著者
猪熊 壽 大野 耕一 山本 静雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.1153-1155, s・vi, 1999-10
被引用文献数
3 35

山口大学家畜病院に来院した犬430頭を対象にEhrlichia canisおよびHepatozoon canis抗体保有状況を調査するとともに,感染に関連する要因(年齢,性,品種,屋外室内飼育,住所)を解析した.E.canisおよびH.canis抗体陽性率はそれぞれ4.7と4.2%であった.両抗体とも性および年齢別の陽性率には差が認められなかったが,高い陽性率を示す市町が存在した.また屋外飼育の犬は室内飼育のものに比べて陽性率が高かった.さらにE.canisではビーグル,ゴールデン・レトリバー,ポインター,またH.canisについては秋田,柴,ビーグル,ポインター,雑種といった品種で陽性率が高い傾向がみられた.
著者
山本 静雄 栗林 尚志 本田 政幸
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
no.15, pp.267-273, 2008-03-31

ヘモグロビンに代わる潜血の仮の指標として糞便および尿中の炭酸脱水酵素アイソエンザイム-I(CA-I)濃度を酵素免疫測定法(ELISA)により評価した。健康な各種年齢の実験用ビーグル犬113頭(雄50頭,雌63頭)における糞便中のCA-I濃度は,4.3から16.7ng/g便(平均;7.0±2.9ng/g便)であった。3頭の健康なビーグル犬から採取した血液1ml中に含まれるCA-Iは,それぞれ1,047, 1,062および1,150μgであった。自己血(10ml)を胃内へ注入したイヌの糞便CA-I濃度は大変低かった。しかし,自己血(5ml)を上行結腸部へ注入したイヌの糞便CA-I濃度は大変高かった。糞便中のCA-Iの検出は大腸からの出血があるイヌを見分けるのに有用であろう。健康な55頭のビーグル犬から採取した尿を化学的検査で調べた結果,44頭が陰性であったが,これら尿中のCA-I濃度はELISAで1.8から12.6ng/ml(平均;6.9±5.4ng/ml)であった。また,尿の潜血検査の結果が陽性であった11頭のイヌのCA-I濃度は,ELISAで41.2から525.0ng/mlであった。CA-Iは赤血球の特異的な指標ではないが,Hbに対する抗体を用いた特異的な免疫学的検査キットが開発されるまで,CA-Iはイヌの糞便および尿の潜血の検出に用いられるであろう。