的中率は12%未満であった。結語:受傷機転に基づく交通外傷患者重症判断の陽性的中率には各項目間に差がある。病院前トリアージ基準の妥当性を検証すべく,さらなる調査研究が求められる。
著者
明石 暁子 阿部 裕之 黒木 識敬 田邉 孝大 杉山 和宏 山川 潤 濱邉 祐一
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.11, pp.799-805, 2012-11-15 (Released:2013-01-17)
参考文献数
10

症例は,神経科入院歴のある61歳の女性。かかりつけ医から処方されていた徐放性塩化カリウム錠(スローケー®,600mg錠で,1錠につき塩化カリウム8.0mEq含有)約90錠を自殺目的で過量服薬した。救急隊搬送中に心肺停止状態となった。服薬後約90分で病院に到着したが,来院時も心肺停止状態であった。来院時の心電図は,高カリウム血症が原因のventricular tachycardia(VT)であった。Advanced cardiovascular life support(ACLS)に反応がないため,percutaneous cardiopulmonary support(PCPS)を装着することによって循環の維持が可能となり意識も回復した。高カリウム血症(K 11.6mEq/l)の是正のためにhemodialysis(HD)を行いつつ,腹部単純X線に写った大量の徐放性塩化カリウム錠の錠剤を上部消化管内視鏡で除去した。翌日にはPCPSより離脱し,経過中左側胸水や肺炎を合併しながらも全身状態は改善して第26病日,救命救急センターから一般病棟へ転棟した。入院時の上部消化管内視鏡の所見で,著しいびらんと出血を認めた。第68病日の上部消化管内視鏡では,胃弓隆部の狭小化と胃体部の著しい狭窄を認めた。この徐放性塩化カリウム錠が原因の瘢痕狭窄に対して,第81病日に胃分節切除術を施行した。全身状態も良好となった第136病日精神病院へ転院した。塩化カリウム製剤の過量服薬症例では,正常な腎機能を有する場合でも短時間のうちに致死的な高カリウム血症を生じる危険性がある。また急性期の高カリウム血症に対する治療が終了した後も胃の瘢痕狭窄に対して注意深いフォローアップを要する。
著者
松永 裕樹 高橋 正道 大倉 淑寛 志水 祐介 前原 弘武 北川 幹太 山川 潤 杉山 和宏 三上 学 濱邊 祐一
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.353-358, 2022-10-20 (Released:2022-10-20)
参考文献数
9

外傷性腹部大動脈損傷は稀だが, 死亡率が高く, 迅速な診断・治療が肝要である. 当院はCTと透視装置を備えたハイブリッドERを有し, 移動を伴わず, 蘇生・診断・治療が可能である. ハイブリッドERで, resuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta (以下REBOA) で出血を制御し, ステントグラフト留置で救命した1例を経験した. 70歳代男性. ワゴン車乗車中の事故で, ショック状態で搬送された. CTで血管外漏出を伴う腹部大動脈損傷がみられた. REBOAを大腿動脈からZone3に留置し, 出血制御後, 手技中の循環安定のため, 左上腕動脈からの留置に変更した. コイリング, ステントグラフト留置で止血を得た. ハイブリッドERでのステントグラフト治療は, 移動を伴わず迅速な診断・治療が可能である.
著者
山本 豊 藤田 浩 田邉 孝大 杉山 和宏 黒木 識敬 明石 暁子 濱邊 祐一
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.15-22, 2011-01-15 (Released:2011-03-25)
参考文献数
19

症例は29歳,男性。市民マラソンに参加したが競技中に意識消失し当院搬送となる。熱中症と診断し治療を開始したが,第2病日に急性肝炎重症型となり凝固因子補充目的に新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma; FFP)の輸血を施行し,第3病日に劇症肝不全となる。同日もFFP投与を行ったが,輸血開始後に頻脈や頻呼吸を認め非侵襲的陽圧換気を開始した。心エコー検査を施行したが輸血関連循環過負荷と輸血関連急性肺障害との鑑別は困難であり,その後も呼吸循環動態には改善を認めず気管挿管下に集中治療を開始した。輸血前後の検体からは抗HLA抗体,抗顆粒球抗体等の検出は認めず,診断指針推奨案に基づいて輸血関連急性肺障害疑いと診断,重篤な経過をたどったが救命に成功した。救急医療の現場では急性肺障害を来しうる誘因は多数あるが,輸血も鑑別の一つとなりうることを留意すべきである。