著者
山根 京子 小林 恵子 清水 祐美
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.219-229, 2018 (Released:2018-06-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

若者のワサビ離れの実態は不明であり,ワサビや辛味の嗜好性との関係も調べられたことはなかった.そこで全国の農業高等学校15校と老人介護施設3施設を対象に郵送でアンケート用紙を送付し,高校生594人および高齢者65人から有効回答を得て辛味に関する嗜好性を分析した.その結果,高齢者より高校生で,高校生男子より高校生女子で「ワサビ嫌い」が有意に多くみられることがわかった.辛い食べ物やトウガラシでは世代,性別間で有意な差はみられなかった.嫌いな理由として「鼻にツンとくるから」が72%と最も高かった.ワサビ好きと「回転寿司の利用頻度」と「肉の嗜好性」とは無関係であり,「魚の嗜好性」と 「生ワサビの経験値」 と有意な関係性がみられた.一方,「家族のワサビの経験値」とも有意な関係性がみられ, ワサビの嗜好性には家庭環境が影響を与えている可能性がある.今回の結果から,若い人たちが本当のワサビの味を知らず,身近な食材としてトウガラシをより好む傾向になりつつある現状が浮かびあがった.より多くの人たちに生ワサビを食する機会を設けるなど何等かの対策を講じる必要があるだろう.