著者
今村 友典 小松 祐美 清川 隆 山形 梨里子 金井 尚之
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.275-277, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
参考文献数
12

【症例】生来健康な20歳男性が, 観賞目的にアマゾン産淡水エイ (Potamotrygon leopoldi, 年齢不詳, 雌) をインターネットオークションで購入した。水槽清掃時に右手背部を刺され受傷した。刺傷後から右手背部の疼痛と腫脹が出現したために当院を受診した。海水エイの治療に準じて創部の洗浄と40℃の湯に60分浸漬したところ, 疼痛が軽減した。腫脹は持続していたが, 経過観察後も全身状態は良好なため帰宅した。受傷翌日および1週間後ならびに約1カ月後も症状は増悪なく経過した。【考察】インターネットの普及で淡水エイの購入・飼育は誰でもどこでも可能となっている。そのため, 淡水エイに精通していない一般市民に同様の刺傷例が発生する危険性がある。本邦での淡水エイによる刺傷の報告は自験例を含め4例で少なく, 臨床像も不明な点が多いのが現状である。
著者
寺島 侑希 山形 梨里子 末吉 亮 石上 雄一郎 小川 敦裕 沼田 賢治 溝辺 倫子 本間 洋輔 高橋 仁 井上 哲也 舩越 拓
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.366-368, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
6

【背景】精巣は白膜に保護されているが強い外力が加わると大腿や恥骨に挟まれ破裂し, 外科的修復を要することがある。【症例】特に既往のない24歳男性。 400ccバイクで走行中に, 60km/時で軽自動車と正面衝突し当院救急搬送となった。来院時は意識清明, バイタルサインは心拍数 71回/分, 血圧 119/79 mmHg, 呼吸数 25回/分, 体温 37.0℃, SpO2 98% (室内気) だった。primary surveyでは明らかな異常を認めなかったが, secondary surveyで会陰部に陰囊の腫脹・疼痛があり右精巣が陰囊から体表に脱出していた。体幹部造影CT検査では軽度の左陰囊内への造影剤の血管外漏出以外に明らかな異常はなかった。治療方針決定のため精巣超音波検査を行うと, 左精巣が腫脹 (35×28×26 mm) しており, 陰囊内部のエコーは低エコーから高エコー域が混在, ドプラエコーで内部血流は不明瞭であり左精巣破裂が疑われた。緊急手術の方針とし, 右精巣は精巣固定術を施行, 左精巣に関しては損傷が大きく機能温存は不可能であり精巣摘出術を施行した。術後は創部感染や合併症等なく経過し, 入院7日目に退院となった。退院後の精査では右精巣機能の温存が確認できた。【結語】精巣損傷を認めた際は, 見た目に損傷が大きい側だけでなく反対側の評価も怠らないことが早期の治療加入, 精巣機能温存につながるため重要である。