著者
星 秋夫 中井 誠一 金田 英子 山本 享 稲葉 裕
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.175-184, 2010 (Released:2010-12-17)
参考文献数
24
被引用文献数
2

本研究は人口動態統計死亡票を用い,熱中症死亡の地域差について検討した.さらに,ICD-10 適用前・後(以降 ICD-10 前後と略)における熱中症死亡の差異についても検討した. 1975年~2007年までの33年間における熱中症による死亡数は5,877人であり,年平均の死亡数は178人/年であった.ICD-10 後の死亡率,年齢調整死亡率は ICD-10 前よりも有意に高値を示した.また,いずれの年齢階級においても ICD-10 後の死亡率は ICD-10 前よりも有意に高値を示した.死亡の発生場所において,スポーツ施設,その他明示された場所を除くすべての場所で ICD-10 前よりも ICD-10 後に発生割合が増加した.しかし,スポーツ施設,その他明示された場所においては ICD-10 後,その発生割合は急激に低下した. 死亡率は秋田県が最も高く,次いで鹿児島県,群馬県となる.これに対して,北海道の死亡率は最も低く,神奈川県,宮城県で低値を示した.各都道府県における人口の年齢構成の影響を除くために,年齢調整死亡率をみると,沖縄県が最も高くなり,ついで鹿児島県,群馬県となり,北海道,神奈川県,長野県が低値を示した.最高気温/年と死亡率,年齢調整死亡率との間には高い有意水準で相関が認められ,年最高気温の差異は各地域の熱中症死亡に影響をもたらす要因の一つであることが認められた. 以上のことから,熱中症の死亡率や年齢調整死亡率は日本海側で高く,太平洋側で低い傾向を示すとともに,内陸に位置する群馬県,埼玉県,山梨県で高値を示した.また,沖縄県,鹿児島県で高く,北海道で低いことが認められた.このような熱中症の死亡率や年齢調整死亡率の都道府県の差異は夏季の暑熱環境の差,いわゆる熱ストレスの差に起因していると考えられる.
著者
山本 享弘 猿渡 俊介 森川 博之
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.1863-1874, 2012-07-15

スマートフォンに代表される近年の携帯電話の高機能化にともない,携帯電話に搭載されたセンサを使って実空間情報を収集する携帯電話センシングが実現可能となった.しかしながら,バックグラウンドで動作する携帯電話センシングの処理や通信が,フォアグラウンドのウェブブラウジングなどのネットワークアプリケーションの通信に遅延を生じさせるという問題が発生する.本稿では,携帯電話センシングを実現したときのユーザ通信の遅延を抑制するために,携帯電話上でトラヒックの優先制御を行うLW-LBE(Lightweight Lower-than-Best-Effort)の設計と実装,評価について述べる.LW-LBEでは,実行オーバヘッドの小さいソフトウェア割込みハンドラをプライオリティキュー単位に割り当て,タスクとソフトウェア割込みハンドラの間で実行順序を制御することで,低優先度通信を低オーバヘッドで実現する.実機上にLW-LBEを実装して評価を行った結果,既存手法よりも少ない実行サイクル数でフォアグラウンド通信の遅延が削減できることを示す.Mobile phone sensing collects real-world information with sensors on mobile phones. The sensing applications get the real world information and upload sensor data to the server periodically in background. The sensor data uploading induces communication delay of user's network applications such as web browsing. To reduce the communication delay, this paper shows Lightweight Lower-than-Best-Effort (LW-LBE) protocol, which sets the lower priority than best-effort to the background traffic. The LW-LBE assigns software-interrupt handlers to each priority, and controls the execution order among software-interrupt handlers and tasks. We implemented the LW-LBE on an android phone and evaluated the LW-LBE. The evaluation results show LW-LBE reduces the communication latency of the foreground application to the same level with the previous work and reduces more CPU load than the previous work.