著者
福井 祐一 福井 祐子 吉村 啓太 猪熊 壽
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.97-100, 2016
被引用文献数
2

Anaplasma phagocytophilumはマダニが媒介するリケッチアである.人及び動物の顆粒球性エーリキア症の原因菌として知られている.海外渡航歴のないシーズー,避妊雌,3歳齢がマダニ刺咬後1週間後に元気食欲の低下と発熱を呈し,血液検査では血小板減少,軽度の好中球減少,肝酵素及びCRPの上昇を認めた.血清A. phagocytophilum抗体が弱陽性を示し,EDTA全血のPCR検査にてA. phagocytophilumが陽性を示したことから,A. phagocytophilum感染症と診断した.ドキシサイクリンによる治療を開始したところ,明らかな臨床症状の改善と,血小板数及び好中球数の顕著な増加を認めた.本例は犬における本邦初のA. phagocytophilum感染症の報告である.
著者
佐鹿 万里子 森田 達志 的場 洋平 岡本 実 谷山 弘行 猪熊 壽 浅川 満彦
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 = Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.125-128, 2009-10

An immature male raccoon (Procyon loter) with severe mange was captured at Kita-Hiroshima City, Hokkaido, Japan, on February 2005. The severe alopecia and crusting lesion were found on dorsal side of the raccoon, and mites obtained from the lesion were identified as Sarcoptes scabiei by both morphological and molecular biological methods (2nd internal transcribed spacer: ITS-2). The present case is the first record of mange caused by S. scabiei from free ranging raccoons in Japan. 2005年2月,北海道北広島市にて腰部から尾部にかけ著しい脱毛と痂皮を形成したアライグマProcyon lotor雄幼獣一個体が捕獲され,当該病変部から多数の小型ダニ類が検出された。形態および 2nd internal transcribed spacer (ITS-2)の塩基配列から,これらのダニ類はSarcoptes scabieiと同定された。本症例は日本産アライグマのS. scabieiによる疥癬の初報告となった。
著者
猪熊 壽 田井 貴子 市川 康明 INOKUMA Hisashi TAI Takako ICHIKAWA Yasuaki
出版者
日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.293-298, 2012

全国47都道府県の小動物診療施設を対象に2009年(09年)と2010年(10年)の犬Babesia gibsoni感染症発生状況に関するアンケート調査を実施した.9,513施設か6,746 の回答が得られ(回収率70.9 %),うち859施設(12.7 %)が本症を経験していた.確定症例数は09年3,802,10年3,625で,うち東日本では09年87,10年75であった.栃木,茨城,群馬,埼玉,東京,長野の関東以北6都県では,西日本への移動又は旅行歴のない,闘犬以外の品種9頭に確定症例が認められ,関東以北でのB. gibsoni自然感染が示唆された.西日本では769 施設で09年3,715,10年3,550の確定症例があり,特に香川,熊本,徳島,山口,福岡,宮崎,兵庫各県で,年間200を超える症例が報告された.A nationwide questionnaire was conducted on the prevalence of the Babesia gibsoni infection in dogs in 2009 and 2010. The questionnaire was sent to 9,513 animal hospitals in all 47 prefectures, and 6,746 answers (70.9%) were received. Among the respondents, 859 animal hospitals (12.7%) have diagnosed B. gibsoni infection indogs. The numbers of patients were 3,802 and 3,625 in 2009 and 2010, respectively. In Eastern Japan, a total of 89 animal hospitals diagnosed 87 patients infected with B. gibsoni in 2009 and 75 infected in 2010. Nine clinical cases of B. gibsoni infection were confirmed in nonhfighting dogs without travel histories in Western Japan, in Tochigi, Ibaraki, Gunma, Saitama, Tokyo, and Nagano prefectures. It is suggested that natural infection withB. gibsoni would have occurred in Eastern Japan. In Western Japan, a total of 769 animal hospitals diagnosed3,715 and 3,550 patients infected with B. gibsoni in 2009 and 2010, respectively. In particular, more than 200 confirmed clinical cases per year were reported from Kagawa, Kumamoto, Tokushima, Yamaguchi, Fukuoka,Miyazaki and Hyogo prefectures.http://nichiju.lin.gr.jp/mag/06504/index.html
著者
猪熊 壽 大野 耕一 山本 静雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.1153-1155, s・vi, 1999-10
被引用文献数
3 35

山口大学家畜病院に来院した犬430頭を対象にEhrlichia canisおよびHepatozoon canis抗体保有状況を調査するとともに,感染に関連する要因(年齢,性,品種,屋外室内飼育,住所)を解析した.E.canisおよびH.canis抗体陽性率はそれぞれ4.7と4.2%であった.両抗体とも性および年齢別の陽性率には差が認められなかったが,高い陽性率を示す市町が存在した.また屋外飼育の犬は室内飼育のものに比べて陽性率が高かった.さらにE.canisではビーグル,ゴールデン・レトリバー,ポインター,またH.canisについては秋田,柴,ビーグル,ポインター,雑種といった品種で陽性率が高い傾向がみられた.
著者
佐鹿 万里子 森田 達志 的場 洋平 岡本 実 谷山 弘行 猪熊 壽 浅川 満彦
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.125-128, 2009 (Released:2018-05-04)
参考文献数
16

2005年2月,北海道北広島市にて腰部から尾部にかけ著しい脱毛と痂皮を形成したアライグマProcyon lotor雄幼獣一個体が捕獲され,当該病変部から多数の小型ダニ類が検出された。形態および2nd internal transcribed spacer(ITS-2)の塩基配列から,これらのダニ類はSarcoptes scabieiと同定された。本症例は日本産アライグマのS.scabieiによる疥癬の初報告となった。
著者
猪熊 壽 福中 守人 松山 雄喜 寒川 彰久 古林 与志安
出版者
北海道獣医師会
雑誌
北海道獣医師会雑誌 = Journal of the Hokkaido Veterinary Medical Association (ISSN:00183385)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.2-4, 2012

肺炎治療の病歴を持つ2カ月齢黒毛和種雄子牛に、元気食欲不振および黒色硬固便排出症状が出現し、その後起立不能、低体温、苦悶等のショック症状が認められた。症状と検査所見から腹膜炎を疑い、抗生剤投与、輸液等の治療を継続したところショック状態からは脱却したが、一般状態は改善されなかった。病理解剖により瀰漫性の線維素性腹膜炎を伴う穿孔性第四胃潰瘍が確認された。
著者
猪熊 壽 福中 守人 松山 雄喜 寒川 彰久 古林 与志安
出版者
北海道獣医師会
雑誌
北海道獣医師会雑誌 = Journal of the Hokkaido Veterinary Medical Association (ISSN:00183385)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.2-4, 2012

肺炎治療の病歴を持つ2カ月齢黒毛和種雄子牛に、元気食欲不振および黒色硬固便排出症状が出現し、その後起立不能、低体温、苦悶等のショック症状が認められた。症状と検査所見から腹膜炎を疑い、抗生剤投与、輸液等の治療を継続したところショック状態からは脱却したが、一般状態は改善されなかった。病理解剖により瀰漫性の線維素性腹膜炎を伴う穿孔性第四胃潰瘍が確認された。
著者
工藤 彩佳 森山 咲 鈴木 真一 猪熊 壽
出版者
日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会
雑誌
産業動物臨床医学雑誌 (ISSN:1884684X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.5, pp.217-221, 2019-12-31 (Released:2020-06-02)
参考文献数
19
被引用文献数
1

ホルスタイン種の牛コレステロール代謝異常症(cholesterol deficiency:CD)は常染色体劣性遺伝性疾患のため,ヘテロ個体に症状は発現しないはずであるが,健常ヘテロ牛の血清コレステロール濃度は野生型に比べて低いと報告されている.本研究ではヘテロ個体の生産性を明らかにすることを目的として,健常ヘテロ個体の血清コレステロール濃度,乳生産および繁殖成績を調査した.臨床的に健常で生産に供される5 農場の乳牛718 頭のうち93 頭(14.9%)がヘテロであった.ヘテロ群の血清コレステロール濃度は野生型に比べて有意に低値であった.また,乳生産を評価できた2 農場のうち1 農場のヘテロ群では305 日補正乳量が野生型群に比較して有意に少なかった.他の1 農場でもヘテロ群の305 日補正乳量は野生型よりも低い傾向にあった.305 日補正した乳脂率,乳蛋白質率および無脂固形分率はヘテロ群で有意に高い,または高い傾向にあった.空胎日数および授精回数には両群で差はみられなかった.
著者
白永 伸行 羽迫 広人 相津 康宏 山本 健人 佐藤 立人 白永 純子 猪熊 壽
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.291-295, 2019-05-20 (Released:2019-06-20)
参考文献数
15

犬バベシア症流行地においてBabesia gibsoni(B. gibsoni )不顕性感染状況を調査した.臨床上健康な犬500頭のうちB. gibsoni 特異的PCR陽性38頭(7.6%)を不顕性感染とした.不顕性感染犬の平均年齢(9.2歳)は,PCR陰性でB. gibsoni 感染症既往歴のない犬(7.4歳)に比べて高かった.不顕性感染犬の97.4%は外出する犬であった.B. gibsoni 感染症既往歴のない犬で外出する275頭を解析したところ,不顕性感染犬においてマダニ予防薬を適切に使用されていた犬の割合(6.3%)は非感染犬(44.8%)に比べて有意に低かった.外出とマダニ予防不徹底はB. gibsoni 感染リスクを高めると考えられた.不顕性感染犬の赤血球数,血球容積,ヘモグロビン濃度及び血小板数は非感染犬より低値を示し,B. gibsoni 不顕性感染は犬の血液性状に影響を及ぼしていた.
著者
坂本 礼央 大林 哲 古林 与志安 松本 高太郎 石井 三都夫 猪熊 壽
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.191-193, 2010-03-20
被引用文献数
2

チミジンキナーゼはDNA合成に関わる酵素の一つであり、近年牛白血病の発症マーカーとして利用できることが報告されている。今回、牛白血病ウイルス汚染農場において、本酵素の活性を測定することにより、牛白血病罹患牛の早期摘発を試みた。その結果、臨床症状は示さなかったものの、地方病性牛白血病に罹患していた10歳9カ月齢のホルスタイン種雌牛を摘発できた。牛白血病ウイルス汚染牛群における本酵素活性の測定が、地方病性牛白血病罹患牛の早期摘発に臨床上有用であることが本研究により示唆された。
著者
見山 孝子 坂田 義美 島田 洋二郎 荻野 祥樹 渡辺 麻麗香 板本 和仁 奥田 優 VERDIDA Rodolfo A. 玄 学南 長澤 秀行 猪熊 壽
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.467-471, 2005-05-25
被引用文献数
4 55

関東以北の犬のBabesia gibsoni感染状況を調べる目的で, 2003年4月から10月までの間, 関東以北の13都県の動物病院を対象として調査を行った.B.gibsoni感染症を疑った犬115頭の末梢血, および血清または血漿を採取し, B.gibsoni特異的PCRおよびELISAを用いて感染の有無を確認した.115頭のうち青森, 福島, 茨城, 群馬, 千葉, 東京, 神奈川, 長野8都県の35頭が, PCRもしくはELISAで陽性を示した.陽性犬35頭の品種は, 土佐犬28頭, アメリカン・ピット・ブル・テリア4頭, 雑種3頭であった.陽性犬におけるマダニ寄生歴が明らかなものは3例だけであり, 感染経路としてマダニ以外の要因が関与することが考えられた.陽性犬35頭のうち, 22頭でhemoplasmaの感染が確認され, この割合はB.gibsoni陰性犬よりも有意に高かった.
著者
猪熊 壽 田村 和穂 大西 堂文
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.225-228, 1996-03-25
被引用文献数
2

岡山県の一犬舎において発生したクリイロコイタマダニの季節消長を観察した. 8月下旬にマダニ駆除を行った後, 寄生マダニ数は急激に減少したものの少数の若ダニおよび成ダニは10月まで認められた. 平均気温が15℃未満となる11月上旬には寄生マダニは認められなくなったが, 平均気温が11℃を越える3月下旬には再びマダニ寄生が認められた. 次に本マダニの定着性を確認するため, 産卵と発育に及ほす温度の影響について検討したところ, 23から37℃の範囲内では温度の上昇に伴って産卵および発育の速度は上昇したが, 14℃では産卵は著しく遅延し発育は認められなかった. 4℃では産卵も発育も認められなかった. また, 9月から3月まで未吸血成ダニを屋外犬舎内のケージに飼養された家兎に耳袋法にて寄生させたところ, 11月には吸着するが飽血には至らず, 12月から2月までは吸着も認められなかった. さらに, 低温条件下における未吸血成ダニの生存性を検討したところ, 12℃湿度50%で140日あるいは12℃湿度50%で40日, 続いて4℃湿度50%で100日保存しても, 家兎からの吸血が可能であった. 以上の所見から考えると3月に岡山県内の犬に寄生していたマダニは当該犬舎内で越冬していた可能性が高いと考えられた.