著者
山本 利和
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

視覚に障害を持つ幼児であっても移動経験が増すことによって空間理解力や移動能力が高まると予想される。つまり、移動に伴う衝突などの危険性をなくし、子ども自身が移動は不愉快なものではないことを解るようになれば、視覚障害児の移動は一層増加し、視覚障害児の定位能力や移動能力が高まると考えられる。そこで、本研究では以上の促進効果をもたらすものとして白杖を使用したい移動訓練を2名の視覚障害児に実施し、移動姿勢や環境情報の捉え方の変化についての事例研究を実施した。被験者1の記録は3歳1ヶ月から5歳0ヶ月までのものであり、被験者2の記録は2歳5ヶ月から3歳8ヶ月までのものであった。なお2名の白杖歩行技術としては幼児を対象としていることからタッチテクニックは用いず、白杖をバンパー代わりに身体の前方に出し床を滑らせる方法(対角線テクニック)を訓練しようとした。また、被験者2にはPusherタイプのプリケーンの使用もさせた。事例から視覚障害児への白杖導入についてのいくつかの示唆を得ることができた。まずプリケーンであるが、被験者2は3歳0ヶ月で白杖を利用できなかった。ところが、同じ日にプリケーンを利用した歩行を容易に行っているため、プリケーンを幼児に積極的に導入する価値は十分にあると思われる。白杖の導入については2名の被験者の結果より3歳を越えないと導入が難しいことがわかった。さらに、白杖を常に体の前方に突き出して歩く対角線テクニックを利用できるのはおよそ4歳半以降であった。階段での白杖使用は4歳台で可能であるが、白杖による階段の終点発見は5歳0ヶ月でも無理であった。
著者
山本 利和 対馬 貞夫 中島 実
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. IV, 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.191-197, 1998-08

8名の視覚障害乳幼児とその家族に対して兵庫県南部地震の影響を調べた。研究は地震の6ヶ月後に実施されたインタビューと,地震の2年後に実施された調査からなっていた。視覚障害児とその保護者たちは,激しい地震下での怯えた様子,厳しい避難生活,子どもや親の心理的変化を報告した。しかしながら,長期的ストレス症状は視覚障害児にはあらわれなかった。この原因は両親による視覚障害児への援助の多さにあると考察された。最後に,広域災害のための人間ネットワークを作りの重要さが提案された。This survey was conducted to investigate the influences of the southem Hyogo earthquake for eight blind childreninfants and their families. The interview at 6 months after the earthquake, and questionnaires at 2 years after the earthquake were executed. Blind children and their parents reported the fearful situation under the strong earthquake, severe refuge life, and mental changes of children and parents. However, long-range stress disorders did not appear for the children. It was discussed that the reason was on much amount of support to blind children by their parents. Last, it were proposed an importance of making the human-network prepare for a wide-area disaster.