著者
Joke Ouwendijk Leo A. Ginsel Jack A.M. Fransen 山形 貞子
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.9, no.46, pp.223-232, 1997-03-02 (Released:2010-01-05)
参考文献数
95

小腸はデンプンからの生成物やショ糖を分解する重要な場所である。スクラーゼ-イソマルターゼ (SI) は小腸の上皮細胞の刷子縁に発現している膜貫通II型糖タンパク質である。SIの特殊な構造と独特な発現の仕方が、いくつかの細胞生物学的反応についてのモデルとして理想的なタンパク質にしている。この総説では次のトピックスをとりあげようと思う。i) SIの独特な構造、ii) このタンパク質の独特な発現の仕方とその制御、iii) SIが膜の頭頂部へ輸送される際の頭頂部輸送機構の役割、iv) 先天的SI欠損症の原因となる輸送をできなくする機構、v) 細菌毒素がSIに結合する時に起こる情報伝達カスケードにおけるSIの役割。
著者
Hall Heike Schachner Melitta 山形 貞子 田中 啓友
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.10, no.55, pp.361-382, 1998
被引用文献数
2

細胞外マトリックスは細胞接着 (総説: Gumbiner、1996)、神経突起伸長の際の growth cone guidance (総説: Luckenbill-Edds、1997)、細胞移動 (総説: Lauffenberger と Horwitz、1996)、細胞極性 (総説: Drubin と Nelson、1996)、細胞死 (総説: Adams と Watt、1993) など個体発生と分化の基礎となる重要な事象全てに対し、足場として働いている (総説: Adams と Watt、1993)。細胞外マトリックスの分子構築はラミニン、IV型コラーゲン、ナイドジェン/エンタクチン、ヘパラン-、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの間の特異的相互作用によって作り上げられている (Sanes、1989; Timpl と Brown、1994; Yurchenco と O'Rear、1994; Timpl と Brown、1996; Timpl、1996)。この超-分子集合体の構築に関与する重要な分子が現在増えつつあるラミニンファミリーである (Burgeson ら、1994; Engvall と Wewer、1996)。この総説では細胞接着 (インテグリンと免疫グロブリンスーパーファミリーに属する細胞接着糖タンパク質) に関与する自己-相互作用および細胞外マトリックスの他のメンバーである硫酸化糖鎖 (ナイドジェン/エンタクチン、フィブリン、パールカン、アグリン、α-ジストログリカン/クラニン) や糖タンパク質など、異なる型のリガンドとの相互作用を可能にするラミニンの独特な分子構造に焦点を絞ろうと思う。特にラミニンとそのリガンド間相互作用への糖鎖の関与について考察しようと思う。
著者
Houston Katirina M. Harnett William 山形 貞子 山形 達也
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in glycoscience and glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.11, no.58, pp.43-52, 1999-03-02
参考文献数
39
被引用文献数
9

ホスホリルコリン(PC)はフィラリア(糸状虫)線虫によって分泌される多くのタンパク質(ES)に存在する免疫的に主要なエピトープであり、寄生虫が宿主の免疫応答を変えることによって生き延びることに関係していると考えられている。PCを持たないESを産生している線虫は生存期間が減少するだろうという考えに基づいて、ESへのPC付加機構の研究がなされてきた。ES-62は <i>Acanthocheilonema viteae</i> (フィラリアの齧歯類モデル)が産生するPCを持つ主なESであり、これを研究することによってPCがアスパラギン結合型糖鎖を介してタンパク質鎖に結合していることが示された。この型のPCと糖の間の結合はヒトの複合糖質には存在しないので、ESのPC-グリカンは化学療法の新しい標的となるだろう。パルス-チェイス実験からES-62へのPCの付加は、タンパク質合成の40-60分以内に起こる細胞内輸送の間というかなり早い時期に行われることが示された。細胞内輸送およびオリゴ糖のプロセッシングの阻害剤を用いた研究から、3種の試薬がES-62へのPCの付加を妨げることのできることが明らかとなった。ブレプェルディンAはERからゴルジへの輸送を阻害する; 1-デオキシノジリマイシン(dNM)はER内でα-グルコシダーゼIを阻害する。1-デオキシマンノジリマイシンは<i>cis</i>-ゴルジ内でα-マンノシダーゼIを阻害する。スワインソニンはα-グルコシダーゼIIの阻害剤であるがPCの転移は妨害しない。これらの観察からPCの付加は恐らくER以降の <i>medial</i> ゴルジ内で起こる出来事であり、PCが転移される基質はMan<sub>5</sub>GlcNAc<sub>3</sub>あるいはMan<sub>3</sub>GlcNAc<sub>3</sub>であることが示唆された。質量分析の結果はこの説明と矛盾せず、PCは3個のマンノースからなるマンノースコアに、0-1個のフコース、1-4個のGlcNAc残基を持つ糖鎖に付加していることを明らかにしている。