著者
霜浦 森平 山添 史郎 塚本 利幸 野田 浩資
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
no.8, pp.151-165, 2002-10-31
被引用文献数
1

本稿では,滋賀県守山市を中心として活動している「豊穣の郷赤野井湾流域協議会」を事例として,地域環境ボランティア組織の活動の二元性について検討していく。協議会は,守山市の住民が主体となって水環境保全活動を行なっている組織であり,その活動は2つの方向性をもっていた。協議会は,水量確保対策や清掃活動による水環境の保全を重視する「自立型活動」を行なうとともに,これまでの水環境の管理主体である行政,自治会,農業団体の協力,協議会活動への一般住民の理解を得るための「連携型活動」を行なってきた。協議会では,活動の2つの方向性をめぐって意見対立が起こった。本校では,まず,この意見対立の経過をたどり,協議会の活動が「自立型活動」と「連携型活動」の二元性を有することを示し,次に,協議会が2つの活動を両立し得た要因について考えたい。地域環境の維持・管理を行なう新たな担い手として,地域環境ボランティア組織の役割が期待されている。地域環境ボランティア組織には,自らの活動によって地域環境を保全する「自立」的側面とともに,従来の地域環境の管理の担い手と協力関係を形成する「連携」的側面が求められる。「自立」と「連携」の両立が地域環境ボランティア組織の課題である。
著者
霜浦 森平 山添 史郎 植谷 正紀 塚本 利幸 野田 浩資
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
no.15, pp.104-118, 2009-10-31

地域の水環境保全に取り組む地域環境NPOには,関連主体との協働のための多様な活動の展開が求められている。滋賀県守山市の琵琶湖流域において地域水環境保全を行うNPO法人「びわこ豊穣の郷」では,会員間の活動理念,および財源確保の方法に関する会員間の意見の相違により,活動の志向性をめぐる2つの異なるジレンマに直面していた。1つめは,住民主体による自立的な水環境保全,および地域の多様な主体との連携という2つの活動の両立のあり方を背景とする,「自立/連携」をめぐるジレンマである。2つめは,NPO法人化に伴い増加した委託事業と無償ボランティア性に基づく実践的な活動の両立のあり方を背景とする,「ボランティア性/事業性」のジレンマである。この2つのジレンマの要因について,会員を対象としたアンケート調査結果を用いて分析した。会員は3つの「活動の志向性」(「調査重視」「連携重視」「地域重視」)を有していた。「自立/連携」をめぐるジレンマは,「地域重視」,「連携重視」という2つの「活動の志向性」の間で生じていた。一方,「ボランティア性/事業性」をめぐるジレンマは,「調査重視」志向,「地域重視」志向という2つの「活動の志向性」の間で生じていた。