著者
浅岡 章一 山本 隆一郎 西村 律子 野添 健太 福田 一彦
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
vol.32, pp.145-152, 2022-03-15

これまで反応時間の計測を伴う認知課題は,専用ソフトウェアがインストールされたPC を用いて実験室等において実施されることが殆どであった。しかし,近年では無料で利用可能な認知課題作成ソフトウェアPsychoPy と,認知実験用サーバーサービスであるPavlovia を組み合わせることなどにより,参加者に自身のPC を用いてインターネットブラウザを通じたオンラインでの認知課題参加を求めることが可能となってきている。本稿では,このPsychoPy とPavlovia の利用に関する著者らの近年の取り組みについて報告するとともに,これらを大学での研究および教育に継続的に利用していくにあたっての管理・運営上の課題についても考察した。
著者
宗澤 岳史 山本 隆一郎 根建 金男 野村 忍
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.8-15, 2011 (Released:2014-07-03)
参考文献数
20

本研究は、入眠障害と入眠時の対処行動の関連を検討したものである。研究1では、入眠時の対処行動を因子分析によって分類した。分類された因子は第1因子“認知活動抑制”、第2因子“非入眠行動”、第3因子“認知活動活性”と解釈された。研究2では大学生355名を対象に、対処行動と入眠時認知活動、入眠障害の程度の関連を検討した。その結果、全て対処行動は入眠時認知活動と入眠障害の程度と正の相関を示した。また、パス解析の結果、入眠障害に至る2つの経路が示された。一つは、認知的対処が入眠時認知活動と有意な関連を示す間接的なパスであり、もう一つは、行動的対処が入眠障害の程度と有意な関連を示す直接的なパスであった。本研究結果から、入眠時の不適切な対処行動は入眠障害に対して不適切な影響を有することが確認された。今後は、不適切な対処行動の除去と代わりとなる対処方略の導入を用いた入眠障害に対する認知行動療法の開発が期待される。
著者
原 真太郎 田中 春仁 川嶋 宏行 山本 浩彰 野中 泉美 山本 隆一郎 Broomfield M Niall 野村 忍
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
Journal of Health Psychology Research (ISSN:21898790)
巻号頁・発行日
pp.180328125, (Released:2020-03-31)
参考文献数
35

Waine, Broomfield, Banham, & Espie (2009) developed and validated the Metacognitions Questionnaire-Insomnia (MCQ-I) to assess metacognition about sleep, which was hypothesized to have a two-factor structure consisting of metacognitive belief about sleep, and metacognitive plans about sleep. However, it is unclear if the MCQ-I reflects metacognition about sleep as hypothesized because no item analysis or factor analysis was conducted. The present study was designed to develop a short version of MCQ-I using selected items and investigate its reliability and validity. A cross-sectional survey using the MCQ-I was conducted with undergraduates (N=330) and 27 patients with chronic insomnia disorder. Results of factor analysis and item analysis of their responses indicated that MCQ-I has a two-factor structure as hypothesized, and 25 items had high internal consistency. Moreover, the MCQ-I-25 was correlated with metacognition about worry, comprehensive dimensions of cognitive arousal, and sleep disturbances. Furthermore, the MCQ-I-25 score was higher in insomnia patients than healthy students. These results suggest that MCQ-I-25 reflects metacognition about sleep and could predict cognitive arousal and insomnia.
著者
山本 隆一郎 野村 忍
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.22-32, 2010 (Released:2014-07-03)
参考文献数
43

本研究の目的は,実際の就寝環境における入眠時選択的注意が入眠困難に及ぼす影響を2週間のホームワーク実験によって検証することが目的であった。13名の入眠困難者は実験群と統制群に割り付けられた。実験群は,後半の1週間,就寝時の注意統制のため毎日寝床で数息観(自発的な呼吸を数える禅瞑想課題)を実施した。実験群と統制群における,入眠時選択的注意尺度得点,入眠時認知活動尺度得点,1週間の平均入眠潜時の違いを検討するため,2要因反復測定分散分析(2群×2時期)を行った。その結果,入眠時選択的注意得点において有意な交互作用が確認された(F(1,11)=6.24,p=.030)。また入眠時認知活動尺度の第2因子(眠れないことへの不安)得点において交互作用の有意傾向が確認され(F(1,11)=3.78, p=.078)た。さらに1週間の入眠潜時において交互作用の有意傾向が確認された(F(1.11)=3.35, p=.095)。本研究より,入眠時選択的注意の入眠困難に及ぼす影響が示唆され,数息観による注意統制が入眠困難に効果的である可能性が考えられた。
著者
山本 隆一郎 今泉 結
雑誌
江戸川大学心理相談センター紀要 = The bulletin of Edogawa University Psychological Counseling Center
巻号頁・発行日
vol.1, pp.15-24, 2020-03-25

本研究の目的は,拡張版計画的行動理論(TPB-E)に基づき大学生におけるインフルエンザワクチン接種行動意図の関連要因を探索することであった。大学生を対象にTPB-E における各コンストラクトの操作的定義及び測定法(Schmid et al., 2017)を用いた質問紙調査が実施された。127 名の有効回答が分析対象であった。ステップワイズ法による重回帰分析の結果,“ワクチン接種をしない場合に予期される後悔(β = .374,p < .001)”,“態度(β = .248, p = .011)”,“知覚されたインフルエンザ罹患可能性(β = .193,p = .026)”がモデルに投入された(R 2 = .436)。性別ごとに解析したところ,男性では,“ワクチン接種をしない場合に予期される後悔(β = .492,p < .001)”,“知覚されたインフルエンザ罹患可能性(β = .267,p = .015)” がモデルに投入され(R 2 = .343),女性では,“ワクチン接種をしない場合に予期される後悔(β = .571,p < .001)”,“ワクチンを接種した場合に予期される後悔(β = -.375,p < .001)”,“態度(β = .301,p = .011)” がモデルに投入された(R 2 = .654)。このことから,ワクチン接種行動意図を高めるためには,ワクチン接種を行わなかった際の損益を強調すること,特に,男性では予防接種の効果に対する評価を高める介入,女性では副反応に関する正しい知識の教育が有効であると考えられた。
著者
松浦 桂 山本 隆一郎 野村 忍
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究 (ISSN:03861856)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.17-22, 2009-04-25

本研究では,ストレスークリーナー(SC-SX:株式会社テクノスジャパン製)の心理・身体的リラクセーション効果を検証した.対象者は44名(男性20名,女性24名,平均年齢34.14歳,SD=11.58歳)であった.対象者は,SC-SXの音楽付映像AおよびBを順に視聴した.心理指標の測定には,対象者の気分状態が用いられた.気分状態の測定には,Profile of Mood State短縮版(POMS:横山,2005)を用い,映像視聴前(T1)・A視聴後(T2)・B視聴後(T3)の3時点で回答するよう教示された.POMSは,緊張-不安(Tension-Anxiety:T-A),抑うつ-落ち込み(Depression-Dejection:D),怒り-敵意(Anger-Hostility:A-H),活気(Vigor:V),疲労(Fatigue:F),混乱(Confusion:C)の6つの下位尺度から構成され,総合的な気分状態(Total Mood Disturbance:TMD)は,Vを除く全ての下位尺度を合計した点数からV得点を減じて算出された.生理指標の測定には生体信号(筋電位)が用いられた.生体信号は,周波数解析(FFT)を行われた後,2Hz〜40Hzのパワー値が3時点について記録された.記録された生体信号は,全て積算され,平均を求めたものがPCの画面上へ100指数で表された(以下,NB値:Numerical of biological signal).統計解析には,映像視聴時期を独立変数,POMSの各下位尺度得点平均値・総合得点(TMD)平均値・NB値平均値を従属変数とする1要因3水準の反復測定分散分析を用いられた.全ての下位尺度,TMD,NB値において,映像視聴時期の主効果が確認されたT-A,A-H,F,C,TMD:p<.001,V:p<.01,D:p<.05,NB:p<.10).単純主効果(Bonferoni法)の検討を行った結果,T1-T2において,全ての下位尺度およびTMDの有意な低減が確認された(ps<.05).T1-T3においては,D以外の全ての下位尺度およびTMDの有意な低減が確認された(ps<.01),また,T2-T3においては,T-AおよびNB値に有意な低減が認められた(緊張-不安:p<.01,NB:p<.10).以上の結果から,SC-SXの心理・身体的リラクセーション効果が確認された.