著者
山田 和慶 篠島 直樹 浜崎 禎
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.280-286, 2017 (Released:2017-04-25)
参考文献数
37
被引用文献数
1

内科的治療では十分効果の得られないパーキンソン病・不随意運動症 (運動異常症) でも, 脳深部刺激療法 (DBS) により改善する場合が少なくない. 手術支援システムや刺激装置の機能の進歩と連動して, DBSの治療実績とエビデンスの蓄積がなされてきた. Convention empiricalに適応除外されがちな運動異常症を取り上げ, DBSの適応疾患が拡大しつつある現状を俯瞰する. 【パーキンソン病】一般的にレボドパに反応しない運動症状に対してDBSは無効である. しかし, 薬剤投与量が制限されている場合, 一見レボドパ反応性が欠如していても, levodopa-challenge testにより, 予想以上の運動機能改善が得られることがあり, DBSのよい適応になる. 【ジストニア】典型的ではない振戦様運動, 感覚トリックや動作特異性といった表現型, 発作的な症状増悪, 高率の精神疾患併存など, ジストニアは心因性運動異常症 (PMD) と判断されかねない要素に富んでいる. いったんPMDと診断されると, DBSに辿り着くのは困難である. 【その他】Lance-Adams症候群, 代謝性神経変性疾患に伴う不随意運動症, バリズム, Holmes振戦, 発作性ジスキネジアなど比較的まれな病態に対するDBSの有効性も報告されている. DBSの適応疾患は拡大しつつある. 運動異常症の症候を理解し, DBS介入のchanceを逃さないようしたい.
著者
山田 和慶
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.448-453, 2022 (Released:2022-07-25)
参考文献数
22

近年, 運動異常症に対する治療法は, 脳深部刺激療法 (deep brain stimulation : DBS) と凝固術がともに進歩・発展している. 2020年末に本邦においてadaptive DBS (aDBS) が臨床応用されるようになった. aDBSは, 電極周囲のフィールド電位をリアルタイムにフィードバックし, 刺激強度を変化させる画期的な治療技術である. 一方, 凝固術の新技術として集束超音波治療 (focused ultrasound : FUS) が登場したが, 従来の高周波凝固術も再評価されつつある. 特にこれまで避けるべきとされてきた両側凝固術についても一定の評価がなされつつある. 不随意運動・パーキンソン病に対するDBSと凝固術について, 新技術・新知見の理解を踏まえて, 今後の課題について検討する.

1 0 0 0 ジストニア

著者
山田 和慶
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.770-781, 2021-07-10

Point・ジストニアの治療戦略において,定位・機能神経外科は不可欠の治療手段である.・ジストニアに対する定位・機能神経外科の主な治療ターゲットは,淡蒼球内節(GPi)と視床吻側腹側(Vo)核である.・脳深部刺激療法(DBS)が主流であるが近年,神経核凝固術が再評価されつつある.
著者
篠島 直樹 前中 あおい 牧野 敬史 中村 英夫 黒田 順一郎 上田 郁美 松田 智子 岩崎田 鶴子 三島 裕子 猪原 淑子 山田 和慶 小林 修 斎藤 義樹 三原 洋祐 倉津 純一 矢野 茂敏 武笠 晃丈
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.235-242, 2019 (Released:2019-11-15)
参考文献数
14

【背景・目的】当院では難治性てんかんの患児に「ケトン食」を40年以上提供してきた.その経験に基づきIRB承認の下,悪性脳腫瘍患者を対象にケトン食の安全性,実行可能性,抗腫瘍効果について検討を行った. 【対象・方法】2012年11月から2018年10月までの悪性脳腫瘍患者14例(成人10例,小児4例).栄養組成はエネルギー30~40kcal/kg/日,たんぱく質1.0g/kg/日,ケトン比3:1のケトン食を後療法中ないし緩和ケア中に開始し,自宅のほか転院先でもケトン食が継続できるよう支援を行った. 【結果】ケトン食摂取期間の平均値は222.5日(5‐498日),空腹時血糖値および血中脂質値はケトン食摂取前後で著変なかった.有害事象は導入初期にgrade1の下痢が2例,脳脊髄放射線照射に起因するgrade 4の単球減少が1例でみられた他,特に重篤なものはなかった.後療法中に開始した10例中9例が中断(3例は病期進行,6例は食思不振など),緩和ケア中に開始した4例中3例は継続し,うち2例は経管投与でケトン食開始後1年以上生存した. 【考察】後療法中にケトン食を併用しても重篤な有害事象はなく安全と考えられた.長期間ケトン食を継続できれば生存期間の延長が期待できる可能性が示唆された.中断の主な理由として味の問題が大きく,抗腫瘍効果の評価には長期間継続可能な美味しいケトン食の開発が必要と考えられた.