著者
山田 良透 Yamada Yoshiyuki
出版者
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告: 宇宙科学情報解析論文誌: 第5号 = JAXA Research and Development Report: Journal of Space Science Informatics Japan: Volume 5 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-15-006, pp.43-49, 2016-03-10

Nano-JASMINEは,近年急速に進歩している超小型衛星を利用して,高精度な星の位置決定の観測をしようという試みである.Nano-JASMINEの目指す精度は3ミリ秒角(3mas),1.5×10(exp -8)radである.衛星の姿勢センサーをみると,大型衛星では1秒角(1/3600 度)程度が達成されるのに対して,超小型衛星では1分角(1/60度)程度の姿勢決定精度しか持たない.大型衛星に比べると性能の低い機器を用いた衛星で,高精度観測を達成するカギは,データ解析の役割の重要性である.Nano-JASMINEにおけるデータ解析,特に姿勢モデルのパラメータの選択に関して報告する.
著者
酒匂 信匡 山田 良透
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.665-668, 2015-06-15

東京大学,京都大学,国立天文台で開発しているNano-JASMINE 衛星は,星の撮像データから時々刻々の星の位置を求めることで,精密な星図を描くミッションである.星の位置を高精度に決めるため,4000万観測から,星の運動,衛星の姿勢,軌道,装置の変形等の数百万パラメータを同時に解く巨大逆問題となる.成果物は,天文学のほか,人工衛星の恒星センサ等の実利用の他,プラネタリウム,科学館などでも使われる.さまざまな情報技術に支えられたミッションであり,衛星システムの開発者・天文学者・情報科学者の共同作業としても興味深い.搭載系でのデータ取得から地上解析の仕組みまで,小型天文衛星のデータ処理の流れを本稿で解説する.
著者
佐藤 文隆 山田 良透
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1991

我々は、超新星エジェクタの中での物質混合の数値シミュレ-ションを軸対称及び三次元で行ってきた。この現象は細かい構造の形成が現象の定性的性質にも影響し、解像度の高い計算が要求される。従って、メッシュ数の少ない三次元計算よりも軸対称を仮定したメッシュ数の多い計算の方が信頼性の高い結果が得られている。本年度は軸対称計算のより多くの異なった初期揺らぎによる計算を行い、物質混合の程度の初期揺らぎによる依存性をしらべた。その結果からエジェクタ中で起こるの物質混合の程度についての定量的な評価を数値結果から解析的に得ることに成功した。エジェクタ中に大規模な物質混合が起こるかは密度分布に急激なとびがあることが本質的である。しかし、次の点で初期揺らぎの存在する位置が重要である。超新星のprogenitorモデルには二つの密度ギャップがあるが、内側の密度ギャップに初期揺らぎが存在しても外側の密度ギャップにブラストショックが衝突したときに発生するリバ-スショックが内側の揺らぎを抑えてしまう。これはRichtmeyerーMeshkov不安定性として知られている不安定性が逆に働いているとして定量的に説明可能である。従って、外側の密度ギャップに初期揺らぎが存在することが、観測されているエジェクタ中での大規模な物質混合を引き起こすために本質的であることが明らかにされた。