著者
霜浦 森平 山添 史郎 植谷 正紀 塚本 利幸 野田 浩資
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
no.15, pp.104-118, 2009-10-31

地域の水環境保全に取り組む地域環境NPOには,関連主体との協働のための多様な活動の展開が求められている。滋賀県守山市の琵琶湖流域において地域水環境保全を行うNPO法人「びわこ豊穣の郷」では,会員間の活動理念,および財源確保の方法に関する会員間の意見の相違により,活動の志向性をめぐる2つの異なるジレンマに直面していた。1つめは,住民主体による自立的な水環境保全,および地域の多様な主体との連携という2つの活動の両立のあり方を背景とする,「自立/連携」をめぐるジレンマである。2つめは,NPO法人化に伴い増加した委託事業と無償ボランティア性に基づく実践的な活動の両立のあり方を背景とする,「ボランティア性/事業性」のジレンマである。この2つのジレンマの要因について,会員を対象としたアンケート調査結果を用いて分析した。会員は3つの「活動の志向性」(「調査重視」「連携重視」「地域重視」)を有していた。「自立/連携」をめぐるジレンマは,「地域重視」,「連携重視」という2つの「活動の志向性」の間で生じていた。一方,「ボランティア性/事業性」をめぐるジレンマは,「調査重視」志向,「地域重視」志向という2つの「活動の志向性」の間で生じていた。